7.2020年4月10日、大林宣彦監督が亡くなった。 遺作となるのであろう最新作の公開予定日(感染症拡大の影響で延期)に合わせるようにこの世を去った巨匠を偲びつつ、本作を初鑑賞。
数多くの彼の監督作品をつぶさに観ているわけではないけれど、この監督の映画ほど作品に対する表面的なパブリックイメージと、実際の映画世界の中に孕む“異常性”とのギャップに戸惑うものはない。
大林宣彦監督自身の風貌や人間性から、ノスタルジックでファンタジックなファミリームービーを多く手掛けている印象を持っている人も多いと思う。 無論、そういう側面を持った作品も多いのだけれど、それはあくまでも個々の作品における一側面であり、彼が生み出す映画世界の本質は、もっとアバンギャルドであった。 もっと端的な言い方をすれば、ずばり“イカれている”と言ってもいいくらいに、その映画世界は変質的だった。
本作「ねらわれた学園」も、言い切ってしまえば、完全にトンデモ映画であり、イカれている。 決して大袈裟ではなく、最初から最後までクラクラしっぱなしの映画世界に唖然とし、呆然とする。
1981年当時の映像技術やエフェクト技術が実際どの程度で、この映画の頭が痛くなるほどのチープさが、どれほど許容されるレベルのものだったのかは、同じく1981年生まれの自分には判別つかない。 しかし、狙い通りかどうかはともかくとして、この確信犯的な“歪さ”は、この映画世界に相応しい。
多感で未熟な高校生たちの心模様と、1981年という時代性、そして超能力という題材。 それらが持つアンバランスさと稚拙さが、チープを通り越して“困惑”せざるを得ない映像表現と相まって、グワングワンと押し寄せてくるようだった。
そして、その中で唯一無二の存在として可憐に輝く「薬師丸ひろ子」というアイドル性が、イカれた映画世界を問答無用に成立させている。 角川春樹(製作)の「薬師丸ひろ子の“アイドル映画”を撮ってくれ」というオーダーに対して、破天荒な映画世界を支配するまさに“偶像”として主演のアイドル女優を存在させ、見紛うことなき「アイドル映画」として成立させた大林監督の感性は凄まじい。
更には、未成熟な高校生たちの“畏怖”の象徴として登場する峰岸徹演じるヴィラン“星の魔王子”の存在感も物凄い。 変質者的に主人公に目線を送る初登場シーンから、クライマックスの直接対決(+「私は宇宙!」のキメ台詞)、そして最後の“宵の明星ウィンク”……いやあ、まさにトラウマレベルの存在感だった。(クライマックスシーンの撮影現場を想像すればするほどそのカオスさにクラクラする)
と、どう言い繕っても“トンデモ”で“ヘンテコ”なカオスな作品であることは間違いなく、この映画を観た大多数の人は「何だこりゃ…」と一笑に付したことだろうとは思う。 だがしかし、公開から40年近くの年月が経ち、時代が移り、創造主である映画監督も亡くなってしまった今、一周まわって「何だこりゃ!」と目が離せなくなる作品になっていることも間違いないと思える。
ともあれ、日本が誇るイカれた巨匠のご冥福を祈りたい。彼が残したフィルムは決して色褪せない。 【鉄腕麗人】さん [インターネット(邦画)] 5点(2020-04-17 17:18:00) (良:1票) |
6.昔NHKで6時からやってた少年ドラマってのか、あれで面白かった記憶が濃厚だったので、かなりガックリした。あっちは連続ドラマだったんで、だんだんファッショになっていく怖さをやれたんだな。テレビも低予算だったんだろうが、頑張っていた。こっちも金は宣伝費に使って実質低予算だったんだろうな。ラストの対決シーンにその低予算の哀しみが漂った。あるいは新人俳優に演技指導する予算も、製作費の穴埋めに回して使ってたんだな。体育教師がこっち側につくんだけど、だいたい体育教師ってのはあっち側の人間が多いんじゃないの。って思うのは偏見か。でもこれ話の核心はいいんで、丁寧に作れば、しっかりした作品になれたんだがなあ。 【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 5点(2012-05-16 10:02:06) |
5.大林宣彦監督の角川映画で、音楽が松任谷正隆で主題歌がユーミン、主演(薬師丸ひろ子)の相手役が高柳良一とくればどうしても「時をかける少女」を思い浮かべてしまうが、これははっきりいってハズレ。凝った映像に大林監督らしさを感じられるものの、かなり内容が滅茶苦茶な印象で、アイドル映画と割り切って見てもつまらない映画だと思う。主題歌である「守ってあげたい」も曲自体は嫌いではないが、この映画の主題歌としてはミスマッチ感が強くてちょっと残念。本来ならば評価はもっと低くてもいいと思うものの悪役である星の魔王子を演じる峰岸徹のインパクトのある怪演が印象に残ったので彼に1点プラスの5点。高見沢みちるを演じる女優もなかなかクールな演技で印象に残る。有川役の俳優も見慣れない顔だと思ったら手塚治虫の息子だったのはちょっと驚いた。 【イニシャルK】さん [DVD(邦画)] 5点(2008-11-19 18:39:15) |
4.今観ると突っ込みとごろ満載ですが、やっぱり京極(だったっけ?)がマズイよ。初期の大林ワールドはまだ洗練されてないけど、それでも当時は新鮮だったんだから。 【nizam】さん 5点(2004-04-14 13:01:07) |
3.昔薬師丸が好きだったので、映画館に見に行きましたが、その時は何とも思わなかったが、また改めて見ると、何ともまあへんてこりんな映画なんでしょうと思った。眉村さんの原作を読んでおくだけにとどめるべきだった。高柳君はやっぱり俳優の道に進む事がこれで嫌になったのかもしれん。 【fujico】さん 5点(2003-10-21 06:18:38) |
2.映画の評価は4点。主演が中学時代の先輩なので+1点。ちなみにこの映画で華々しくデビューした「薬師丸の恋人(つまり、山口百恵にとっての三浦友和にしたかったのでせう)」こと高柳君は、さすがにさっさと俳優を諦め、角川に拾ってもらって角川書店で編集部員をやっていたらしいです(もう10年以上前の話ですが……) 【柿木坂 護】さん 5点(2003-10-02 02:48:50) |
1.大林監督特有のシーンは大好きですよ。醤油のビンに入った麦茶を飲むシーン、利用されていた少女が母親の下に帰るコマ送りシーンとかね。こういう作品は映像にしてしまうとこんな作品だったっけ?と思ってしまいますね。ま、輝かしい昔を懐かしむにはいい作品なんじゃないでしょうか?でも「守ってあげたい」は名曲ですたいっ! 【さかQ】さん 5点(2001-12-28 21:50:07) |