7.《ネタバレ》 子供たちがわんぱくなのが良い。尊敬できるお父さん像が良い。お母さんこそ死別して居ないが、理想的な家庭、家族。お父さんが説明できない事は何もない。世の中の成り立ちとか、大人としてのご近所付き合いの立ち振る舞いとか、学校では他の子供たちと集団生活を送るうえで、しばし実行しなければならない「妥協」というものの存在とか、そういう生活の知恵みたいな事を少しずつ分かりやすく、しかし一定の威厳を保ちながら教えてくれる。少し難しいんだけど、無害の野鳥は殺すべきではないし、狂犬を駆除するのは勇敢な行動。これが正義なんだと教えてくれる。正義の象徴であるお父さんが弁護する黒人の裁判。その判決を受けて、結果二人の人間が命を落とす。お兄ちゃんは怪我をして、顔の見えなかった変人の隣人は、以外にも優しい恥ずかしがり屋の青年だった。正義とは何か、真実は正義か、良心が正しいのか、そこは妥協すべき事なのか・・・。子供目線の日常を描きながら、実はこの世の中で一番矛盾を帯びた、永遠のテーマのようなものを突き付けられる。力のある作品です。面白いとか楽しいとかではなく、観るべき、考えるべき、作品です。 【ちゃか】さん [インターネット(字幕)] 10点(2023-01-31 12:07:00) (良:1票) |
6.《ネタバレ》 名作として有名な本作を鑑賞。
法廷で有罪判決が出るとこに、話の設定である時代の黒人差別の厳しさを思い知る。 正義と一言で言えぬアメリカの良心がよく描写されてる。 「大統領の陰謀」の社会派アラン・J・パクラが製作に名を連ねているのに、鑑賞後、納得した。
何より、観終わって、この映画のレビューを読むと勉強になることが多い。 自分の鑑賞能力不足を補ってくれる、このサイトに感謝! 【トント】さん [DVD(字幕)] 7点(2018-03-31 17:27:27) (良:1票) |
5.《ネタバレ》 グレゴリー・ペックの演技がとにかく最高。 ジョン・フランケンハイマーの「I Walk the Line」やラオール・ウォルシュの「艦長ホレーショ」「世界を彼の腕」に並ぶベスト・アクト。
個人的には「拳銃王」や「廃墟の群盗」「無頼の群」「白昼の決闘」のようなアウトロー役も好きだが、ペックはやっぱり冷たいようで本当は根が厚い正義漢が一番。 「ローマの休日」みたいな王女のスキャンダルを書いてやろうと思っていたら、何時の間にかその人柄に惚れて助けたくなってしまった・・・そんな感じこそ俺にとってのペックなんだ。
「大いなる西部」のようないかにも正義感の塊というペックは好かない。
この「アラバマ物語」は、ホームドラマとしても、一つの法廷劇としても見れるこの映画。 前半は弁護士の父親と家族の団欒、父親が扱う事件を巡ってのトラブルなどなど、実にアメリカらしい社会背景が詰まっている。 そして子供たちの小さな冒険譚。 内容はてんこ盛りだが、ストーリー自体は淡々と事を運んでいく。
裁判のシーンは少し長め。 事件の真相を探っていく内に、差別や貧困といった問題も絡んでくる。
最後まで戦い抜いた父親だが、待ち受ける顛末は残酷なものだ。
ただ、ラストでちょっとした奇跡が待っている。
心の暖かい人間ドラマです。 【すかあふえいす】さん [DVD(字幕)] 9点(2014-11-08 19:07:22) (良:1票) |
4.《ネタバレ》 この物語はさまざまな出来事が子供の目を通して語られる。大人を理解すること、公正さとは何か、差別とは何か、妥協とは何か、そしてそれらの思念の中で彼女らの誠実さの行方がそのイノセンスによって赤裸々に綴られている。そして、その語られる中に、アメリカという国の「正義」、その形が見え隠れする。 「ぼくはね、いまはっきりわかったよ。世の中には四種類の人間がいるってことだよ。ぼくたちや近所の人たちのようなのがふつうの種類、森のなかからでてくるカニンガムのような種類に、ごみ捨て場にいるユーイルのような種類、最後はニグロだ」 無実の黒人を死に追いやり、子供達を襲ったユーイルは思わぬ援護者によって逆に刺殺されてしまうのであるが、結局、ユーイルは事故死の扱いで処理される。そのまともな裁判もない事故死の扱いがこの作品を貫く正義の報いであり、この作品がアメリカ人の良心であるところのアメリカの正義なのだと思う。 