4.「高所」という原始的恐怖心にひたすらにフォーカスして、極めてスリリングなスリラーアクションとして仕上げたこのジャンル映画の“立ち位置”は正しい。もし劇場で本作を観られたならば、その恐怖心は最大限に増幅されていたことだろう。
まず舞台となる600メートル超の鉄塔(テレビ塔)の存在感が良い。 荒野の真ん中でひょろりと伸びるその風貌は、あまりにも現実離れしていて、いい意味で馬鹿馬鹿しくもあり、それでいて恐怖の象徴として明確な説得力も孕んでいた。 その常軌を逸した鉄塔のビジュアルと、そこで繰り広げられるサバイバルを、低予算ながらもとても卓越した画作りと編集で映し出したクリエイティブは素晴らしかったと思う。
テンポよく、潔く、メイン舞台に主人公たちを運び、高所でのサバイバルを描き出した展開自体は的確だったと思う。 冒頭部分での細かい描写が、しっかりと後半での伏線として張り巡らされ、下手をすればアイデア一発で内容の乏しい展開になってしまいそうな題材を、終始緊張感を持続させたスリラーへと昇華させていたことは間違いない。
「恐怖映画」として、狙い通りの恐怖を具現化し、限られた予算で一定レベル以上の娯楽を生み出している本作は、褒められて然るべきだろう。
ただ、個人的には冒頭部分からどうしても主人公たちの心情に共感できない要素があり、それが結局最後まで雑音となってしまい、“手放し”で高評価というわけにはいかなかった。
それは、登場自分たちの危機管理の薄さというか、危険回避能力のある種病的な欠如に他ならない。 オープニングの断崖絶壁でのフリークライミングシーンからそう。主人公はそこで夫を亡くしてしまい、それがこのドラマの起因となるわけだが、あのような危険行為にまったくもって魅力も共感も感じることができない者としては、そりゃあそんなことしてたらいつか死ぬだろうよと、鼻白むことしかできなかった。 そのくせ、いざその危険行為によって人を亡くしたら、1年以上も他者を遮断し自暴自棄に落ち込むとうい主人公のあまりにも覚悟の無い心情にも違和感を覚えた。
詰まる所、主人公たちの身体や、精神構造に、あのように危険極まりないクライミングを繰り広げる人物像としての説得力があまりにも欠如していたように思える。 あれほどまで危険なクライミング行為を自らするのであれば、身体的にはもっと鍛え上げれていて然るべきだろうし、自他を含めた人間の「死」そのものに対してももっと達観した思考があるべきだったろうと思う。
1年以上も酒に溺れていたくせに、何の準備もなく親友の誘いに乗って地上600メートルの鉄塔に挑むという言動は、完全に主人公の「自殺願望」の表れだろうと思ったし、そんな無謀な誘いをする親友も何かしらの「思惑」があるに違いないと、訝しくストーリーを追ってしまった。それくらい、彼らの言動には常軌を逸した違和感と不自然さを感じた。 例えば、デヴィッド・フィンチャー監督の「ゲーム」のようなどんでん返し的な“オチ”を、どこかで期待していたのかもしれない。
しかし、親友はある秘密を抱えてはいたが、主人公にとってはかけがえのない普通にいいヤツ。最後には疎遠だった父との絆を取り戻し、地上に生還するという展開は、安直という印象を通り越して、「何だコイツら」と、やはり最後まで理解と共感が及ばなかった。
シンプルではあるが非常にクオリティの高い「恐怖」を創造できていただけに、取ってつけたようなドラマ性や、違和感たっぷりの人間描写が、必要以上に大きな不協和音として鳴り響いてしまった。 【鉄腕麗人】さん [インターネット(字幕)] 5点(2023-10-29 00:07:46) (良:2票) |
3.《ネタバレ》 とにかく怖いので「小さな伏線とか丹念に回収するの要らんねん!」とボヤきながら、それでも最初から最後まで目を離さず観ましたよ。 そう伏線回収がやたらキッチリしてんですよこの作品。 衰弱した顔のメイクとかも丁寧だし最後の日になると日焼けもしてる とはいえたぶん低予算映画なので仕方がないとは思いますが、ツッコミどころは多いです。 でも観客を怖がらせる目的は達成してると思います デッドコースターシリーズをゲラゲラ笑いながら観れる俺でもこれは怖かったですホント 【ぷらむ少佐】さん [インターネット(吹替)] 5点(2025-02-05 21:49:39) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 立ち入り禁止の危険な塔に許可なく登り、遭難してしまうお騒がせユーチューバーの話です。 なので、主人公に全く感情移入は出来ません。 高所の怖さだけ味わえます。 【東京ロッキー】さん [インターネット(吹替)] 5点(2024-07-01 11:42:21) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 ネタバレあります。ご注意ください。
2人が塔の上で取り残された時点で残り時間60分と知り頭を抱えました。「詰み」の状態からあと1時間も何を見せられるのかと。延々と回想だったり懺悔だったりは御免だなと感じておりましたが、なんと!なんと!!サバイバルサスペンスとしての「展開」が多数用意されていました。しかも『大ネタ』まで仕込む抜かりなさ。いや私もあの時は「そんなの無理だろ」と突っ込んでいたんですよね。思わず声に出して。でも火事場の馬鹿力(米国だとファイヤーフィールドのシットパワーですか?)なんて言葉もありますし渋々納得していたところ。ですから真相が明かされて膝を打ちました。 喩えるなら、エベレスト山頂でフルコースを供されたような驚き。見事なエンターテイメント性に感心しました。さらに素晴らしいのは物語の芯にテーマが一本通っていたこと。それはもうTV塔のように真っすぐと。『チャレンジの価値』『生きるには覚悟が要る』これらを雄弁に物語る終盤怒涛の畳みかけに痺れました。エンディングも申し分なし。この手のソリッドシチュエーションスリラーでは、結構平気でバッドエンドが用意されていたりするので内心冷や冷やでした。絶体絶命の大ピンチで本当に絶命さる脚本なんてクソくらえなんだよ!失礼しました。取り乱して下品な言葉を使ってしまいました。脚本家の皆様の苦労も知らず勝手な事を申しました。お詫び申し上げます。 「どうせ迷惑系配信者の自業自得の災難。設定も出オチみたいなものだし期待できないな」と高を括っていたせいもありますが、予想外にハイクオリティな作品に驚いた次第です。最後に褒めてばかりも何なので、バランスを取るために若干の駄目出しを。クライミングを趣味にする人間があの体脂肪率のワケがない。以上です。 【目隠シスト】さん [インターネット(吹替)] 8点(2023-10-07 02:18:21) (良:1票) |