9.《ネタバレ》 いわゆる『オタク』という枠にカテゴライズされる人達っていうのは、普段スポットライトを浴びたことがないので、ふいにそういう機会に恵まれると、虚栄心や自尊心というものが本当に子供じみたかたちで現われることが多いんです。 そういった意味では、浅野さん演じる『金村』は、非常にリアルでかつ『ありがちな』オタクの、ひとつのモデルを見事に体現してくれていたとおもいます。それは手撮りの臨場感に更に拍車をかけることになり、見る人によっては一緒に車の中に乗っているような錯覚さえ覚えてしまうかもしれません。 個人的には白井さん演じるレポーターや、音声のヨーコさんもかなりリアルな演技をされていて、時折はいってくるカメラマンの声にいたってはもはや演技とは思えません。 日常から少しずつ非日常へと変化していく様子、そして一線を踏み越える瞬間まで不自然さを感じさせないストーリーも、単純ながら素晴らしいの一言。 一線を踏み越えてしまったあとからは、多少ありがちなサスペンスものなってしまいましたが、一線を越えるまでは、『いつ何が起こるかわからない』という不安感や緊張感を常に感じさせていて、見終わった後には徒労感と何とも言えない後味の悪さしか残りません。 冷静に考えれば、白井、おまえが一番悪いんだよって言いたくなる。 金村君とヨーコさんは、個人的には犠牲者にしか見えないです。 【たきたて】さん [DVD(字幕)] 7点(2013-05-16 12:08:21) (良:2票) |
8.《ネタバレ》 浅野忠信っていいな、と思ったのがこの映画だった。強引なテレビ局の取材に押され、「えー」とか照れ笑い浮かべつつ、ストレスがたまっていくオタク青年の役。このテレビのディレクターやった白井晃がまた傑作で、強引かつ傲慢、口ばかり達者で他人を素材としてしか見られなくなっている人種を、誇張のようなリアリズムのようなきわどい線で怪演。ドラマとしては、そのオタク青年がキレ、がらっと変わるところが見せ場で、まあ落語の「らくだ」とか、そう珍しい企みではないのだけれど、ここでカメラマンの存在がだんだん怖くなってくるところがこの映画のポイントだ。カメラマンはこのクルーの中心にいるんだけど、加害者にも被害者にもならず、中立的な安全地帯を確保し、ただただ見続けているの。いや、中立を装いつつ、常に加害者の側に立ってんだな。もちろんそれは我々視聴者のことでもあって、けっして当人は傷つかない。実体験よりテレビ映像のほうに、より本物らしさを感じるようになった我々の、内なる加害者をあぶり出す。画面を経由しないと生々しくならない世界って、かなり不気味だ。 【なんのかんの】さん [映画館(邦画)] 8点(2009-04-09 12:09:33) (良:2票) |
7.《ネタバレ》 携帯電話の通話をアナログ受信機で聞けた頃は実際「ヤクザとかのヤバイ会話を聞いてしまったらどうしよう」とか想像したもんだけど、まさにそれを映像化したもの。そして最初から最後まで浅野忠信の演技が半端じゃない!ラジオライフ読者なら「演技じゃなくてネイティブの”おもしろ無線ヲタク”じゃないの?」と思ってしまうほどの(実際私は思ってる)リアルさ、自然さ、そして緻密さ。(実際そういう趣味の人にしか判断できないレベルの知識がことごとく正確でなおかつナチュラルな演技。) 素人を演じるにしても普通は限界があるでしょ。その限界を完全に超えてる。よくあるヲタク演技クサさ(デフォルメ)が皆無。元無線受信ヲタクの私の目から見てもマジで素人の無線受信ヲタクにしか見えない。キレてしまう場面以前の演技がスゴ過ぎだよ。そしてキレてる時の演技も半端じゃない。まさにヲタクがパニックになったらあんな感じだね。まぁ映画というにしてはかなりシンプルなストーリーゆえシミュレーション映像って感じがするので7点献上だけど、正直10点をつけたい気もする。 【ぷらむ少佐】さん [DVD(吹替)] 7点(2005-11-06 22:14:02) (良:2票) |
6.《ネタバレ》 「クルマ」が引き金になるのですね。部屋は見せられないが、むしろ取材して欲しかったんでしょう、彼の自慢のシルビア。さんざん、いい調子のレポーターに火薬詰め込みまくられたところで、宝物、足蹴にされたら発砲しますね。その後の取り乱す姿にピークを迎える浅野忠信は、そこに至るまで蓄積されていた分が解き放たれ、確かにすごかった。それに加えて、荒削りでかつ繊細なこの話を紡ぎ出した、当時若い脚本家であった新和男氏に+2点献上したい。 【なたね】さん [DVD(邦画)] 9点(2010-04-11 08:35:19) (良:1票) |
5.《ネタバレ》 映画なのにわずか70分ほどしかない短い映画。 前半20分ぐらいが退屈でだるいのだが、この部分が後ろに大きく利いてくる。
