13.驚いた。何という圧倒的なスペクタクルだろうか。 2020年、“コロナ禍”の真っ只中。1980年公開のこの国産超大作を、今このタイミングで鑑賞したことは、極めて稀有な映画体験だと言えよう。 新型コロナウイルス感染症の蔓延とそれに伴う悲劇が、全世界的に収束しない今の時世において、このSF映画が描き出したパニックと世界の“終末”は、決して大袈裟ではない「予言」であり、恐怖であった。
序盤のパンデミック描写はまさに今現在の社会の有様そのものだったし、そこから展開される人類死滅の地獄絵図は、とことん絶望的で遠慮がなかった。 そして、世界の人口が南極に取り残された数百人のみとなっても、さらなる破滅の進行を余儀なくされる人類の行く末には、恐怖や憤りを遥かに超えて、只々虚無感を覚えた。
その“虚無感”は、今作同様に明確な滅亡の最中を生きる人類の顛末を描いた「渚にて(1959・米)」や、冷戦下における核戦争の危機を真摯に描ききった「未知なる飛行/フェイルセイフ(1964・米)」を彷彿とさせる。 両作とも、冷戦時代のアメリカで切実な危機感と共に製作された作品であり、傑作だった。 ソリッドに研ぎ澄まされたこれらの作品と比べると、今作は大味だし、稚拙なウェットさがあることは否めない。 ただし、冒頭に記したとおり、超大なスペクタクルを伴った映画的な圧力が、また別の魅力と価値を生み出していると思った。
地球全体を舞台にしたSF的なパニックと恐怖、それに伴う残酷と慈悲の釣瓶打ちが凄まじい。 それはやはり当時隆盛を極めた「角川映画」だからこそ仕掛けることができ、実現し得た映画企画であったろうし、監督を務めた深作欣二による絶対的な支配力がなし得た結果だと思う。 ロケーション、キャスティング、バジェット、そして映画人たちのエネルギー、映画製作におけるあらゆる規模が今現在の日本映画界の比ではなく、その“スケール感”に圧倒される。
更には、小松左京のSF小説を原作にしたストーリーテリングが、SFパニック映画としての物語性を深め、映画世界を芳醇にしている。 世界の人口が数百人になった時、それまでの人間社会の倫理観や価値観などは、一旦無に帰す。 そこには、“感情”を抑制し、生物として存続することの残酷な真意が明確に映し出されていたと思う。
「戦争」と「疫病」、それはいつの時代においても、人類の最大の“敵”であり、“弱点”そのものであろう。 むしろ人類史自体が、戦争と疫病の繰り返しによって形成されていると言っても過言ではないのかもしれない。 そうであるのならば、非力で愚かな人類には、打ち勝つすべも可能性もそもそも存在しないのではないか……。
燃え盛る巨大な落日を目の当たりにして、“男”は一人、立ち尽くす。
それでも……それでもだ。我々人類が最後の最後まで手繰るべきものは、「希望」であり、「愛」であるという帰着。 落日の絶望感に殆ど押し潰されながら、それでも男は歩み出す。 その様は、巨大な絶望に対してあまりにも無力で、脆弱に映るけれど、どこまでいってもその先に「明日」があるのだと、今この世界に生きる人類の一人として、信じたい。
「Life is wonderful (人生はいいものだ)」と言い続けることが、唯一にして最大の抗いなのかもしれない。 【鉄腕麗人】さん [インターネット(邦画)] 10点(2020-04-26 00:06:47) (良:3票)(笑:1票) |
12.日本沈没よりも、ある意味、よりリアリティのある怖い素材の映画である。バイオハザードは今でこそ一般的だが、この当時に、この作品を書いていた小松左京が、凄い。映画としては、邦画を見直したスケールの大きい作品であると同時に、原作を超える映画は、やっぱり、そうは転がってはいないということ。映画の脚本から書き下ろしたのならともかく、小説を原作したら、やっぱり小説の方が細かい心理描写が出来るからねぇ。何より、何故無理矢理、色絡み、女絡みを入れなければならないんだ。原作に忠実に描いても、十分、通用する内容だったぞ。「南に行くんです」「でも僕は、南に行くんです」と、ボロボロになって、ただただ南を目指す草刈のひたむきさが、とても良かった。 【由布】さん 7点(2002-10-18 00:00:32) (良:2票) |
