2.ネタバレ 映画館を出る前から点数は5点でモノクロかと思うほど画面が暗くて最後まで登場人物の顔と名前が一致しないことを批判しようと思っていたらわたしの前の投稿者の方が既に指摘されているので帰宅してから知ったこの作品の制作国がアメリカとイギリスだというカトリックではない国だという点を考慮に入れて違った角度から見ると作品の背後にあるのは両国の政治の背後にある左右のせめぎ合いなのではないかという気がするのです。つまり多様性と伝統的価値観とかそういったもののせめぎ合いなのです。そう考えると作品の最後に「あっシスティナ礼拝堂が!!! 」、「えっ彼が!!!」という誰しもが感じることが「伝統の牙城であるバチカンだって多様性の圧力から無縁ではありえないんだぜ!」という英米、特に近代にプロテスタントの各宗派を創設した英語国民の矜持、もっと言うと驕りのようなものが嫌でも目につき、新教皇に選ばれた人物の個性を際立たせるためにわざと画面を暗くして個々の登場人物を没個性的にしたのもそのせいかと納得できるのです。なおわたしはこの作品の結末、あるいはオチが嫌味っぽくて嫌いです。あまり露骨にネタバレしないようにするという条件付きでの皆さんの意見を聞いてみたいです。その理由をわたしなりにあまり激しくネタバレしないように説明すると、現代の世界には多様性や違った価値観尊重以外に宗教家を含む指導者がやらないといけないことが山ほどあると思うのです。それは何を主張するにしても最低限尊重されないといけないことはどんなことを主張するにしても他者の生命や財産を脅かすことによって自分の主張を押し付けてははならないという原則を死守することです。ましてや無差別殺人や破壊は聖職者は阻止に全力を尽くさなければならないのです。
ローマ教皇自身の民族的地域的多様性は1978年に就任したポーランド出身のヨハネ=パウロ2世から始まってプロテスタント発祥の地の一つであるドイツ出身で少年時代にヒトラーユーゲントに所属したベネディクト16世から亡くなったばかりで初のヨーロッパ以外の出身者だったフランシスコと続き、この映画レビューサイトではキーワード「教皇」で呈示される作品は本作を含めて現時点では2作です。もうひとつは生前退位したベネディクト16世からフランシスコへの継承を描いた「二人の教皇」ですがこちらの作品の方をわたしは絶対に高く評価します。なぜかというと「二人の教皇」ではアルゼンチンの軍事独裁下で軍隊による善良な市民と聖職者の虐殺を止められなかった自分を責め、それを理由に教皇への就任を拒むフランシスコ(俗名: ホルヘ・マリオ・ベルゴリオ)を「だからこそ君に教皇になって欲しいんだ。」と言うベネディクト16世の2人が様々な経緯を経て「人間なんだから弱くて当たり前。でも最善を尽くそう!」と自分たちの使命を確かめ合い、友情を育む物語で多様性ではなく人類が決して譲ることの出来ない普遍性とそれに奉仕する聖職者の意志を明るく軽いタッチで浮き彫りにしているからです。
なお、鑑賞中に「バチカンは省エネやりすぎ! 会議室も私室も照明が暗すぎ!」という感想を持たれる方が多いと思います。わたしはガイドツアーに参加してシスティナ礼拝堂に入ったことがありますが同礼拝堂はミケランジェロが描いた天井画を細部まで鑑賞できるよう充分に明るいし彫刻などがふんだんに公開されているバチカン内部の他の場所も明るかったです。 【かわまり】さん [映画館(字幕)] 5点(2025-05-14 19:16:40) 《新規》 |