6.《ネタバレ》 戦時下における軍国主義的大人社会とその縮図として展開される子ども社会、そうした構図の見事さもさることながら、それ以上にすばらしいのは、少年期特有の幼くも常に真剣な彼らの感情やゆらぎをきちんとそこに写しとっていることだ。戦争のため都会から田舎へと疎開してきた少年の心もとない不安と、地元の少年たちが見せる他所者への軽蔑と畏怖いりまじる好奇心。少年社会における厳然たる階級と、ひそかに渦巻く野心。その中でもひときわ目をひくのは、ガキ大将武が主人公進二に見せる幼い恋にも似た複雑で入り組んだ感情だ。仲間内では高圧的にふるまう武が進二と二人きりの時にだけ見せる特別なやさしさ。自分自身わけのわからぬそんな感情にいらだつ武は、進二が上手だと褒めた零戦の絵を闇雲にぬりつぶし、時に無意味な乱暴さで進二を小突く。しかし反面、隣町で悪童たちに囲まれる進二のもとへと黒いマントをひるがえし駆けつける彼の疾走は、愛する者を守るため悪に立ちむかうヒーローのそれ、そのものでもある。秀逸なのはそれに続くシークエンスだ。追っ手から逃れ隠れた雪の納屋で子どもらしく小便する進二とその後ろ姿をただ見ている武のさりげなくも印象的なショットを経て、二人がその足で向かう写真館。再び湧き起こる厄介な感情に、武はやはりどうしようもなく進二を力でねじ伏せてしまう。そしてただただ涙をこぼすのだ。この一連の武の姿がたまらなく胸をしめつけるのは、それが彼の初恋の有り様にほかならないからだ。物語の終盤、クーデターにより失墜した武が頑なに進二を遠ざけるのは、ガキ大将として以上に幼い恋を前にした一人の男として、彼が敗北を喫した自分に厳しく課す、貫き守るべき最後の誇り、それがゆえだろう。トンネルのゆるやかなカーブにつれてゆっくりと彼方に閉じていく少年時代、やがてそれは写真館で撮った二人の写真へとつながる。身震いするほどにすばらしいラストシーンだ。飾られた写真の中の幼くも凛々しい二人。形にはなり得なかった、けれどもなにより確かなその思いの、なんと誇らしく美しいことだろう。たとえトンネルの向こうには二度と還れなくても、それはあの日の武のように誇らしげに胸をはり、確かにそこにあるのだ。輝かしくも傷だらけの少年時代の、そのかけがえのない勲章として。 【BOWWOW】さん [DVD(邦画)] 9点(2009-09-16 21:04:43) (良:5票) |
5.《ネタバレ》 父親の都合により東京から富山へと疎開してきた少年進二とガキ大将武との交流、友情がテーマである。また、何だか観ていて今の政治の世界や戦国時代の戦いを見ているような感じもする。ガキ大将と恐れられ、一人じゃ何も出来ない連中がもう一人の少年須藤というこの人物の方へと寝返りをする。つまりクーデターを起こしてそれまでは見方だった仲間に裏切られボコボコにされる武の姿は正に戦国時代の戦いのようでもあり、現在の政治の世界のようでもある。まるで独裁者の如く、それまでの地位を追われても進二との友情を捨てなかった武こそ、男の中の男であり、他の誰よりもかっこ良いし、男らしい。進二が最初に仲良くなった武だが、自分に付いてくる他の仲間、弱気者達の前では進二に対しても冷たい態度を見せたりするものの、進二と二人きりの時には他では見せない表情を見せる。進二と二人きりでボートに乗り、海へと出かけるシーンや進二の話を食い入るように聞く姿など他にも進二と二人の時の武こそが本来の武の姿である。それは進二にもよく解っているからこそ二人の友情は最後まで途切れることなく続くのである。ラストの駅のシーン、列車内から見える武の進二の乗せた列車と横に並ぶようにして追う武の姿、本当の親友との別れ、井上陽水の名曲「少年時代」が流れ、映し出される二人が撮った思い出の写真に映っている進二と武の表情こそがこの映画を物語っている。そしてこの映画を観てやはり感じたことは篠田正浩監督という人は「瀬戸内少年野球団」が少年というものを上手く描いてるのと同じで下手に時代劇やらアクションものなどは撮らずに少年を描いた作品を撮る方が上手いし、持ち味が発揮されるように感じる。今の所、私にとっては篠田正浩監督の映画の中ではこの映画が一番です。 【青観】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2009-10-05 20:52:34) (良:2票) |
