《改行表示》 5.《ネタバレ》 結構、原作有りの映画が好きです。原作と映画を重層的に楽しめるから。こういう背景があったのか、ここを改変した意味はなんだろう、とかメタ的にも楽しめます。 この「シビル・ウォー」、原作はありません。ただ「アメリカは内戦に向かうのか」という著作から着想を得て作ったそうです。この本は、現在のアメリカは専制的になっているし、白人が少数派に落ちる不安感から、アメリカの分断傾向はさらに進んでゆく、という趣旨です。そこで、内戦になったアメリカを描くと面白いと思ったのでしょう。 しかし・・・これは妄想ですが、実際に脚本にする段階でエライ困難にぶち当たったのではないでしょうか。内戦の想定を説得力あるように描けない、と。現在のアメリカの分断は、人種もそうですが共和党と民主党の思想の分断です。だから、共和党州と民主党州に分断するのが簡単ですが、そんなもの描いたら実社会から猛反発を食らうのが目に見えてる。しかもそれを描いたら、ハリウッド的にどちらが正義かという問題を解決しなきゃいけない。また州を実際的に分断したら州軍はいいとしても、全世界に配備されてる国軍の扱いも描かなきゃいけない。ザがついた「ザ・シビル・ウォー」ならアメリカ南北戦争を指すんですが、あれはまだアメリカが世界に出て行っていない状態だから内戦ができた。今の世界の警察官のアメリカが内戦やったら、すぐ世界に波及する。国軍が内戦から距離を置いたら、誰が軍の統制をとる?というか、州軍は国軍に敵わないから、国軍を抑えた方が一方的に勝つ。 だから、内戦の説得力ある背景なんて描けるわけがない。じゃあどうしようか。 そこで、内戦の背景なんて描かないという荒技にでたんじゃないでしょうか(あくまで妄想です)。実社会の分断を落とし込んだら、非常にやばい。だから、実社会では絶対に組まないテキサスとカリフォルニアを、映画では組んだことにして誤魔化そう。国軍の存在はないことにしちゃおう。州軍が持っているのは例えば空軍ならせいぜいF16。国軍はF22やF35を持っているから話にならない。特に海軍・海兵隊を想定すると反乱州軍はあっという間に国軍に平定されてしまう。国軍に反乱を想定すると別の映画になっちゃうし。 こんな感じで脚本を作っちゃったから、観客みんなが内戦の背景がさっぱりわからないものになる。逆にわかってもらったら困る。国軍をないことにしたから、戦闘もなんだか小さな地上戦をこちゃこちゃしか描けなくなるし、大きな絵がかけないから、内戦に巻き込まれた個人の矮小化した話にするしかない(あくまで妄想です)。 と、私は見てしまったので、内戦の背景が適当で内戦理由も摩訶不思議、描いてるのは個人の矮小物語としか感じられず、評価は低くなりました。 わけわからない内戦に巻き込まれた人間の話なら、中東でもアフリカでも東南アジアでもできるし、その方がリアリティあります。本作は、ただ舞台がアメリカってだけがキャッチーなだけです。 もちろん、我関せずの街の描写、赤いサングラスの民兵とかシーンの迫力はそれなりにありましたし、カメラマン志望のケイリー・スピーニーちゃんがときどきすごく可愛いのでキュンとしたりしましたから、映画としては見所はありますが、あまりのめり込めなかったことも確かです。 【えんでばー】さん [映画館(字幕)] 3点(2025-01-08 20:45:31) (良:1票) |
《改行表示》 4.《ネタバレ》 実弾射撃の経験あるが、実際より音大きいぐらいでないか・・・びっくりするし、耳に悪い・・・でも臨場感あった。 思えばアメリカ人同士は南北戦争でも戦っていたし、日本人も明治までは内戦状態だったし、この映画は新たな視点のようで、一方でデジャヴ感を感じる。 現在の、民主主義が後退しつつある状況への警鐘としては、気味悪いぐらいに成功している。 まさに、トマス・ホッブズがいうところの、自然状態。「万人の万人に対する戦い」が、印象深いエピソードで綴られているロード・ムービーだ。誰に撃たれているかわからない狙撃。ピンクのサングラスの男の「お前はどんなアメリカ人か」との生死を分かつ問いかけ。 弱肉強食の時代に戻ったら、こうなるよね、という、皆が目を背けがちな真実を、血しぶきとともに、ある程度のグロは勘弁とばかりに痛々しく描写する(ただし、内蔵飛び散る本当の戦場から言えば甘すぎるほど甘いが)。嘔吐シーンは、監督自身の、今の時代に対する痛罵か。 ともあれ、このタイミングでこの映画が出てきたことに、多少の偶然もあろうが、驚きもし、感心もした。 【チェブ大王】さん [映画館(字幕)] 7点(2024-11-14 00:49:39) (良:1票) |
