10.《ネタバレ》 これは好きな映画です。
バブル期の若者を主役に、オシャレな青春映画を撮り続けてきた馬場監督が「バブル崩壊後、肉体労働で生計を立てる主人公」を描いてみせたという、その舞台背景も面白いし、そんな予備知識無しで、シンプルに作品を観賞するだけでも面白い。 初見の際には、主人公の尚実に感情移入出来ず「何だ、この女は」と呆れる思いもあったんですが、今となっては彼女の存在ひっくるめて好きな映画になったんだから、本当に不思議ですね。
理由としては、もう一人の主人公である鈴木が尚実に反発しつつも、少しずつ認め、惹かれていく過程が、観客である自分の心境と、上手くシンクロしてくれたのが大きいかと。 とにかく最初の印象は最悪で、車で人を轢いておきながら相手よりも先に車の傷を心配する場面なんてもう、正直ドン引き。
それでも「携帯電話を届ける依頼」をやり遂げてみせた辺りから、徐々に見方が変わってくるんです。 ここの演出が上手くて、それまで日焼けを気にして着込んでいた上着を「邪魔」と言って脱ぎ捨てるシーンを挟むなど、視覚的にも分かり易く「彼女は生まれ変わった」事を示しているんですよね。 また「ありがとうの一つも言われないような最低の仕事」という台詞が伏線になっており「ありがとう」と言われる事で、初めて彼女がメッセンジャーとしての喜びに目覚める形でもある。 これまた凄く分かり易くて、その分かり易さが心地良い。
「ビール」と「シャンペン」を巡る一連のやり取りも面白かったですね。 汗水垂らして働いた後はビールに限るという鈴木と、高級なシャンペンが一番という尚実。 中盤にて、尚実の方が労働後のビールの美味しさを認め、それによって彼女が正式にメッセンジャーの仲間入りを果たす訳ですが、この映画はそれだけで済まさないんです。 鈴木もこっそりシャンペンを注文してみせたり、ラストにて皆でシャンペンで乾杯したりするという、素敵なオマケを付け足しているんですよね。 それによって、単なる肉体労働賛歌だけに終始せず、高級品の魅力もキチンと認めてるのだという、作り手のバランスの良さが伝わってきました。
バランスと言えば、尚実が一方的に「汗水垂らして働く喜びに目覚める」という受け身な立場に終始せず、元キャリアウーマンの経験を活かし、メッセンジャー業の改革に貢献していく流れも気持ち良いんですよね。 その他にも、憎まれ役と思われた尚実の元恋人や、取引先の太田さんなども「実は良い奴」オチが付くものだから、非常に後味爽やか。 そんな中、最後まで悪役の座を貫いたバイク便の「セルート」は実在の会社との事で、イメージダウンを覚悟で悪役を演じ切ってみせた、その懐の深さにも拍手を送りたいところです。
ラストの競争にて、チーム内で封筒の受け渡しを行う際の演出も、逐一恰好良い。 「何も言ってないだろ」「自転車よりバイクの方が速い」「楽勝」という台詞の使い方も上手いし、鉛筆や無線機などの小道具の使い方も上手い。 演者さんの棒読み率が高い事、エンディングでのアマチュア感漂うラップなども、普通なら減点対象となったかも知れないけど、本作に関しては「愛嬌」に思えてくるんですよね。 最初はメッセンジャー業を恥じらい、元同僚に対し「別の仕事をしている」と見得を張っていた尚実が、誇らしげに働く姿を見せるようになる様も良いし、鈴木が尚実を後ろに乗せて、自転車に二人乗りして帰るシーンなんかも、凄く好き。
全体的に「分かり易い面白さ」に溢れている中で、唯一つだけ「尚実は鈴木に何を言ったのか」という謎掛けが残されているのも良かったですね。 自分としては、凄ぉ~くベタだけど「アンタが好きだから」が正解だったんじゃないかな……と思いたいところです。 【ゆき】さん [DVD(邦画)] 9点(2017-09-27 08:18:55) (良:4票) |
9.《ネタバレ》 導入部は主人公のタカビーさの強調に少し苛々しますが、中盤で定石通り世界が反転してからは、怒濤の勢いです。そして終盤は完全にレースの一本勝負に集中する潔さ、ホイチョイの腕は健在でした。主人公サポートの脇役部隊に見せ場を作ることも、もちろん忘れてはいません(すでに書かれていますが、京野ことみの働きが絶妙です)。●そして、エンドクレジットの勢揃いラップがまたいいのです。決して上手くはないけど、手作り感があふれていて、各キャストが心底楽しそうなのです。しかも最後の事故姉ちゃんが途中で仲間に加わる芸の細かさ(つまり、作品ときちんとつながっていて、その一部をなしている)。●気になったキズは、バイク便のボスの印鑑盗用&書類隠蔽のくだりなんですけど、脚本上あそこまでする必要はあったかな。会社を配達で訪れた鈴木がやりとりの際に岡野とトラブルになった、というだけでそのまま進めたと思いますけど(その前に、尚実引き抜かれの描写はすでにありますからね)。 【Olias】さん [DVD(邦画)] 7点(2024-03-19 01:11:50) (良:2票) |
8.スピード違反に信号無視に飲酒運転。 多少なりとも自転車に対する愛情があるのなら道交法は守って欲しかった。 それでも、物語としては非常に面白くて、特に後半の盛り上がりは最高。 自転車の爽快感がよく表現されていたと思う。 【もとや】さん [DVD(邦画)] 8点(2007-08-24 16:53:23) (良:2票) |