全編テレビカメラ目線という、ありそうでない映画。ストーリーはとてもシンプルだが、ドキュメンタリータッチな感じが迫ってきて、フィクションなのにノンフィクションのような錯覚を起こさせる。そのおけがで、急展開の流れに緊迫感がすごいついてくる。
後半で、突然立場がひっくり返り、ディレクターの岩井のしょうもなさがあらわになる。あの女の人のほうがよほど骨がある。 ラストには賛否ありそう。テレビを打ち抜くかなと思ったのだが。
長回しが多くて、撮るのは大変だっただろうな。あと、浅野さんの演技がホントうまかった。 【θ】さん [DVD(邦画)] 6点(2007-09-07 23:09:23) (良:1票) |
4.《ネタバレ》 浅野忠信出演作の中でも、観たかった映画ベスト5に入る作品だった。 ようやく今回、観る機会を持てた。
かなりマニアックな映画で、好みは間違いなく分かれるであろう作品。
ただ、73分という短めな上映時間の中で、無駄なシーンがほとんどなく、息つく間もなく、次々にシーンが進んでいく様は、観ている者を釘付けにすること間違いなしだ。
浅野忠信がオタクに扮し、切れているところはスゴイの一言であるが、一部、 「それは、ちょっとオタクのしゃべりじゃないだろ?」 と、個人的にはツッコミたい部分もあった。 ただ、それはほんの一部分でしかないし、後半、物静かなオタクから豹変し、全くキャラが変わってしまう辺りの演技は、「さすが浅野忠信」って感じだった。
あと、ディレクターの様な人から、しつこく質問を受けて、狼狽したり、困惑したり、怒ってみたり・・・と、この辺りの一見すると見過ごしてしまう様な、「絶妙かつ細かい演技」は、浅野忠信にしか出来ない、計算し尽されたレベルの高さを感じた。
しかし、「主人公の死で決着をつける典型的な映画」であるので、そういった映画が大嫌いな私にとっては、不向きな映画でもあった。 決して、他人に自信を持って推薦できる類いの映画ではないが、それとは逆に、「一度は観て欲しい邦画の異色作。」としてオススメしたい。
何より、浅野忠信の凄さが凝縮されている日本映画である。 【にじばぶ】さん [ビデオ(邦画)] 9点(2007-08-30 23:50:18) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 低予算の邦画サスペンスとしてはマイナーながら高レベルな作品。
その場の臨場感を出したり、どうなっていくか分からない不安感を演出するには、変に凝った事をするよりも、こうしたドキュメンタリーっぽい撮り方をするのが手っ取り早い、という好例。カメラの手ブレや不安定な主観視点が、何もしなくてもリアリティを醸し出してくれる。
些細なトラブルから、取り返しのつかない事態へ急転直下していく展開は、現実にもあり得そうなだけに、見る者にとっても感情移入しやすい。
マスコミ批判という点では、「破線のマリス」とも重なる部分があり、それ以外でテーマとしていまいち何が言いたいのか分からない欠点も似ているが、単純に不条理な運命の悪戯にただ翻弄される人間の姿を描いたサスペンスドラマとして見るなら、下手に理屈っぽくない方がいいかも知れない。
浅野忠信の演技力はなかなかのもの。「盗聴はするが、それ以外は決して常軌を逸した犯罪者ではない普通の青年」の追い詰められた演技がうまい。人を殺して狼狽たえ、恐慌を来たす様は鬼気迫るものがある。
ラストも見る者によって、色々と解釈が出来そうで、すっきりはしないものの終わり方としてはリアル。全体的にテンポも良く、時間も短めなので、いったいどうなるのかという興味が持続する。
ただストーリー自体にはミステリー的な謎解きが出てくる娯楽作品ではないので、本来は7点くらいが妥当だが、もっと評価されてもいいので8点献上。 【FSS】さん [ビデオ(邦画)] 8点(2004-07-10 21:42:15) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 浅野の演技が天才的!動作、表情、雰囲気、目線、感情どれをとっても素晴らしい。後半クライマックスの入りの演技、見てて笑っちゃうくらいリアルな演技だった。そんな有名な作品じゃないけれど浅野忠信の代表作といっていい作品だと思う。ストーリーもリアルで緊迫感のあるものだった。それにしてもいつまでも冷静なカメラマンが怖かった。 【bunodata】さん 10点(2003-10-12 01:58:39) (良:1票) |
1.1発撮りでここまでできるんだから実力が無いわけない、浅野忠信。浅野忠信を悪く言う人がいたら「FOCUS」を観てもらうといいかもしれません。筋はどこかの学生が書いたみたいな筋なんだけど、浅野力でビシッと決まってます。 【クー】さん 8点(2003-03-25 06:54:28) (良:1票) |