4.《ネタバレ》 40数年前に原作を読み感動。富山県出身の藤子不二雄による思い入れたっぷりのマンガも原作に劣らず素晴らしかった。映画館で封切映画を見てさらに感動しその後も数回テレビで鑑賞。見るたびに映画の良さを実感します。昨日久しぶりにCSで見ました。舞台の入善町の立山を仰ぐ農村の風景の中、学校への一本道を学童たちが歩いていく場面にノスタルジーを感じます。入善から泊まりの海岸をタケシが疾走しているのが目に浮かぶようです。子供たちのあどけない姿が二十四の瞳のようにいきいきと描かれており、陽水の歌も効果的で、毎回、視聴後いい映画だったなあと思えるので気前よく10点あげます。 【黒部の太陽】さん [CS・衛星(邦画)] 10点(2021-01-19 11:07:42) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 少年時代とは、記憶である。殊更に、友人との記憶である。本作はそんなお話だと思います。 東京から富山へ疎開した主人公は、腕力以外の部分で彼にしか無いものを持っていた。そのために、学校での覇権争いで重要なポジションを占めることになる。学校のボスは絶対王政を布く優等生。異物に対するイジメでも先陣を切り、主人公も洗礼を受ける。でも、彼の王国を離れた二人だけのコミュニケーションでは、豊かな悟性と感性で主人公を包み込む。このボスの個性は厳めしさと優しさの二面性。王様であるための厳めしさと心を許す数少ない友人への優しさです。 ボスの二面性に戸惑う主人公。そして、感覚的に彼の事情を理解しながらも、イジメられたことに対する反発が裏切りに繋がって行く。高い理解力と感情の狭間で、主人公にも二面性が窺える。 そんな二面性の絡み合いを、本作はあるがままに切り取る。無意識下の強い繋がりと、結論など無いような曖昧さ。後に少年時代として回想すれば、成長してからは味わえない情感がそこにある。楽しいことだけでは無く、ネガな部分もたくさんある。本作はそんな悲喜をひっくるめて、少年時代を表現した秀作だと思います。 20年越しの再見でしたが、受けた印象は変わらず。自分の少年時代も不変のようです。 【アンドレ・タカシ】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2012-11-18 15:24:06) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 演出や撮影はとてもよいが、ストーリーは共感できなかった。 ほとんどが独裁的なガキ大将による因縁話で、主人公の新二は苦悩しながら自分の安全を確保しようとする。 地位を追われる武が魅力的に描かれているように思えるが、二人の時だけに見せる優しさと裏の陰湿さによるギャップは、ラストの演出や井上陽水での美化されても不満が残る。 打倒政権の須藤も、爽やかさのかけらもない陰謀家で、このクラスの未来に希望は持てない。 結論としては「いじめはかっこわるい」 【mhiro】さん [CS・衛星(字幕)] 2点(2012-10-20 09:53:33) (良:1票) |
1.私的には、名作 「スタンド・バイ・ミー」 より、この 「少年時代」 の方が断然好き!.. なぜ?って..“日本人”ですから.. 時には横暴で意地悪な ガキ大将、でも、根は優しく仲間思いの “大原 武” 、この絵に描いたような ガキ大将 が、大好きです! 陸奥のバックルを、いいな~って言うけど、取り上げることは絶対にしない..隣町でからまれてしまう進二を助けようと、本能のまま 獣のように真っ先に駆け付ける..落ちぶれ果てても、泣き言も 愚痴も 一言も言わない..男だ(涙).. 最後も走る、走る、友との別れのために..(涙) 古き良き時代!なんでしょうね~.. 【コナンが一番】さん [ビデオ(邦画)] 7点(2004-10-19 12:24:25) (良:1票) |