5.深くまで読み取れる方なら分かっていると思うが、この映画では、短い記憶=人の一生、刺青=歴史、になぞらえている。つまり製作者の意図は、歴史の教科書にそう書いてあったからといってそれが真実かどうかなんて誰にもわかる訳がない、真実のあやふやさ、という事だ(これは途中、意味も無くギデオンの聖書を出している点でも明らか)。この映画の凄い所は、そういった映画の主題をストーリー進行(巻き戻すと真実が分かる)と合致させている点にある。だからこの映画の構成は、別に奇をてらったものでも何でもなく、“必然”とさえ言える。こうした、主題と構成を見事なまでにマッチさせた映画は近年まれだったため、満点を付けました。 【ジャガいもん】さん 10点(2003-12-02 02:36:24) (良:6票) |
4.《ネタバレ》 この映画の脚本は、ある意味、映画史上最高レベルだと思います。 特に、ラストで主人公が意図的に事実を消し去った場面では、全身に鳥肌が 立ちました。 時間軸を逆にするというアイデアを、それだけで終わりにしてしまうのではなく、 ストーリーの本質的な部分に直結させてしまうところが素晴らしい。 自分が現実世界だと認識しているものは、所詮、あやふやな記憶に過ぎないという、 哲学的なテーマを見事に具現化しているところも、そんじょそこらの新感覚映画 とは一線を画します。 【Ruby】さん [DVD(字幕)] 10点(2006-04-24 05:59:19) (良:3票) |
3.《ネタバレ》 出来事をバラバラにすることで、10分間で記憶をなくしてしまう主人公の疑似体験を出来るというすごく変わった映画。頭の中で、はじめは「?マーク」だらけだったのが徐々にすっきりしていくところが実に快感であった。また「?マーク」が頭をよぎっているため、内容を把握しようとす釘付け状態が続く。といった感じで最も集中して見れた作品。2回目観ることで各出来事が緻密に練られていることがわかり更に好感が持てた。 友達に薦めるならまずこの作品を選びます。 【たこちゅう】さん [DVD(字幕)] 10点(2011-03-18 11:01:44) (良:1票) |
2.「記憶」とは人生そのものといっていいかもしれない。人生とは体験を重ねてそれを記憶していくことであるが、死ぬこととは体験がなくなり、記憶も消滅する状態である。実は、この映画の「記憶」を保てない男の人生とは、死の恐怖と非常に近いと思う。今まで自分が生きてきたことの意味が全く自分で自覚できなくなるとともに、その後の数百年、数千年という時の流れが自分の意識とは全く無関係に過ぎていく恐怖。この映画は、その状態を生きながらにして味わうことになった男の悲しさを感じさせられた。「記憶をなくす恐怖」すら「記憶」出来ない男の悲しさ。僕にとっては、そこが一番の恐怖だった。映画としては、「10分間しか記憶を保てない男が、妻を殺した男に復讐する」というビッグアイデアが、文句ナシに今年一番であった。 【スネオヘッド】さん 10点(2001-12-12 00:36:55) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 ネタばれして言うならば、この映画、犯人が誰かなんて事は、どうでも良いらしいですね。問題とすべきなのは、当然ながら事件の謎なんかではなく、主人公の記憶障害。記憶障害を背負った彼は、病院に入院せざるを得ない、そして一生出られない、それは廃人も同然だ。廃人になるのは嫌だ。ならばどうする?生きる意義を見つけるのだ。それが妻を殺した犯人捜し。しかしもし犯人を見つけてしまったら、そこで『生きる事』は終了してしまう。ならば、自分で謎を作るのだ。主人公レナードは、つまり生きる目的がほしかったのだろう。人間には、生きる目的が必要なのだ、という事を僕はこの映画から感じ取りました。 |