11.子供の時にこの映画をどうしても見たくて、父に連れて行ってもらいました。壮大なストーリーに感動しました。人類は愚かな人間によって二度も滅びます。そして何とか生き残った草刈正雄が最愛の女性に会うためにワシントンDCから南米チリの最先端まで何年もかけて徒歩で向かいます。究極の愛です。ジャニス・イアンの主題歌も完璧です。何度見ても感動します。映画のメッセージの受けとめ方は人それぞれです。たくさんの人に見て色々と感じてほしい作品です。 【みるちゃん】さん [DVD(字幕)] 10点(2019-09-21 17:09:37) (良:1票) |
10.子どものころテレビ放映を見たときの印象が忘れられず30年ぶりに鑑賞。今観ると設定や映画のつくりに時代を感じるが、この映画最大にして唯一の希望を感じさせるシーンである、吉住がアメリカ大陸を縦断し生き残った人々と再会する場面は30年たっても感動は色あせていなかった。なんといっても本物の南極ロケは迫力十分で、最近のキムタクの主演ドラマ「南極大陸」に比べると雲泥の差である。小さいころ観た(歳がばれちゃうね)印象と変わらず同じ感動を味わえたことが嬉しかった。好み40/50、演出10/15、脚本12/15、演技7/10、技術9/10、合計78/100→8/10点 【chachabone】さん [DVD(字幕)] 8点(2012-08-19 23:50:18) (良:1票) |
9.学生時代にビデオで観たんやけど、それまで観た邦画の中ではグンをぬいておもしろかった記憶が今でも残ってる。なんか洋画に匹敵するくらいの壮大さは今の邦画でもちょっとないんちゃうかな。当時は邦画ってしょぼいなって感じでいたから、これ観た時もあんまり期待してなかった分、ちょっと甘く評価してるかもしれんけど、とにかく壮大さでは邦画の中ではトップクラスやと思う。また観てみたいな。今見たら評価変わるかもしれんけど。人類滅亡系の映画好きにはオススメ。邦画も結構いけます。 【なにわ君】さん 10点(2004-06-08 04:16:41) (良:1票) |
8.ひとつの作品に24億円も掛けるなんてこの時代の角川映画にしか出来ない事だろう。確かに掛けた分だけの価値はある。物語のスケールの大きさや兵器開発を批判したテーマの強さも映像からガンガンにじみ出てくる。が、どうにも納得できない部分がある。それはソ連から報復攻撃を受けて飛んできた核ミサイルによって、アメリカ特にワシントンは全滅しているはずで吉住が生き延びられるはずがないと思うのだが、原作ではこの辺りの経緯についてどのように書かれていたのだろうか。日本の映画も結構やるじゃないかと思える数少ない映画で、この編集のまま海外でも公開出来ていたらこのあと作られる邦画にもっと世界配給のチャンスが与えられることになっていたかも知れないと思うと残念。 【WEB職人】さん 7点(2004-05-05 23:35:39) (良:1票) |
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7.邦画で最高傑作だと思います。何十回観ても見飽きる事がありません。 【gyu_yan】さん 10点(2004-05-02 22:17:21) (笑:1票) |
6.相当、微妙・・・。ナマの<゜)))彡を食べるシーンがあったと思うんですけど、缶詰とか見つからなかったんですかねえ。それに自転車くらい道端に・・・って、ファンの方、ごめんなさい! |
5.黄昏の夕日をバックのホワイトハウス、死の最後の瞬間を迎えた合衆国大統領と咳をしまくりながらの上院議員のやりとりが本当に世界が終わる瞬間ってこんなかんじなのかな。。。とおもえるほどのやりきれなさがとても印象に残ってます。SARS騒動がリアルタイムで起こってる昨今洒落にならないリアルさがあちこちにちりばめられてるパニック系邦画でとりあえず最後まで破綻せず描ききってる数少ない良作とおもいます。一度は見ておいたほうがいいかも 【モー】さん 8点(2003-04-30 06:19:36) (良:1票) |
