4.インパクト絶大な真っ白な世界で始まるこの作品全体に暗澹とした雰囲気が漂っているのは確かだけれど、決して絶望的なだけの映画ではない。破天荒で手のつけようがない、でも心から大切な弟への、兄の深い悲しみと温かい思いが伝わってきて、観賞後の切なさには堪らないものがある。最後の子どもの出生は、間違いなく希望そのものだ。 【和狗】さん [DVD(字幕)] 10点(2005-10-27 16:49:06) (良:2票) |
3.もう、何も言うことはありません。ただ、ショーン・ペンは本物の映画作家であると。ジョン・カサヴェティスのインプロヴィゼ-ション的アプローチとも違う人間への肉薄の仕方は、ほんと素晴らしいです。以後の監督作品も、どれをとっても逸品だし。だのに、なぜ世間は『デッドマン・ウォーキング』みたいな、所詮はウエルメイドなメロドラマばかりを称揚するんだろう… 【やましんの巻】さん 10点(2003-05-20 12:51:12) (良:2票) |
2.正義漢の兄と落ちこぼれの弟のお話。兄弟は、話の展開にしたがって徐々に心が離れていくようにみえる。理解しあえるようでいて、それはどんどん遠くに離れてしまうのである。そのことの理由は語られない。最終的に警察官の兄が犯罪者となった弟を追跡するシーンにまで至り、父親は兄弟の確執とは関係のないところで意味もなく自殺する。図式はありふれているし、話としても結構単純だ。しかしそのモチーフは僕にとって切実に思えた。兄は弟を追いながらそのことの意味を理解できない。弟は兄に追われながらその理由を失っている。自分の心さえ掴めない寂莫感にお互いが自覚的ではあるけれど、最後に兄が弟を見逃すシーンに言葉はなく、ただ「アイ・シャル・ビー・リリースト」(byザ・バンド)が流れるのみ。「いつかきっと僕は解放されるだろう」 あー、なんてリアリティのないフレーズだろうか。そのことの空虚さが心を締め付ける。「インディアンランナー」はたぶん時代遅れな映画だ。すべてに自覚的でありすぎる分、それはもう時代遅れなのだ。僕らはその時代遅れの気分でしか、もう心を震わすことができないかもしれない。それはとても切ないことだけど…。 <ちなみに冒頭で、狼の力を盗んで鹿狩りをするインディアンの逸話が出てくる。弟の中で幻影のように現れるインディアンとは、自分自身に潜む凶々しさとその神々しさが一体となったスピリチュアル・イメージであり、その「らしさ」に理由がない絶対的な存在としての強迫観念でもあるのだ。> 【onomichi】さん 10点(2002-01-17 02:36:29) (良:2票) |
1.ほんとショーンペンがこんなに熱い男だと思っていなかった。当時、91年は「カンヌで賞賛された映画」として上映されていた。ただ、良かったのはカンヌでノンタイトルだったということ。そもそもカンヌでは熱い映画は賞を取らない。 こういう熱い映画が見たい人は、賞なんか無くてもきっと運良くこの作品を見つけると思うし。 あらすじは少し難しい。 紙も無く、文字も共通のものが無く「口伝」で意志を伝える疾風の使者。インディアンランナー。その伝説は、現代に置ける「精神に闇を抱え、かつ不器用で、本能が常に言葉を超えた人生の不満を見つけてしまう」兄弟の弟、ウ゛ィゴモーテンセンに置き換えられる。本当の「メッセージ」は、インディアンランナーの伝説と同様に普通の人々には素早く捕まえる事ができない、とういう共通点。弟の本質を見抜いている彼等の父は、妻の死によってなんとか離れて行った弟に彼を捕まえるためのメッセージを送ろうと考える。 しかしながら、兄弟の関係は父の望みとはかけ離れさらに溝が生まれる。その後も兄は必死に「弟」というメッセージを捕まえようとするが…という話。 今思うとこの映画に出ている若手役者は、最近の映画界の主軸の人ばかり。役者畑である監督が、人選も渾身の一発でキメている。悪いけど、わがままを言わせてもらえばこの映画が分からない人は教養と道徳の無い人と決めつけたい。 【セクシー】さん 10点(2002-11-06 22:35:42) (良:1票) |