《改行表示》 5.《ネタバレ》 この映画は、製作総指揮が、TVシリーズの生みの親であるジーン・ロッデンベリー氏から、手際よくこなすヒットメーカーのハーヴ・ベネット氏に交代しました。既に「本来のスタートレックらしさを取り戻した作品」として、ファンから不動の評価を得ています。しかし「以下のような話もあり得たかも…」と個人的に思っているので、お伝えしておきます。 私が一番、引っかかっているのは、TVエピソードの結末を壊している点です。TVエピソードの原題は「Space Seed=宇宙の種」と言います。カーンはラストで、惑星セテイ・アルファ・Ⅴへの追放を前に「私は星を手に入れることを望んでいた。立派な帝国を築いてみせる」と誇り高く宣言して去っていきました。カークとスポックはカーン達の入植を「宇宙の種」に見立て「今日、蒔いた種が、どんな実を結ぶことになるか、いずれ訪問しよう」という明るい未来への展望をもって幕を閉じました。したがって当映画も「優性人間達のその後の動向を再調査するため、惑星を訪れた」という設定でも十分、話は成立したのでは…と思われます。それなのに、映画では「隣の惑星が爆発して不毛の土地になってしまった」だったのです。蒔いた種を根こそぎにしたように私は感じてしまったのです。 こうした変更は、製作の実権がベネット氏に変わったことが一因かな…と思ったりしています。もしロッデンベリー氏なら【カーンは、当時の屈辱をカークに吐露し衝突しながらも、惑星に訪れた危機に対し協働で乗り越え…】といった和解へつながるコンセプトの物語にしたのでは…と思ったりしています。 ただし、製作当時は、ソ連との冷戦を背景に、レーガン大統領により「強いアメリカ」が標榜され、映画界にも少なからず反映されていた時期でした。そのためか?最初のレギュラー陣による映画版(1~6作目)のうち「アーミー色が強い作品」とも言われています。したがって、仮に上記のようなコンセプト案があったとしても、当時は作り難かったのかもしれません。こうしたコンセプトの映画は、冷戦終結を背景にしたスタートレックⅥ(1991年)で実現することになります。まさに「映画は時代を映す鏡」と思われます。 さて、採点ですが…私自身、スポックが亡くなる場面に涙したものの、上記の【引っかかっている部分】を差し引き、ファンの皆さんには申し訳ありませんが、9点とさせていただきます。 令和3(2021)年6月13日(日)追記:↑の【鱗歌さん】のレビューを拝読してみて、公開当時の映画館での思い出が甦りました。それは、寄生生物が耳から出てくるシーンに場内がザワつき、映画が終わった後も「あの虫が気持ち悪かったね」という感想が飛び交ったことです。【鱗歌さん】のおっしゃる『小技も(というかむしろ小技の方が)効いてます』は、まさに言い得て妙だと感じました。なお、当時、スタートレックといえば、TVシリーズのTOSと映画版1作目のみの時代。場内の「気持ち悪い」を耳にして、当時の私は内心『そもそも、TVのSpace Seedの設定を壊している感じがするだけでも腑に落ちないのに…スタートレックは、気持ち悪さを売りにする作品ではなかったはずなんだけど…こういう路線変更って嫌だな…』と寂しく思ったものでした。当時を思い出して何だか減点したくなってきましたが…とりあえず9点のままにしておきます。 *追記を機に、改行や段落が不自然だったので修正してあります 【せんべい】さん [映画館(字幕)] 9点(2015-01-11 19:40:49) (良:2票) |
《改行表示》 4.第2作にして早くも予算が大幅に削減されてしまったという、この作品。そう思って見ると一部、セットが若干安っぽく思えたりもするのですが、気のせいということにいたしましょう。そもそも第1作もどこにそんなにお金がかかったのかよくわからんし。 第1作には、ドック停泊中のエンタープライズ号に着艦するポッドがその前に周りをぐるっと回ってその威容を描き出す素晴らしいシーンがありましたが、本作でも短縮版とは言え同様のシーンが。ってコレ、どう見ても前作の映像の流用ですけどね。続くエンタープライズ号発艦シーンは、これも前作のラストシーンの流用っぽい。そりゃ安上がりなワケです。 さて、この第2作。テレビシリーズに何の関心もない私にはトンとわからんのですがどうやら、今回の敵は、宿命の強敵とも言うべきカーン。らしい。 と言うわけで、今回は割と単純に宇宙戦艦同士の戦い、みたいな素朴なオハナシになってます。けど、人間の耳から体内に侵入する気味の悪い寄生生物なんかも出てきたりして、小技も(というかむしろ小技の方が)効いてます。 ジェネシス計画の描写には、スケルトンのみならず、フルの3D-CGと呼べそうなCGも登場。コレ、『トロン』と同じ製作年ですよね。大したもんです。 とにもかくにも、エンタープライズ号の未知への旅は、まだまだ続くのでありました。 【鱗歌】さん [インターネット(字幕)] 7点(2021-06-13 09:47:16) (良:1票) |