この物語を思う時、僕は名作映画『十二人の怒れる男』を同時に思い出す。この作品もアメリカの陪審員制度における「正義」を扱ったものであるが、ここでの十二人は皆が顔の見える人間として自らの歴史を語り合い、納得するまで議論を尽くして、一旦は有罪と決まりかけた少年を無罪へと導く。但し、ここに『アラバマ物語』で差別の主題ともなる黒人と女性はいないし、ユーイルもいない。アメリカの正義というのは単純なものではないのだ。『アラバマ物語』は1930年代が舞台となっているが、まだそれから70年しか経っていない。当時、黒人は人間ではなく、学校教育も受けられず、当然まともな仕事にも就けなかった。何かあれば簡単に吊るされた、そんな時代からたったの70年しか経っていないのだ。黒人のみならず、森の中で自給生活をする人々、ゴミを漁って生活をする最下層の白人などが歴然と存在していた時代からほんの少ししか経っていない。差別は人々の意識に根付くものだ。アメリカという国はそんな差別を乗り越えようとして、結局は乗り越えられず、それがアメリカの正義を形づくってきた。その正義は微妙に歪んだ形を維持しながら、それを柔らかい衣に包んだまま何十年も受け継がれてきたような気がする。この問題はとても深い。それはアメリカ人の意識に深く根付き、彼らの正義を確実に規定しているのである。 【onomichi】さん [DVD(字幕)] 10点(2006-10-21 01:33:13) (良:1票) |
3.黒人差別の激しいアメリカ南部において、偏見を持たず弁護士という仕事をこなし、二人の子供たちとは常に正面から接し、諍いの避け方をさりげなく見せ(近所のおばあさんとのやりとり)、いざというときには誰よりもたのもしく子供たちを守る(狂犬のシーン)。まさに理想の父親がいる。子供たちが黒人たちの中に違和感なくまぎれて裁判を傍観する姿や、父と黒人被疑者が町の人たちに取り囲まれた際の子供たちの行動は、子供たちの理想的な成長と理想的な親子関係を見せている。そしてそのことによってさらに理想の父親を確固たるものとしている。当時としてはかなり繊細に扱われるべきテーマを含んだ社会派でありながら「理想の父親像」を前面に描くことで受け入れやすい作品となっている。個人的には理想的すぎに感じるけど、当時のアメリカ、ましてやハリウッドにしてみれば、これくらい完璧なヒーローでもいないと作る側も観る側も受け入れられなかったのかもしれない。 異常者として恐れられるブーの逸話は差別の根源を描いていると思われる。話さないからわからない、わからないから怖い、怖いから攻撃する、という人間の持つ弱さゆえの悪循環。「ナントカ(忘れた)という鳥は殺してもいい」、コレも偏見かもしれない、ということか、、。 いい「話し」だし、演出も巧みなんだけど、差別される側の悲壮感というか、人間のおぞましさというか、ダークな部分をあえてオブラートで包んだような描き方にちょっぴりの不満。 【R&A】さん [DVD(字幕)] 6点(2006-01-19 15:27:23) (良:1票) |
2.力強く信念を貫く優しい父親アティカスが、2003年に「最も偉大な映画のヒーロー」として選ばれたことは、こんな世情だからこそ、本当に喜ばしいことだ。 「相手の靴を履く事」言葉でいうのは易しく、実行は困難を極めるこの言葉を、体現してみせる父親を持つ、スカウトは本当に幸福だと思う。 人種差別を扱った法廷もの、ではあるが、重苦しくなく爽やかな感動を呼ぶという稀有な作品。 【poppo】さん 9点(2004-05-18 12:20:53) (良:1票) |
1.良い映画です。学生の頃観たのですが、G・ペックのような父親になろうと誓ったもんです。そんな自分も現在、ジェムと同じくらいの年頃の娘が。(笑)娘から社会の理不尽さとかを問われる度に、この映画のG・ペックの顔が想い浮かびます。なので、嘘やごまかしは無しに、一生懸命に答えている。娘や息子から弁論ばかりで喧嘩とか弱そうと思われていたであろう父親が、狂犬病の犬をライフルの一撃で倒すシーンが印象的。眼鏡を外して、慎重に狙いを付ける仕草がいい。 【バイクボーイ】さん 9点(2003-02-13 19:41:15) |