6.「金色夜叉」とか、七夕伝説とかをいい話だと思っているので、この手のストーリーにはどうしても点数が甘くなる。祖母の家で談笑しているときの客船の汽笛、二人きりになったときにダンス音楽から変化する「蛍の光」のメロディ、いずれも音が聞こえてきたときの役者のちょっとした表情の動きで、別れの時が来たこと、航海最後の晩であることを一瞬のうちに納得させてしまうのがなんともうまい。脇役としてふられる男と女がひとりずついるが、ただ遺産を継いだだけの者にはたいしたことをさせず、自分の才覚と努力で生きてきた者には、ふられた後に一仕事も二仕事もさせてバランスをとっているところに作り手の美学が感じられる。また、船着場の場面は、乗客が大量のスーツケースを携えて下船するのでなければ絶対に変なのだが、そこを、知らぬは婚約者ばかりなり、というコミカルな状況設定と役者の視線の動き及びカメラワークで観客を圧倒し、荷物を見せずに乗り切ってしまうところが騙しのテクニックとして秀逸で、これぞ映画ならではの省略でありだからこその名場面なのだと思っている。 【南浦和で笑う三波】さん 9点(2005-03-21 11:56:21) (良:3票) |
5.私の中で、プレイボーイNo.1はこの作品のケイリー・グラント。ちなみにNo.2は『麗しのサブリナ』のウィリアム・ホールデンです。ずっと不思議だったんですよね。なぜにケイリー・グラントがホールデンを抜いたか。ホールデンのほうが単純にカッコイイし身のこなしもスマート。お金持ちだしぃ~、私だったらホールデンを選ぶ。でもここのケイリー・グラントがNo.1たる所以は、“金を持っていない”のに女が自ら貢ぐってところ。はぁ~たいしたもんだ。個人的には、この作品の登場人物の中で一等好きなのは、おばあ様です。あの上品でピアノの上手なグランマに私は惚れてしまいます。あんな人と一緒にお茶したい。ごくごく個人的な話なんですが、先日こじんまりとした宿に友達と泊まった際、和服をキリッときこなしたこの上なく上品なお婆さんをみかけました。出発のときにチラッと見ただけなのですが、こんな方にいろいろなお話を伺いたいものだと思いました。きっと、ヒロインにとってもお婆さんと過ごした数時間は一生忘れられないステキな時間だったんだと思います。 【元みかん】さん 8点(2003-10-17 03:01:38) (良:3票) |
4.《ネタバレ》 デボラ・カー目当てに借りてきた。彼女の出演している作品を観るのはこれで何本目だろう?今まで観たデボラ・カー出演作品の中でこの作品が一番かもしれない。いや、間違いなくこれが彼女の出ている映画のベストだとまだ他の作品観てないのに思わずにはいられなくなる。それはやはりあの美貌、気品に満ちた美しさ、ただ美しいだけなくきちんとした演技力も持っているのが単なる美人とは違う。単なる美人なら日本にもいるだろうけど、演技力も持っている。それでいて、全くもって嫌味がなく、美人であることを強調しない。とにかく品が良いのである。だからこそこの映画が大人の映画として、また、名作として語られることが多いと思うぐらいデボラ・カーが良い。ケイリー・グラントと二人で食事しようとしている所を大勢の人に見られて恥ずかしがる所の二人と船の上での会話やケイリー・グラントの母の住む島でのあの歌声の見事さ、美しい音楽と美しい歌声、そして、やはりあのラストでの涙、ケガを負ったデボラ・カーに気付きそれを温かく包み込んで抱きしめるケイリー・グラントの男ぷり、優しさとそれとは対照的にケイリー・グラントが出てくるだけで、何だかサスペンス的な香り、何かあるんではないか?というような緊張感、それは私にとってケイリー・グラントという人はヒッチコック映画での印象が強すぎるからかもしれないが、良い人のように見せて実は何かたくらんでるんではいないか?と考えてしまう。ある意味、違った緊張感、面白さがこの映画にはある。話的には余りにもベタな感じ、出来すぎのようにも思えるものの、昨今の恋愛ものみたいに自分さえ良ければ相手は死のうがお構いなしみたいなものが無く、品の良い作品になっているのもこの映画が良い所である。 【青観】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2009-09-12 12:08:31) (良:1票) |
3.デボラ・カー追悼レビュー。限りなく典雅でエレガント、いかにも英国出身らしい知性と美貌を兼ね備えた貴女の面影をクラシック映画ファンはいつまでも甘美な記憶の中に留める事でしょう。50年代ハリウッド映画らしいメロドラマの名作。メグ・ライアン主演「めぐり逢えたら」がこれにインスパイアされた秀作になった事でも有名。色事紳士ケイリー・グラント氏との大人同士の応酬の滋味をじっくりと味わえます。さよなら、麗しのデボラ、エンパイア・ステートビルの屋上にて、いつかまた夢の中でお逢いしましょう・・・。 【放浪紳士チャーリー】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2007-10-19 17:29:54) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 (不正確な記憶ですみませんが・・)ほら、「めぐり逢えたら」で、「あの映画を見て泣かなかったら女じゃない」みたいな話をしていて、それだけで女たちがダーダー泣くじゃないですか。あのシーンを見て、女心に東西はないのネエと、おかしいようなうれしいような気がしたのでした。私も、昔から何度もTVの名画劇場で見て、そのたびにラストのシーンでダーダーと泣いたものです。この際、私はデボラ・カーみたいな美女じゃない、ということは関係ない。その瞬間は絶対に自分が彼女であり彼であるような心境になっているんですよね、映画のちからってフシギだ!(けっこうありがちなストーリーなのにどうしていつも新鮮に見られるんだろと、何度観ても不思議でしたが、どなたかの書き込みを読んで、あーそうかー、と。観客は簡単に再会するはずがないと思っているのに、実にあっさりと再会し、シラッとしてしまう。おヘソはあそこですね。あのシーンとラストシーンはシナリオを書いてても、撮影してても、面白かっただろうなー。うーん、ジェラシーを感じてしまうわ) 【おばちゃん】さん 9点(2003-05-16 22:15:45) (笑:1票) |
1.生活感のない美男美女が織りなす往年の夢物語。しかし年齢を重ねてくると映画の見方も変わってくる。そうか、これは女の意地を通す物語なんだ。一目惚れしてすぐにキスしてしまう様な話じゃない。最初からだらしないケーリー・グラント(の役)に比べ、毅然として筋を通そうとするデボラ・カーのなんと美しいことか、そしていじらしく可愛いことか。特にラスト、座ったままで芯の強さと愛情を感じさせる演技は圧巻。感動以上に、恋愛の楽しさを思い出させてくれる名画です。7点献上。 【sayzin】さん 7点(2003-01-01 15:55:56) (良:1票) |