《改行表示》 1.《ネタバレ》 真っ先に思い浮かんだフレーズは『この映画が邦画ホラー史を更新する』でした(注:原典は百田夏菜子の海老反りジャンプ)。控え目に言って傑作だと思います。いや少し言い過ぎました。カテゴリー的にはB級なので。でも快作であることは疑いようもありません。 始めは、完全なる「家系ホラー」でした(ラーメンか)。良くも悪くもお馴染みの味。『呪怨』の亜種です。それもあまり出来が良いとは言えません。両親ばかりか兄弟(子ども)まで殺してどうするの。主人公だけ生き残ったとしても虚しいだけじゃないかと。ところが中盤に来て急展開を見せます。一家の一大事に痴呆ババアが大覚醒!家系ホラーからババアの復讐映画に大転換です(注:ババアという言い方は品が無くて好きではないのですが、こと本作に限っては敬意を込めてババアという表記を使わせてもらいます)。悪霊の呪いから命からがら逃げきれれば御の字なんて真っ平御免。家族を奪った憎き悪霊を地獄の底へ突き落とすアクティブな復讐譚へ。さながら『フロム・ダスク・ティル・ドーン』ばりの前後半別物映画は、最高最強のババア映画でもありました。そうです。邦画ホラーばかりでなく、ババア映画史も同時に更新しているのです。長らく日本ババア映画界で女王の座に君臨してきた『大誘拐』の刀自(北林谷栄さん)を超えるキャラクターが爆誕したのです。ファンキー太極拳ババアこと神木春枝。もう好き。本当に大好き。『来る』の逢坂セツ子(柴田理恵さん)も素敵でしたが、それ以上でしょう。年齢も。なんてたって人間力が半端ないんですもの。あんなに頼もしいババア見たことありません。生命力で悪霊に打ち勝つ!は免疫力で病原菌に対抗するが如し。復讐方法も振り切っていました。命のやり取りをしている時に、犯罪かどうかなんて考えても仕方がありません。やるならとことん。腹を括るとはそういうこと。柴田ヨクサルの『ハチワンダイバー』で老い先短いババアが最強だと教わりましたが本当ですね。強いし美しい。結局サユリへの復讐ではなく、サユリの復讐を手伝うかたちになりましたが、因果応報の原則に沿う結末に救われました。ホラーで有りがちな無闇に後味を悪くするエンディングでないのも素晴らしい。続編をつくる気が一切無いのも潔いです。 邦画ホラー史における『リング』『呪怨』に次ぐエポックメイキングな『サユリ』を、最高にファンキーでチャーミングな太極拳ババア・神木春枝(根岸季衣さん)を、私は決して忘れません。「外をよく、内をよく、命を濃く」を私の座右の銘といたします。 【目隠シスト】さん [CS・衛星(邦画)] 10点(2025-04-28 01:54:57) ★《新規》★ |