4.たしかに、よく撮ったと思う。前半部分は原作好きから見てもなかなか巧くまとめている。しかしなぁ、なぜオリビアハッセーなのか。吉住たちがワシントンに行く前、夜中あのおばちゃんと話す場面が最高にいいところじゃないか。たしかに見栄えは落ちるかもしれないがあの場面における叙情、余韻、あれこそ悲惨で非情な世界の中で唯一救いといえる見せ場。あれを描かなきゃこの映画を作る意味はないよ。 【Gloria】さん 3点(2003-04-03 00:16:13) (良:1票) |
3.ジャニス・イアンの歌と、黄昏を象徴するかのような夕日を右手に歩く草刈正雄のボロボロな姿の影が、今も印象に残っています。当時の世界情勢を背景に、細菌兵器や核兵器というものに焦点が当てられていて、子供心に恐怖心を覚えました。個人的にボー・スベンソンが好きだったので、瀕死の状態で「Go...」と云う姿に涙しました。今は、ストーリーを反芻してみると、南極にのみ生き残った人間達が子孫を増やす為に、女性が任意にどんどん妊娠して行く姿に色々考えさせられたりもします。色々考えてみるには、いい映画だと思います。 【MOON】さん 10点(2002-05-30 00:26:16) (良:1票) |
2.最近待望のDVD化がされ(しかも当時劇場でもモノラルだった?ものが5.1ch化されて!)久しぶりに見ましたが、製作された時代の事情を抜きにしてもいい作品だと思います。昨今のちょっと特撮になるとすぐにCGを多用してペラペラの「画」をちりばめる作品に比べて、映画に「重み」が感じられます。小松左京氏の原作のプロットの緻密さに負うところが大きいのは事実ですが、あの時代に曲がりなりにも南極を始め世界各地でロケをやり、役者も使った上で映画としてまとまっている日本作品はこれくらいではないでしょうか?国会前道路の自衛隊登場シーンなんて今でも撮れないんではと思います。細かく見れば「原子力」の設定の潜水艦がおんぼろのシップ型でしかもディーゼル排気が出てるとか、浮上シーンはフィルムを裏返して使い回されてるとか、核爆発やサブロックのシーンは出来合いのものであるとか、気づくところは色々あるのですが、それは別の観点から楽しめます。「トップ・ガン」のミグがF5だったのに比べれば全然OKです(笑)。本当は10点といきたいところですが、唯一引っかかるのは草刈正雄がワシントンからチリの端まで5年かけて歩いて辿り着くシーンで、原作では辿り着くものの放浪中に気が狂ってしまい2度と正気には戻らなかった、となっていたのを無理矢理ハッピーエンドにしてしまったところで、これはやっぱり日本映画だな、と思ったものでした。まぁ原作通りにしたら一般受けはしなかったかもしれませんが、その方が感動も大きかったかも?と今でも思います。そうそう、今回DVDに付録で海外版の復活の日(日本版のサブタイトルでもあった「VIRUS」が本タイトルになっている)が入ってましたが、こちらは全然ダメダメです。 【HNR32】さん 9点(2002-04-16 23:47:05) (良:1票) |
1.MM-88と言う恐るべき細菌が猛威を振るうこの作品、なかなかよく出来ていますね。徒歩で南極に辿り着く、草刈正雄は道に明るいのでしょうね。それより問題は、潜水艦の存在です。核攻撃が世界中でなされた時、まだ潜水艦は南極には帰っていないはず・・・。 ラスト、オリビア・ハッセー達が住んでいる小屋の近くに潜水艦があれば、本当にハッピーエンディングだったのですが。これなら、実に楽に国に帰れますよね。この映画の公開前、日本テレビの朝の番組のあるコーナー(コーナーのタイトルは「アドベンチャー・レディ」だったような記憶があります)で、一般人の主婦を世界各地に送りレポートさせる企画があってそれを見ていたら、撮影の為、北へ向かう船の上に1人たたずむ草刈正雄にばったり出会った主婦が”日本でも会えないのに、こんな所で会うなんて・・・”と感極まっていました。そんなエピソードもありながら、草刈正雄は、「復活の日」の話題になると必ず”どうやって南極に帰れたの?”と聞かれますが、その度”歩いた(笑)”と答えていますね。うーむ・・・人生は、人生はいいものだ・・・ |