4.「金色夜叉」とか、七夕伝説とかをいい話だと思っているので、この手のストーリーにはどうしても点数が甘くなる。祖母の家で談笑しているときの客船の汽笛、二人きりになったときにダンス音楽から変化する「蛍の光」のメロディ、いずれも音が聞こえてきたときの役者のちょっとした表情の動きで、別れの時が来たこと、航海最後の晩であることを一瞬のうちに納得させてしまうのがなんともうまい。脇役としてふられる男と女がひとりずついるが、ただ遺産を継いだだけの者にはたいしたことをさせず、自分の才覚と努力で生きてきた者には、ふられた後に一仕事も二仕事もさせてバランスをとっているところに作り手の美学が感じられる。また、船着場の場面は、乗客が大量のスーツケースを携えて下船するのでなければ絶対に変なのだが、そこを、知らぬは婚約者ばかりなり、というコミカルな状況設定と役者の視線の動き及びカメラワークで観客を圧倒し、荷物を見せずに乗り切ってしまうところが騙しのテクニックとして秀逸で、これぞ映画ならではの省略でありだからこその名場面なのだと思っている。 【南浦和で笑う三波】さん 9点(2005-03-21 11:56:21) (良:3票) |
3.私の中で、プレイボーイNo.1はこの作品のケイリー・グラント。ちなみにNo.2は『麗しのサブリナ』のウィリアム・ホールデンです。ずっと不思議だったんですよね。なぜにケイリー・グラントがホールデンを抜いたか。ホールデンのほうが単純にカッコイイし身のこなしもスマート。お金持ちだしぃ~、私だったらホールデンを選ぶ。でもここのケイリー・グラントがNo.1たる所以は、“金を持っていない”のに女が自ら貢ぐってところ。はぁ~たいしたもんだ。個人的には、この作品の登場人物の中で一等好きなのは、おばあ様です。あの上品でピアノの上手なグランマに私は惚れてしまいます。あんな人と一緒にお茶したい。ごくごく個人的な話なんですが、先日こじんまりとした宿に友達と泊まった際、和服をキリッときこなしたこの上なく上品なお婆さんをみかけました。出発のときにチラッと見ただけなのですが、こんな方にいろいろなお話を伺いたいものだと思いました。きっと、ヒロインにとってもお婆さんと過ごした数時間は一生忘れられないステキな時間だったんだと思います。 【元みかん】さん 8点(2003-10-17 03:01:38) (良:3票) |
2.デボラ・カー追悼レビュー。限りなく典雅でエレガント、いかにも英国出身らしい知性と美貌を兼ね備えた貴女の面影をクラシック映画ファンはいつまでも甘美な記憶の中に留める事でしょう。50年代ハリウッド映画らしいメロドラマの名作。メグ・ライアン主演「めぐり逢えたら」がこれにインスパイアされた秀作になった事でも有名。色事紳士ケイリー・グラント氏との大人同士の応酬の滋味をじっくりと味わえます。さよなら、麗しのデボラ、エンパイア・ステートビルの屋上にて、いつかまた夢の中でお逢いしましょう・・・。 【放浪紳士チャーリー】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2007-10-19 17:29:54) (良:1票) |
1.生活感のない美男美女が織りなす往年の夢物語。しかし年齢を重ねてくると映画の見方も変わってくる。そうか、これは女の意地を通す物語なんだ。一目惚れしてすぐにキスしてしまう様な話じゃない。最初からだらしないケーリー・グラント(の役)に比べ、毅然として筋を通そうとするデボラ・カーのなんと美しいことか、そしていじらしく可愛いことか。特にラスト、座ったままで芯の強さと愛情を感じさせる演技は圧巻。感動以上に、恋愛の楽しさを思い出させてくれる名画です。7点献上。 【sayzin】さん 7点(2003-01-01 15:55:56) (良:1票) |