8.《ネタバレ》 凄くシナリオがいいですよね。人生というもののある種の真実を端的に描いてる。よく、人が成功するにはその人のがんばりだとか、あるいは才能が大事だなどと言われますが、実はそれと同等、あるいはそれ以上に大事なのは「出会い」なんですよね。この「出会い」の善し悪しによって、人はいくらでものし上がるチャンスがあるし、いくらでも堕落する可能性がある。マーくんはあのラーメン屋でヤクザに出会わなかったら、彼はあの道に入る事はなかった。あのヤクザで親分に気に入られなかったら、彼は上にのしあがることは出来なかったし、若頭に嫌われていたが故に、結局落とされる事になる。シンジはマーくんのかつあげに付き合っていなかったらボクシングの道に入って才能を開花することはなかったし、そのジムのハヤシと付き合う事で結局その才能をフイにしてしまう。漫才師を目指した彼らもそうだし、ラブレターを書いていた彼もそう。全ての人々は、「出会い」によって左右されてる。北野武という人間だって、彼がビートきよしと出会ってなかったら世に出ることはなかっただろうし、深作欣二と出会ってなかったら映画監督としての彼の存在もなかったかもしれない。何がどう転ぶかわからない。北野監督は自分のこれまでの生き様や経験というのを、そのままシナリオに詰め込んで活かしてるんだと思う。 【あろえりーな】さん [DVD(邦画)] 8点(2008-08-17 00:29:21) (良:3票) |
7.この映画、キタノ映画の中で一番気に入ってます。題材がボクシングってこともあるんですけど、話の展開がとてもリズム良く流れて、エンディングまで軽快に鑑賞することができました。とはいえ映画館で見た訳ではなく、たまたまテレビを付けてたら、面白そうな映画だなーって思って見たら、ぐいぐい話に引っ張れて、鑑賞後に「これがそうなんだ」って知ったような感じです。主演の安藤政信は今もジムに通っているみたいで、そのお陰か本作のボクシングシーンもちゃんとしたシーンになってましたね。あとモロ師岡扮するハヤシの散在。ああいう先輩いるんすよ。さりげにさぼらせよーっとする先輩。実際。そこら辺がこの作品としての価値をぐっとあげているような気がします。とても、絶望的なストーリーな割に、とても清清しいラスト。いい青春を見たって感じがします。あと、好評のテーマソングなんですが、キックボクサーの小林聡も使ってます。(テーパリット戦はしびれたなぁー) |
6.《ネタバレ》 北野武映画に出てくる登場人物の発する澱みが自分とは妙に相性が良い。そして彼は、男の孤独というものを描くのがうまい。しかも孤独の色を、黒じゃなくてブルーに染める。それが心地よい。この映画の主人公二人の少年は、多くの時間を供に行動し、心から打ち解けているようにも見えるが、どこかしら緊張がみなぎりお互いに踏み越えない一線がある。それは陳腐な言葉でいえば「男は黙して語らず」というものなんだけど、決して心を許さない訳ではなく、ただ寡黙なだけだ。青春映画でありがちな、家庭環境や生い立ちは全く描かれないし、昨今のTVドラマで語られる「俺達仲間じゃねーのかよ。仲間だろ」的な、過度のベタツキも全くない。全編にかけてこんなにも胸がヒリヒリするのは、青春時代に誰もが経験する成長と堕落、そして慢心と羞恥心を、これでもかというくらいに丹念に見せ付けられるからだ。しかしそれだけじゃなく、孤独を癒す手段を、悩みを打ち明けたり語ったりしないからだと思う。それどころか、いつも強がって誤魔化してみせる。それがたまらなく切ない。この映画は、少年の中にも潜む、男は心のすみっこでいつも孤独であるということを突きつけてくる。そういう意味で、まさに男の映画なんだと思う。というよりも、北野武自身の映画なのかもしれない。ところで、印象に残ったシーンは、冒頭に出てくる校庭での自転車の二人乗り。二人は互いに向き合っていて、ふらふらとハンドルが揺れる。青春を謳歌する二人の少年に相応しく、危うく、そして心許ない円の軌道を描く。一転してラストシーンでは、校庭に帰ってきて、しっかりと前を見据え自転車に跨っている。しっかりとした円を描く。青春映画のシャレードとして素晴らしい表現だと思う。 【Nujabest】さん [DVD(邦画)] 8点(2009-12-30 06:33:18) (良:2票) |
5.《ネタバレ》 嫌いなんですよね この二人。 だけども好きになってしまう この作品。 巧いですよね この撮り方とその作り。 それでいてキッズ・リターンとは ラストシーンを目にした瞬間、タイトル付けに関して完璧で巧いなと唸らざるを得ない。 漫才師を目指した二人の部分はサラッと流し、喫茶店に通い続けた彼とその店のお姉さんの悲劇的成り行きもくどい状況説明なく坦々と流し、ヤクザ部分をメインとせずに適度に軽く切り上げ ボクシングに明け暮れる少年シンジの部分だけを全編通してきっちり丁寧に描いた事が 最後の爽快感へと繋がったのでしょうね 名作と言われて不思議の無い名作。ただ、皆が言われる感動というのとは自分ちょっと違うと思う。感動など出来ませんよ ヤクザの絡む話に感動などしない。 【3737】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2015-01-11 23:52:26) (良:1票) |
4.《ネタバレ》 日本人の平均寿命の半分以上を生きて来て、 結構ダメダメな人生を送っている私ですが、 まだ始まっちゃいないですかね?
『バカヤロ~、まだ始まっちゃいねぇ~よ』って心から言ってくれる同年代の人を求めている今日この頃です。 【ぐうたらパパ】さん [インターネット(字幕)] 8点(2013-05-30 14:52:42) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 北野作品にしてはバイオレンスは若干控えめだったり、他の作品とは一味違う。青春の儚さがとても良く出ています。馬鹿な男は常に馬鹿ばかりして、親友は常にその友達に流される。友達が居なくなると、今度は悪い先輩に流されて、自分を持てずに実にフラフラとしている。しかしこのどうしようもないところが良い。脇の小さな話も様々な面からしっかりと映画を支えています。そしてやはり最期の台詞が良い。この台詞が膨らんで一本の映画が出来たのだと思わせてくれます。 【MARK25】さん [DVD(邦画)] 8点(2007-03-13 18:30:32) (良:1票) |
2.人生とは激しく空回りしていて若ければ若いほどそのスピードは速く他人から見れば色んな経験をして苦労をしているように見えても本人の主観としては「まだ始まってもいねぇや」というものなのだと思った。主人公達はとんでもない経験をしているにもかかわらず観ている誰もが自分と地続きだと感じるのは多かれ少なかれ誰の中にも空回りしてきた経験があるからなのだろう。偉大なる青春空回り映画である。 【SWORD】さん 8点(2004-10-06 10:26:42) (良:1票) |
1.ちょっとしたシーンに出てくる、人間の嫌な部分(ズルさ、意地悪さ、身勝手さなど)が物凄くリアルに描かれていたと思う。そして、なぜかそんなシーンも観ていて哀しい気分になった。漫才のシーンまで哀しかった。村上龍の言葉に「作品に哀しさを漂わせる事ができるのは技術ではない。才能のみ」というのがあるが、北野監督の才能は突出している。 【Bebe】さん 8点(2004-03-16 00:37:36) (良:1票) |