7.《ネタバレ》 これほどまで優れたコメディの脚本は、そうそう見当たらないだろう。アカデミー賞のオリジナル脚本部門では、「パルプフィクション」に破れたものの、他の年ならば確実にアカデミー賞ものの代物だ。自分は脚本に対して、結構口を出すタイプだけれども、この脚本には口を出しようがない。それほど完璧な脚本だ。 これほどの脚本を書けるウディアレンは紛れもなく、本作でいうところの「天才」であり「アーティスト」なのだろう。しかも、本作だけではなく、「アニーホール」といった本作とは別タイプのコメディや、シリアスドラマの「インテリア」や、「マンハッタン」といったラブストーリー、「重罪と軽罪」といった奥の深い作品までも描けるという懐の深さ、引き出しの多さには改めて驚かされる。 その完璧な脚本を完璧に演出している。 コメディとシリアスの比重、重さと軽さ、深さと浅さのバランスが実に絶妙に演出されている。主役だけではなく、脇役のキャラクターも生き生きと描かれており、輝きを放っている。三人の俳優をアカデミー賞助演候補に送り出しているのが、まさにその表れだろう。 主演のジョンキューザックもギャングの家の中ではかなり笑わせてもらった。ただ、冒頭はもうちょっと威厳のある感じ、自信に満ち溢れている感じを出した方が、ラストとの落差が感じられて良かったのかもしれない。 テーマとしても、「アーティスト」とはいかなる存在かということがきちんと描かれている。 一切の妥協を許さず、自分の作品に命を懸けるのが「アーティスト」なのだろう。 自分が死ぬ間際までも、自分の作品のことを考えて、「最後のセリフを~に変えろ」と言って死んでいったチーチの姿には、ユーモアさと同時に、「アーティストとはこうあるもの」という深さを表している。 一方、金のためにオリーブを起用しなければならないという条件で妥協したデビッドは、既に始めの段階から、真の意味の「アーティスト」ではなかったのだろう。 ただし、自己の作品のために妥協を許さず、身を滅ぼしていく「アーティスト」のチーチと、自分に見合った人と小さな幸せを得るデビッドでは、どちらが本当に幸せなのかということも考えてしまうオチになっているのも面白い。 【六本木ソルジャー】さん [DVD(字幕)] 10点(2006-08-17 23:01:41) (良:4票) |
6.《ネタバレ》 この作品、ずっと以前に録画したビデオもあったけど観ずに処分してしまった。そして5年前にHDD録画したままになっていた。そして本日やっと観ました。もう滅茶苦茶面白い、面白過ぎてひとりで観ながら声出して笑ってしまった。 キャストもそしてそれぞれのキャラも誰もかれも濃くて可笑しい、アップになることがあまりなくて声で誰かわかったのがジェニファー・ティリーとハーヴェイ・ファイアスタインだった。ジョー・ヴィテレッリはやはりギャングだ、ギャング役以外で出ている映画ってあるんだろうか。ジョン・キューザックはあたふたする役柄が似合う。 とにかくチャズ・パルミンテリ演じるギャングの用心棒チーチの存在、こんな展開になるとはまったく予想していなかったので話が進んでいけばいくほど面白くなっていく。 チーチの自分の美しい芝居への拘り具合は邪魔な女優を葬り、死に際にまでラストのセリフを修正しろと言い残す。 天才的アーティストってチーチみたいな人なのかもしれない。デヴィッドはエレンと故郷に帰って結婚することを選ぶ。 成功を夢見てブロードウェイに集まる自称アーティストをアレンは数多く見てきたんだろうな、アレン自身に投影されてる部分もあるのかしら。「アーティストとは」それが面白可笑しく描かれていると思います、傑作です。 とにかく「アーティスト」なんです「Don't Speak」も忘れちゃいけないですね。 【envy】さん [CS・衛星(字幕)] 10点(2020-04-12 17:23:03) (良:1票) |
5.単なるごろつきのチーチがこのような才能を発揮していくとは。華やかなブロードウェイの裏側、つまり製作、プロモート、脚本、キャスティング、稽古などに様々な大人の事情が絡み合って、決して才能のあるものだけが成功するわけではないし、才能が無いように見えても意外な才能が眠っていることもあるというのを、わかりやすく、暗くなりすぎずにエンターテイメントとして作品化するのに成功している。好み35/50、演出10/15、脚本12/15、演技8/10、技術7/10、合計72/100→7/10点 【chachabone】さん [DVD(字幕)] 7点(2017-04-26 23:40:38) (良:1票) |
4.どう考えても、奥さんだろ。 【Yoshi】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2008-03-22 08:25:17) (笑:1票) |
3.めちゃくちゃ面白かった。おすすめ。
ウディ・アレンとしては珍しく、一般受けしやすいバランスのとれた作品となっている。すべてのキャラが立っていて、コメディとしてとてもよくできていた(ただし相変わらず笑うところでもわかりやすい演出なしにさらっとすませているので、わからない人にはわからないかもしれない)。それでいてテーマ性も深く、芸術家とはどんな人種なのかを的確に言い当てている。
仮初めの芸術家としての自己顕示欲やナルシシズムに囚われた連中ばかりいるなかで、人知れず至高を求める真の芸術家の純粋さが、恐ろしく、また哀しい。凡人は特別な才能のある人物を見ると安易に羨ましがったりするけど、天才からすると気楽で幸福そうな凡人が羨ましく見えるのかもしれない。
ウディ・アレンとは波長が合わないと思っていたけど、本作で見直した。濡れそぼった子ヤギみたいな顔してるくせして、やるじゃないかアレン。本人が出演しなかったことも、この作品の水準を上げた一因じゃないかと思う(ひどい 笑)。本人が出なかったこと、そして恋愛を主題としなかったことで、過剰な自意識やコンプレックスが作品の均衡を崩すのを防げたんじゃないだろうか。 【no one】さん [ビデオ(字幕)] 9点(2007-12-16 18:26:14) (良:1票) |
2.よくあるバックステージもので、セットや演出方法など、ややもすれば駄作に陥る危険性をあえて犯してるようで、よくよく見れば、細部にまで凝りに凝った作りをしているという天才肌のアレンらしい作品。機知に富んだユーモア、絶妙のセリフ回し、実力派のキャストと、文句のつけようのない出来栄え。CGや特撮など派手な技術的進歩が目覚しい昨今にあって、脚本や役者の力で勝負する「これこそ映画だ!」と、原点を教えてもらった感じだ。パーな愛人役をこなしたジェニファーティリーと用心棒とのセリフの練習のシーンは何度見ても笑える。トウの経った落ち目の大女優へレンは言うに及ばず。未見の方々へ。こんな面白い映画を知らないなんて、人生の何十分のいちを確実に損してることになりますよ! 【給食係】さん 10点(2002-07-08 01:17:43) (良:1票) |
1.ぷぷぷ。思わず笑ってしまいました。キャラクタが立っていて、特にジョン・キューザックとダイアン・ウィーストのやり取りが笑えます。「だめ!言わないで..」のセリフは何度聞いてもおかしいです。どんどんツマミ食いをして太っていく俳優とかナチラルハイテンションな女優とか。(ごめんなさい、名前わかりません)ジェニファー・テイリーのブリブリの演技もなかなかGOODなり。展開が意外とポンポン進むんで、飽きませんでした。ギャングのチャズ・パルミンテリが実は俳優よりも芝居のことを良く理解していて、ジョン・キューザックに書き直しを進める...死んじゃうんだけどねぇ。 【さかQ】さん 7点(2001-11-27 21:34:39) (良:1票) |