7.《ネタバレ》 面白い。コメディエンヌ・飯島直子の手柄だと思うし、古畑任三郎のそれも手がけた本間勇輔のワクワクする音楽のおかげでもあるし。画面右上からまるで空から降りてきたように登場する自転車(最後の対決の始まり)、または右下からのっそりと現れる自転車(JRバスを追う場面)。自転車のシーンは、もれなく良いよね。ただ一つ、文句を付けるとすれば、ビールを瓶で飲むのおいしくなさそうだということ。ワタシも「あなたが好きだから」といってると思います。 【なたね】さん [DVD(邦画)] 9点(2023-12-28 15:40:43) (良:1票) |
6.《ネタバレ》 おばかなキャラクターにも、本当に人をイライラさせるタイプと、なんか憎めないタイプの2種類がいます。飯島直子演じる尚美はまさに憎めないタイプ。次々と悪いことが起こるにも関わらず、あまりめげることもなく、あっけらかんとしています。憎まれ口をたたく一方で、なんか人として大事なものも持っているし、結構ファインプレーも繰り出しちゃいます。こういうキャラ設定、ありがちなんですけど大好きです。 さらには周りを固める脇役たちの個性が光ること光ること。特に由美子(京野ことみ)はかなり良いんじゃないでしょうか。愛らしさだけではなく、頼りがいなんかもあったりしちゃうのです。もちろんバイク便をクビにされちゃった若者や、元警察の島野さんなんかもただの脇役では終わっていません。むだな配役が一切なく、絶妙なポジショニングで、とにかく見ていて楽しかったです。 大口の契約が取れると同時に、あれよあれよという間に仲間が増え、映画全体が活気付くそのストーリー展開もスピード感があって本当に良かった。更には無線で連絡しあって、配達物をリレーする一連のシーンは、最高に気分が盛り上がります。 題材を最大限に活かした演出に、もうおなかいっぱいになるほど楽しませてもらいました。万人に愛される映画だと思います! ただ、ラストの追いかけっこだけは、法律犯しすぎでちょっとやりすぎだったかもしれないですね。 【たきたて】さん [DVD(邦画)] 8点(2014-02-04 07:24:39) (良:1票) |
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5.なんのひねりもないベタな内容でしたが、5人が集まるあたりからテンポ感も増して一気に面白くなりました。こういう娯楽映画は、見終わって「あー面白かった!」のひと言で充分でしょう。あれこれと批評するようなものでもないかと・・・(笑) 【ramo】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2013-10-05 12:35:22) (良:1票) |
4.10年前の映画に今さらの感想だけど、飯島直子のなんとエロいこと…。余談ですが、悪役バイク便のセルートは実在の会社で、私がサラリーマンを始めた年にバイク便の営業を始めた業界の老舗で、社長のTさんとも何度か話したことがあります。主な送付先へのルートを予めライダーに覚えさせていて、営業とはこういうことか、と感心した記憶があります。もうひとつ。現在の仕事で自分は主に自転車便を使わせてもらっていますが、そのブランド名が「メッセンジャー便」です。この映画から貰ったのかな…。 【アンドレ・タカシ】さん [CS・衛星(邦画)] 6点(2009-09-22 06:04:18) (良:1票) |
3.こう来るだろうなーという予想通りの展開。でもそうなる事も願っていたのも確か。素直に面白かった。 【Yoshi】さん [DVD(邦画)] 7点(2008-03-24 01:05:46) (良:1票) |
2.何度見ても爽快な、「ガール・ミーツ・ボーイ」の佳作。
常に「お洒落な若者たちの姿」を描くことに腐心するホイチョイ映画がポストバブル時代に舞台としたのは、一見お洒落さとは無縁な自転車便の世界。 華やかなアパレル業界を追放された勘違い女が、ふとしたきっかけでやる羽目になった自転車便で地に足をつけた労働の尊さを学び、 「いかしたお姉さん」に変貌していく姿を描いた物語です。 いわば現代版「アリとキリギリス」とでも申しましょうか。「汗水たらして地道に働くことが格好いいんだ!」という単純だけど普遍的なメッセージは、 この作品に10年近くたっても古びない強靭さを与えていると思います。
ホイチョイらしいお洒落なセンスで、本当は大変なのであろう自転車便の仕事を、楽しそうに見せてるところも秀逸。 実際やったらかなり危ない運転や「ンなあほな!」的シーンも多いんだけど、あくまで現代のおとぎ話なんだから、固いことは言いっこなし!^^ 【大鉄人28号】さん [DVD(字幕)] 9点(2007-12-07 23:22:25) (良:1票) |
1.オフィス街を行き交う文書配達業(メッセンジャー)を扱った作品。主人公たちは自転車を使い、ライバル会社はオートバイを使います。メジャーでない職業にスポットを当てた着眼点もよく、都会の交通渋滞の中を自転車ならではの機転とチームワークで、配達を繰り広げる様子も面白いです。加山雄三のミスマッチ具合もよかった。ちょっと気になったのは、自転車を漕いでいるメッセンジャーがみんな華奢なこと。草なぎも矢部も細い。もうちょっと筋肉質でもよかったかも。 【目隠シスト】さん [ビデオ(邦画)] 6点(2006-05-25 17:56:25) (良:1票) |