1.ネタバレ 原作未読。原作は名のある賞を受賞した作品。映画化にあたっては、かなりの味付けを施したのでしょう。
そう、言い方を変えればかなりの部分で粗が目立つと言うかツッコミし放題と言うかの作品ですね。ホラーだホラーだとミスリードしておいて、結局はホラーじゃなくて人間の狂気をベースにしたサスペンス。敢えてベースとしたのはテーマ性は弱いかな?と感じたからです。
少なくとも本作を観る限り、主人公のトラウマになっている実家における過去の出来事と、おそらくはそれに起因する兄の現状は、主人公のマイホームに纏わるストーカー的事件とは関係なく思えるから。兄が何かに怯えているからといって、主人公の家にまで類が及んでいる訳じゃ全然ないでしょう。あるとすれば、あくまでも主人公の内なる世界のお話じゃないかと。でも、だったら一連の犯人は主人公でした、みたいな展開があっても良さそうだし。
子どもの頃、弟を庇い父親に虐待を受け続けていた兄。見かねて父を殺してしまった弟。同じく夫に苦しんでいた母親は、子どもたち(自分自身も?)を守るべく遺体を処理して犯行を隠してしまった。弟の凶行と母親の隠蔽行為は兄にとってあまりに重過ぎた。だから、得体の知れない脅威を想像し引き籠ってしまった。
主人公はあまりの心理的ショックに自らの行った行為の記憶を封印してしまう。閉所で錯乱するのは封じた記憶が解き放たれるのを妨げるためでは?百歩譲れば不倫行為もその延長上にあるのかも。十分に幸せなのに更なる幸せを欲張ってしまったとか?
いずれにせよ、幸せの絶頂から奈落へと突き落とされたことで狂気に陥ってしまった設計士(原作では更に別エピソードもあるようですね)の犯行は、部分的・間接的には主人公の不貞行為に起因するものかも知れませんが、あくまでも彼女の世界を守らんがための凶行に思えてならないです。同僚殺しも主人公の元愛人の自殺も主人公の兄殺しも。とりわけ兄はある意味純粋な被害者。とばっちりに近いのでは?
全編を覆う不穏な空気感。登場人物の謎めいた雰囲気。途中でそこそこ見えてしまうにしても、適度に意外性を伴う真犯人とその人物像等々、惹き付けられる部分は少なからずあります。しかし、総じて見れば今一つ纏まりに欠けるように思えてしまうところ。数多ある「?」とか「んな訳ないだろ!」的ツッコミどころをもう少し丁寧に描きつつ、実家の事件と現在の事件の整合性を見せていただければ、もっともっと楽しめたかも知れません。エンディングも残酷さ・理不尽さに走ってしまった感があり、かなり残念な作品。赤ちゃん受難エピソードが胸糞だったことはかなりの減点要素です。甘めの4点を献上します。 【タコ太(ぺいぺい)】さん [インターネット(邦画)] 4点(2025-05-05 10:06:27) ★《新規》★ |