3.ジェシー役のケイリー・スピニーが良かったですね。最初はただの足手纏いの子供に見えたジェシーが、たくさんの辛い経験をしながらもがんばり、最後は本物の戦場フォトグラファーになったのが良かったです。赤いサングラスの兵士もなかなか良い味を出していました。ただし、ジョー役の俳優さんは演技が下手なのが残念でした。全体的にはおもしろかったです。 【みるちゃん】さん [DVD(字幕なし「原語」)] 7点(2024-10-20 13:42:21) (良:1票) |
2.おもしろかった。車で森を移動しているシーンでトゥモロウワールドを思い出したが、全体的には地獄の黙示録のようなロードムービーって感じ。戦闘シーンはリアルだった。地上戦はCG使ってないよね。分断によって市中で簡単に人の血が流れるが、流させる側も市民てのが怖いよね。狂気なのか、それが人の本質なのか。すげー怖い映画だと思う。 【センブリーヌ】さん [映画館(字幕)] 7点(2024-10-18 00:16:41) (良:1票) |
《改行表示》 1.《ネタバレ》 公開日に映画館で鑑賞しました。アレックス・ガーランド監督らしい意地悪なフィクションとリアルに満ちた作品でした。まず、カリフォルニアとテキサスの西部連合という壮大な「ウソ」によって、本作が「保守」とか「リベラル」とかの安易な政治的党派性から作られたものではない、というメッセージが伝わります。最大の「青い州」(民主党支持者が多い州)カリフォルニアと、最大の「赤い州」(共和党支持者が多い州)テキサスが連合を組むというのは、あまりにフィクショナルな設定です(ただ、両州とも現在のアメリカ経済の成長を支える中心地ではあるので、実はなくもない、という絶妙なライン)。 まず起こりえないけど、そうなったらこうなっちゃうんじゃないかという「内戦」状態に陥ったアメリカで、大統領のインタビューのためにニューヨークからワシントンDCへ向かうジャーナリスト一行。序盤に出色だったのは、内戦状態にあっても戦禍に巻き込まれない限りは無関心を決め込む人びと。中西部・西部のマイナー州の人たちやら、道中で出会う田舎町の住人たちの無関心さは、まるでウクライナやパレスチナで起きている悲劇にも無関心を決め込む人びと(そして、そんな状況でこんな映画を見に来る自分のような観客)に、チクリと刺す嫌みもあって苦笑いするしかない。ただ、序盤は、静かな日常→銃声から惨状へ、という流れの繰り返しで、大きな音でドカンと驚かされるのが好きではない自分としては、かなり不快でした。音響強めのIMAX劇場にしなくてよかった。 個人的に本作の白眉だったのは、ミリシア(民兵)との遭遇を描いた場面。機関銃などで武装した自警団ミリシアは現在の米国でも多く活動していますが、そのなかには白人至上主義者・人種差別主義者も多いことが知られています。ミリシアが銃を向けて発する「おまえはどういうアメリカ人なのか(What kind of American are you?)」という質問の恐ろしさ。この場面で命を失った人は誰か。そこに、この作品の恐ろしい「リアル」が見えてきます。「名誉白人」気分でいる日本人にとっても、とてもショッキングな場面でしょう。 ただ、そこからワシントンDCに入ってからの展開は、フィクションのなかで効いていた「リアル」が吹っ飛んでしまい、個人的には若干の興ざめでした。そりゃ、このクライマックスがなければ、ただひたすら意地悪で感じ悪い映画で終わっていたと思います。とはいえ、ラストのワンショットは最高に感じ悪いので、やっぱり秀逸な「胸糞悪い」映画だったと思います。 【ころりさん】さん [映画館(字幕)] 7点(2024-10-04 18:06:28) (良:1票) |