4.凄いですね。いささか誇張じみた言い方を許してもらえれば、あらゆるシーンがそのまま油絵の画材になりそうな、絢爛たる調度、光と色合い。引き込まれると、もう、時間を感じさせない。でも4時間は長い(どっちやねん!)。音声がほとんどアフレコ丸出し、そこがまたイタリア映画らしさとも言えるが(笑)、これだけの長尺ともなると、この音の薄さ、気になっちゃう。さて物語の前半は、リヒャルト・ワーグナーに入れ込んで莫大な資金をつぎ込んでしまうルートヴィヒ。一見マトモだが、ワーグナーなんぞに入れ込んでは、無事で済むワケがない。このおっさん、ヒトのモノはオレのモノ、ヒトの人妻もオレのモノ、間違っても感謝などされるわけがない。なお、ここに登場するビューロー夫人は、作曲家リストの娘にして、指揮者ハンス・フォン・ビューローの妻、後のコジマ・ワーグナー。コジマに捧げられた「ジークフリート牧歌」のエピソード(だよね?コレ)も挿入されます。なお、妻を奪われたのでビューローはワーグナーが嫌い。ついでに言うと、若き日のブラームスがリストの演奏中に居眠りしたのでリストはブラームスが嫌い。批評家ハンスリックが結婚相手として薦めた女性をブルックナーが断ったのでハンスリックはオカンムリ。当時の音楽界を二分したワーグナー派・反ワーグナー派の闘争の背景にはこんなツマラナイ諸事情があったとかなかったとか。さて、話が大きく逸れてしまった(汗)。後半いよいよ憔悴の度合いを深めるルートヴィヒII世。前半は何だか、サリーちゃんのパパにそっくりに見えたが、だんだんそうでもなくなってきたなあ、残念(←アホ)。豪華さの中を、破局はあくまで静かに迫ってくる。それだけにラストシーンのこの虚しさ・・・いや、トボケちゃいけない。虚しさははじめっから、映画全体を覆っていたのだよ。妄執と虚しさ。それがルートヴィヒII世の生涯であり、この『ルートヴィヒ』という作品でもあり・・・。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2005-09-23 21:42:17) (笑:1票) |
3. この作品の製作途上で既に財政的にも体力的にも行き詰まっていたことを感じさせない、ヴィスコンティの執念が伝わる作品.併せて、H. バーガーという役者がいなければ撮れなかった映画だとも思う.一国を統治する王の待つべき資質にヴィッテルスバッハ一族の芸術気質が最も必要でなかったという悲劇.王たる資質に悉く欠けていることを真摯な部下に“義務無くして幸福があろうか.”という言葉で語らせ、またそれを聞くことをあえて拒否しないルードウィヒの哀しさ.対して、R. シュナイダー演ずる同じ一族でも最も気質が似ていたと云われるシシイを、翳りのみえない人物にしてしまったことに違和感を感じてしまった.ルードウィヒの唯一の理解者ともいえるシシイもまた、ハプスブルグ家とのあまりの確執から自分を持て余し、皇妃という身分から逃避し続けた人なのであるから.そして階級と時代が違っていたなら、双方とも優れた才能を存分に発揮できたであろう人物であったと思う. 【シャリファ】さん 8点(2003-09-15 17:53:03) (良:1票) |
2.初公開時、滅茶苦茶な再編集短縮版と知らずに見てガッカリし、その後、4時間の「完全版」を見たもののやっぱり納得いかなかった…。美術も、カメラも、役者も、すべてに超一流であることは認めるものの、物語の叙述ばかりに追われた豪華絢爛たる紙芝居のような印象。見終わった後の空虚感は、ちょっと忘れられるもんじゃない。それが、ヘルム-ト.バ-ガ-扮するあの”狂王”の生涯の不毛ぶりと妙にシンクロするあたり、狙ってたのか…とも思わされるけれど。やっぱりこの映画におけるヴィスコンティは、衰弱している。残念だけど。 【やましんの巻】さん 5点(2003-06-11 14:06:30) (良:1票) |
1.富と権力を与えられた者には相応の義務と責任が伴う。それをフランス語で「ノーブレス・オブリージュ」と言う。その責務に耐えられなかった男の末路を描いた映画。ヨーロッパ最古の名家ヴィッテルスバッハ家の血筋を引くルートヴィッヒ。そしてその血筋に代々受け継がれる狂気・メランコリーの人格的欠陥は、ルートヴィッヒも逃れることが出来なかった。エリザベート王妃役のロミー・シュナイダーの美しさも見逃せない。この頃がまさに最後の輝きだったと言える。かなりの超大作なのであまり人には薦めないが歴史的な価値を考慮して7点。かつてのヨーロッパ王侯貴族がどれほどのものかを垣間見ることができる。 |