4.悪事を行うのが自らの使命のように振る舞い、それを嬉々として行うハリー、その彼が伝道師というのも恐ろしい話です。そのハリーの存在と共にこの映画を支えているのは映像の素晴らしさです。未亡人(ハリーの妻)の殺害シーンにおける二等辺三角形の家の壁、同じく二等辺三角形に入り込んでく光、その時のハリーの神経症的な表情、水中に沈められた女性の死体、歌いながら子供を追跡するハリーのシルエットなど、幻想的な美しさと悪夢のような不気味さが交じり合ったような映像は、観ていて飽きることがありません。個人的には未亡人殺害シーンは記憶に残ってます。ストーリーの方はノワールっぽいものを期待していただけに後半に進むにしたがってお説教じみてきて尻つぼみな印象でした。ストーリーよりも全体の雰囲気やトーンを楽しむ種類の映画だと思うので、家庭的な明るい雰囲気で終わるラストは、それまでの抑えたなかに狂気を孕んだ陰湿なトーンが壊れてしまい残念です。これで1点減点。 【ペリエ】さん [DVD(字幕)] 9点(2005-05-21 00:54:54) (良:2票) |
3.観る前は、偽牧師ハリーのキャラだけが走ったスリラーかと思っていましたが、なかなかどうして、細部に含蓄の篭った、考えさせられる作品です。本作のポイントは、主人公の少年ジョンだけが、偽牧師ハリーの本質を見抜いているという点でしょう。彼はハリーが金銭ねらいの山師だということを知っている。しかし母も妹もそれが理解できない。彼の表面だけを見て、立派で優しい人物と思い込んでいるのです。村のスプーン夫人も同様で、ハリーを怪しむのは彼女の夫の方。孤児のルビーを含め、「女は愚か」というハーパー夫人(リリアン・ギッシュ)の考えが、作品を通じて表現されています。その彼女にしてからが、息子とうまくいっておらず、本来の愛情を孤児たちで代用している状態。彼女の思想は自戒の意味も込めているのでしょう。本作が善と悪――愛と憎しみ――の戦いを描いていることは、ハリーの講釈からも間違いないのですが、単純にハーパー夫人とハリーがその両翼を担っているわけではありません。彼女たち二人が声を合わせて歌うシーンがあったり、善良に見えた村の人々が、手のひらを返したようにリンチを要求したり、結局は表裏一体のものなんですね。ジョンはその中でどんどん孤立していきます。フランソワ・トリュフォーがこの作品を褒めてるらしいんですが、むべなるかな。これぞまさしく『大人は判ってくれない』映画ですもの。 【円盤人】さん 7点(2004-10-09 13:56:42) (良:2票) |
2.変な映画であることは間違いないです。サイコサスペンスのようでほのぼのとした児童ファンタジーのようでもありジャンルが不明瞭である点は独特の魅力ではありますが、ちぐはぐな構成であるような印象も受けます。この時代の映画にしては映像もカメラワークも当時のハリウッドスタンダードから逸脱した凝りようでそれが成功しているかはともかく古臭さは感じません。序盤の空撮は天にいる神が地上を見守っていることを表現しているんでしょうか。でもそんなに大した内容でもなく結局ロバート・ミッチャムのエキセントリックなキャラクターを楽しむだけの映画のような気がします。超然としているようで金目当ての俗っぽい行動だったり、子供相手にムキになる姿は恐ろしいというよりなんだか滑稽で可愛らしいところもあります(笑)。聖書を揶揄するような台詞もリリアン・ギッシュもまた聖書について語る役回りである以上、社会風刺やキリスト教への批判が目的というよりはロバート・ミッチャムの悪魔的キャラクターを演出するためのフレーバーでしかないですね。ラストの民衆の暴動はフリッツ・ラングのMをやりたかったんでしょうか、それも大して意味がなく終わってしまいます。 |
1.これはこれはスゴイ作品です。伝道師になりすまして子供から遺産を乗っ取る為に執拗に追い詰めていくロバート・ミッチャムがすごいです。指には「LOVE」と「HATE」のタトゥーっすよ!もうシブイの一言でした。今見てもとても新鮮な作品です。中盤で一度話が完結すると思いきや、それでも追いかけてくるミッチャムのねちっこい性格がとても上手く表現されていました。オープニングからも解るようにおとぎ話のように展開していくストーリーは赤ずきんちゃんとヘンゼルとグレーテルの物語を足して二で割った感じで教訓めいたモノが見え隠れしています。孤児を養うおばあさんのタフな演技にも拍手です。 【さかQ】さん 9点(2001-12-25 21:18:04) (良:1票) |