《改行表示》 3.《ネタバレ》 死を意識させるシミュレーション試験。実戦でそれに対峙せざるを得ないエンタープライズ。いわばカンニングで逃げたカークに対して、真正面から立ち向かったスポック。 正直、自己犠牲で船を救うとか、多数の利益が少数の利益に優先するとか、なんだか素直に受け入れ難いというか感動しにくい展開なのだが、スポックが死んだという衝撃は、やはり劇場版だけ見てた時とは違い、(TOS の)思い入れの積もった分悲しい。自己犠牲への不満も最大幸福論も頭から吹っ飛んでしまう。勿論、扱ってる話が無から命を生み出す技術の話なので、それに引っ掛けてスポックを復活させるのは当初からの路線だったのだろうが。 そうそう、TOSでカーンの回を見たが、新たな星を支配すると豪語したカーンにしては、今回のカーンは逆恨み感が女々しい。残虐感が増しているが、そういうキャラじゃなかったのでは?また、初めて見た時には、有視界航行での戦闘とか楽しかったのだが、スタートレックの面白さってそういう所にあったわけじゃないんだなと思い知る。 この映画は、次の『ミスター・スポックを探せ』と一組の映画なんだな。 【Tolbie】さん [ブルーレイ(字幕)] 6点(2018-10-04 21:48:33) (良:1票) |
《改行表示》 2.《ネタバレ》 この映画はスター・トレック・ファンには評判が良いらしいが、正直登場人物に魅力が欠けているように感じた。カーンもカークも観る人を驚かすような行動はしないのでライバル揃って冴えない。びっくりするくらい美しいサービック大尉は前作のデッカーとアイリアを合わせたようなキャラなのかと思いきや、この子ストーリーの中で特になんにもしないのだ(笑)。どうも、みんな、衝撃のラスト展開に持っていかれてやしないか。 前作の哲学性や耽美性は少々やりすぎだったかもしれないが、この作品ではいろいろ削って中身も薄くなったように感じる。正直アクションも特撮も大したことないぞ。あと音楽も手堅く質が高いのは確かだが、この「娯楽作品」を盛り上げるにはインパクトが足りなかった。 【tubird】さん [DVD(字幕)] 5点(2016-10-23 03:00:49) (良:1票) |
《改行表示》 1.《ネタバレ》 映画版はすべて鑑賞しているものの、テレビシリーズは1話も見たことがありません。よって、主要キャラクターが誰であるか、どんな世界観の元で動いている物語なのかという最低限度の情報は持っているものの、それ以上の知識はないという状況での鑑賞です。。。 シリーズ最高傑作との呼び声も高い本作ですが、映画としてはそれほどだなぁという印象です。ヘタな演技に臭いセリフ、宇宙を舞台にしている割には箱庭的なスケールの小ささも感じさせられ、テレビシリーズに起源を持つ作品ならではの弱さがドバっと出てしまっています。また、スピード感溢れるドッグファイトが魅力だった『スターウォーズ』と比較すると、2隻の戦艦がもっちゃりと動いているだけの本作は見せ場の迫力にも欠けています。。。 テレビシリーズにおける人気キャラクター・カーンをフィーチャーしたことが本作の人気の要因だと思いますが、カーンに係る説明があまりに端折られ過ぎているため、テレビシリーズを見ていない観客が完全に蚊帳の外に置かれる点もマズかったと思います。セリフでのフォローくらいは入れた方が良かったのではないでしょうか。また、カーンが悪のカリスマに見えないという点も大きなマイナスでした。彼は知力にも体力にも秀でた優生人類にして、リーダーとしての魅力と統率力にも恵まれた王の中の王という設定のはずなのですが、この映画版ではカーク憎しの感情のみで暴走する小物にしか見えません。部下の制止を聞き入れず、いとも簡単にカークの罠にかかるに至っては、並みの雑魚キャラ以下。設定を脳内補完できるファンならともかく、本作でカーンに初対面する一般客にとっては、なかなか厳しいキャラだったと思います。 【ザ・チャンバラ】さん [DVD(吹替)] 4点(2013-08-25 01:41:55) (良:1票) |