6.ネタバレ これよりももっと感情移入のしやすい、わかりやすい感動作はたくさんある。もっと夢中になれる面白い作品はいくらでもある。しかし不思議なことに、これ以上に鮮烈に記憶に焼きついた映画はひとつもなかった。
精神が壊れてしまった男と、感受性の豊かな少女の束の間の絆。あどけない彼らの姿はなんだか足取りも覚束ない小さな生き物を見ているようで、可愛らしさになごむ反面、いつ怪我をするかとひやひやしてしまう。あやういまでの繊細さが、最後には破滅が待っていることを予感させる。
また映像の清らかさも本作を忘れ難いものにしている。湖に広がる波紋、空に入ったひび割れのように広がる木の枝、ガラスや水晶に砕かれた風景。自然物の上手な使い方にはタルコフスキーの『僕の村は戦場だった』を思い出した。
しかしなんといっても衝撃的なのは、悲劇を悲劇のままに投げ出す結末だろう。おそらくこの映画に強く共振してしまう人は、ある種の痛みを知っている人だと思う。大切なものが砕けてしまう痛み、きれいなものが汚されてしまう痛み、誰かを守れなかったという痛み――決して取り返しのつかない、圧倒的な喪失の感覚。苦い絶望のなかに、ただ優しい記憶だけが残る。
他にも同じような方がいらっしゃるので告白してしまうと、生涯で一番好きな映画を問われれば自分もこの作品を挙げる。もっと面白い、バランスの取れた映画は他にもあるとわかっているのだが、なぜかこの映画を選んでしまう。きっとこの映画が描くような痛みは、心のもっとも深い場所に眠っているもので、そこを突かれると自分が根本から揺るがされてしまうのだろうと思う。
失うことの痛み。それは辛く哀しく、しかしけっして忘れたくない大切な痛みだ。 【no one】さん [ビデオ(字幕)] 10点(2006-02-09 01:46:32) (良:2票) |
5.ネタバレ 純真だから素晴らしい、常識的なのものは駄目駄目みたいな表現、指向の方がむしろ陳腐な気がします。 人を傷つける純真さもあれば、逆に人を守る常識もあるわけで。 だから、ファンタジーに対して無粋な突込みかも知れませんが、ピエールのことについて、全て理解してるような彫刻家の言動には、かなり苛立ちを感じました。 結局、何を表現したかったのか理解できませんでした。むしろ、戦争で精神を病んだ青年の悲劇みたいな展開にした方がわかりやすいし、訴えるものがあったかもしれません。 戦争の後遺症で明らかに常軌を逸して子供に返ってる青年と、孤独の中で生活してきたため、身近に現れたやさしい大人に恋愛感情を持ったやたらませた少女の恋愛を、純粋で素晴らしいと称えられても、あまりにも普遍性が無さ杉。 どっちかつうと、マドレーヌの方の愛情の純真さと、どうして彼女がピエールに対して 愛情を持つようになったかの方が関心がありますね。 【rhforever】さん [DVD(字幕)] 5点(2010-05-26 13:08:51) (良:1票) |
4.観てからも3ヶ月も経つというのに、色々なシーンが記憶から抹消されない。シベールのくりくりした目、マドレーヌの辛そうな顔、観始めの頃のピエールの寂しげな顔、父に連れられ泣きじゃくるシベールの顔、シベールと森を歩く時の愛に満ちたピエールの表情、下卑た顔をしたマドレーヌの友人達、ラストシーン、森、湖、遊園地、戦場の衝撃…。白黒にしか作り出せない世界だと思う。こんなに明確に記憶に残った映画は、今までほぼ無いと言ってもいい。ヘリクツ抜きに好きな作品なんだろうなァ。詩的な感性溢れる映像を「素敵」だと思った。映画という名の素晴らしい芸術作品。DVD化しても、何だか、すぐに買おう、とか思えなさそう…好きすぎて。 【SAEKO】さん 10点(2004-04-17 19:31:05) (良:1票) |
3.ネタバレ 記憶喪失者のロリコン話で、たいした内容ではないんだが、なんか観ていて「オイオイいーのかよー?」ってドキドキする。観てはいけないものを観てしまったような。病んでるからロリコンなのか?ロリコンだから病んでるのか?この判別は難しい。ただし、仮に自分の娘が中年男の相手であり、その男がナイフを振り回していれば、私自身「まともな大人(ロリコン排除する)」になるのでは?と思った。よって安易に主人公の男を擁護する気にはなれない。まあ、少女は可愛いとは思いますが、俺は一生懸命に彼を思い、理解しようとする看護婦彼女の方に惹かれましたが。 |
2.状況は病的なのだが、絵はとても美しい。宗教を信じられなくなったフランス人が、美しさのなかに救いの余韻を求めているようで、切ない感じがした。なかでもわたしの印象に残ったのは、文脈は忘れたがシベールがたしか謝意を表そうとして、跪きながら十字を切ったシーンだ。本当にきれいな姿だった。もはや宗教的意味を持たない単なる作法だが、はやり伝統の美しさだなあ、と感じ入った。あまりストーリーは憶えていない。 【バッテリ】さん 7点(2004-01-16 22:07:48) (良:1票) |
1.私のベスト1の映画です。映画館で初めて観た時、涙が止まらず、トイレに駆け込んだ思い出があります。モノクロームの映像美、二人が無邪気に戯れる姿、どれをとっても素晴らしいの一言に尽きます。ラストに少女が泣き叫びながら発する台詞は、深く胸に突き刺さります。 【リリー】さん 10点(2002-10-24 12:47:04) (良:1票) |