《改行表示》 3.ネタバレ 非情に重い、あまりに重い物語。実話ベースの創作としては相当実話に沿っているようですね。再現映像的なモキュメンタリ―の一種とも受け取れます。 実際の事件について書かれたものを読んでみると主人公は軽度の知的障害ということですが、本作に描かれている限りでは軽度の知的障害を伴う発達障害、更には精神的な問題も持ち併せていると言いましょうか、穏やかで優しい面と粗暴で暴力的な面という二面性が周囲が理解し得ないタイミングで見え隠れしています。計画的に武器弾薬を揃え、身辺整理をして母と言葉を交わし、誰よりもなついてくれていた犬たちを解き放ち、凶行に向けて踏み出して行く主人公。そこには明確な意思が感じられます。最終的なスイッチとなったのは英国で起きた類似事案のTV報道のようにも思えます。ある意味衝動的だったのかも知れません。 花火の一件が示すように幼少期からある程度明らかであった彼の特性。家族と専門機関がしっかりとそれを理解して受け止め、着実に連携して見守っていれば、もしかしたら防げたのかも知れません。しかし、実際には厳し過ぎる母親、優し過ぎる父親、クラスメイト等の揶揄中傷(おそらくはイジメも)等々による影響がジワジワと積み重なり、公的機関の継続的な関与は病院のみ(描かれていないだけ?)であった上に、ヘレンのような一見優しく包容力があるようでいてある意味身勝手な支援や心を閉ざしてしまった父親の自死は、彼を決定的に追い込んだのでしょう。そこで何かが音を立てて崩れてしまった。 銃規制という対症療法的予防措置には、確かに一定の効果が期待出来るのかも知れません。しかしながら、決定的な効果が期待出来るとは言い難いことは諸外国の例が示す通り。本作における事案ではたまたま銃器が手段として使用されたのであって、同種の事件を防ぐ根本的な予防策は、この主人公のような人物への決して画一的にならない長期的な支援以外には考えられないように思えます。 いずれにしても、確かな演技と過激になり過ぎない演出、そして同じく抑え気味に物語を紡いだ脚本。見事でした。 あとひとつ、「ニトラム」という蔑称的ニックネームは幾度か登場しましたが、「マーティン」という本名は登場しなかったような?特に両親が名前で呼ぶシーンが記憶に残らなかったのですが、それもまた主人公の歪んだ成育歴を暗喩するものだったのかも知れませんね。 【タコ太(ぺいぺい)】さん [インターネット(字幕)] 8点(2025-05-01 18:11:39) (良:1票)《新規》 |