5.《ネタバレ》 ジャンルとしてはSFになるかもしれませんが、この後に2度の大震災を経験しているだけに、単なるフィクションとは思えません。まして竹内均先生まで登場し、教育番組さながらの解説を加えているわけで、そのうち本当に沈むんじゃないかと思うほどリアルでした。 特に私にとってのハイライトは、中盤に丹波哲郎が老人と静かに語り合うシーン。日本人をどこへ逃がすかという話の最後に、老人が「何もせず、列島とともに海に沈んだほうがいいという意見もある」と語ると、丹波哲郎が一言も発さずにポロッと涙を流すんですよね。このシーンはいろいろ予想外で、かなりグッと来ました。 悪く言えば「一億玉砕」の発想ですが、では他国から土地をもらって移住して新日本を建国したり、あるいは世界中に分散したりして救われるかといえば、たぶんそうではない。虐げられたり、排斥されたり、子々孫々はもっと悲惨なことになりかねません。だったらいっそ潔く…、という選択もなくはないかなと。そんなことを考えると、映画の本筋とは離れて背筋が寒くなりました。 なお映画としては一本調子。本当に沈没するだけ。「奇跡の一本松」のような、物理学的または生物学的な〝希望〟も見たかったかなと。 【眉山】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2021-05-18 03:11:24) (良:2票) |
4.《ネタバレ》 今は亡き両親とともに映画館にて鑑賞、当時10歳小学5年生。日本が沈没するという凄い設定に、とにかくドキドキしながら見たのを思い出す。仮面ライダー本郷猛だとかブルーライトヨコハマのお姉さんだなどと本筋とは関係ないところにも着目しつつ、地震発生のメカニズムを説明する場面では、子供なりにヘぇ~そうなんだと感心。あと富士山噴火のシーンでは「えっなんで頂上が爆発しないの?」と疑問を持ち、後に宝永火口の名前と場所を知ることでこちらも勉強になったのはいい思い出。なにせ子供時代の鑑賞でもあり、災害や列島各所の沈没シーンに度肝を抜かれたが、何よりも鮮明に記憶しているのは沈没への対策案の中で、「何もしない(日本列島とともに国民は一緒に…)」という案が語られるシーン。総理役・丹波哲郎の涙の表情は今でも忘れられない。何なんだその選択肢はと思いつつ丹波哲郎氏の名演技に圧倒されてしまい、子供心にそんな考えもありなのと妙に納得した思い出。大人になって見直すといろいろ粗も見えるけど、とにもかくにも私にとって映画の面白さを教えてくれた邦画作品であり、作品自体から感じる当時のエネルギーに敬意を払って8点献上。蛇足だけど、当時の特に邦画作品予告では、「特報!」「撮影快調!」「トップスター夢の競演!」「東宝(東映)が総力を結集!」といった仰々しい宣伝文句が毛筆字体でスクリーンいっぱいに出ていたけど、なんかワクワクしたよね~。映画が娯楽だった昭和のよき時代です。 【素晴らしき哉映画人生】さん [映画館(邦画)] 8点(2019-11-20 10:00:21) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 表層的で煽情的なパニック映画とは一線を画くするSF小説の原作の良さを十分引き出している。特撮ドラマでは最高のレベル。 日本列島沈没という大災害を未曽有の規模で描く原作に対して、小手先ではなく、真正面から立ち向かって、武骨ながらも誠実に描こうという映画製作者の心意気が画面から伝わってくるのが嬉しい。役者の演技も熱がこもっている。 前半は田所博士と小野寺操縦士の活躍を中心に、科学的アプローチで日本列島が沈没するという恐怖を徐々に煽ってゆく。そして東京大震災発生、この特撮はとりわけ見事だ。多くのカットが丁寧に作りこまれていて好感が持てる。後半は山本総理を中心に、1億1千万人もの国民をどうやって国外脱出させるかという大難問を扱い、同時に特撮で、沈みゆく日本列島の様子を畳みかけるように見せる。観る者に国土喪失という民族の悲劇が重くのしかかり、日本民族のアイデンティティを問う重厚な内容になっている。概ね満足であるが、脚本に雑な部分があるのが難点。挿話と挿話が有機的に結びついていないのだ。最大の功労者である田所博士は途中からばったりといなくなり、最後に渡老人宅で偶然に総理と再会する。小野寺と玲子の恋愛は最初は濃厚に描かれていたが、小野寺がD1計画に加わってからは玲子が出なくなる。小野寺は会社にも家族にも婚約者にも一切連絡しないという不思議な行動をとる。小野寺と玲子は再会するが、これも偶然に大阪の町でというご都合主義。その後二人は愛を確認し、結婚と国外脱出を決意するが、玲子が火山噴火に遭遇して会えなくなってしまう。すれ違いの愛だが、その後登場場面が少なく、お互いを思う気持ちが伝わらない。これは非常に残念なことだ。愛が描けていれば名作になりえた。小野寺の同僚が、失踪した小野寺に対する心配と友情とで小野寺を殴る印象的な場面があるが、そのあと出演しないというちぐはぐなこともある。後半、端折りすぎるきらいがある。避難する人達の群像劇や心理、難民を乗せた船や飛行機の場面をもっと多く出したら大作感がでただろう。政府・科学者側の上から目線ばかりで、民衆の声や心が届かないうらみがある。加えて、何度も映る日本列島のミニチュアが本物に見えないのは残念だ。前半は10点、後半は6点。 【よしのぶ】さん [DVD(邦画)] 8点(2013-09-22 01:06:58) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 丹波哲郎はじめ重厚な出演者、自然災害の原因となる地球の構造とマントルについての具体的に分かりやすい説明、そしてD2計画による3つの案 震災から一年がたとうとしている今観ると、深くそして重い。 日本人が日本人としてどう生きていくべきなのか きっちりこの時間で描いた手腕は高く評価出来ると思いマス 【Kaname】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2012-02-23 08:54:10) (良:1票) |
1.公開当時、足を運んだ錦糸町楽天地の映画館は、異様な熱気に包まれていた。東京大地震のシーンにおける「墨田・江東は全滅です。」という報告に、驚きとも溜め息ともつかぬ声があがり場内が大きくどよめく。続々と押し寄せる避難民のために丹波首相が電話で皇居の門を開けるよう懇願するシーンでは、歓声と拍手が場内を包む。昔を思い出したのかすすり泣く年配客もいる。関東大震災や東京大空襲で多大な被害を被った土地柄ならではの、この実感のこもった反応に包まれて、まだ小学生だった私だが、他のどのパニック映画より強い緊張感を抱いてスクリーンを見つめていたのであった。 【なるせたろう】さん 8点(2003-02-18 17:07:51) (良:1票) |