8.戦時中に作られた阪妻主演の前作は、当局の検閲により大幅にカットされたと聞きます。そのことが余程悔しかったのでしょか、作り手のこの作品にかける意気込みと愛情が充分過ぎるほど伝わってきます。美しいカラー映像を彩りのあるメロディーで包み込んだタイトルロールからしてヤラれてしまった。監督稲垣浩の手作り感に満ちた演出が冴えに冴えており、存在感たっぷりの無法松を演じた三船敏郎に名女優高峰秀子のしっとりとした演技、そしてカメラワーク、音楽、セット美術ともどもすべてに於いて申し分ない。光陰矢の如しというか、過ぎ去る年月を人力車の車輪でもって表現するシーンは抜群に美しく、監督稲垣浩のセンスの良さを遺憾なく発揮している。松五郎が万感の思いを込め祇園太鼓を打つシーンは大いに盛り上がるわけですが、個人的には運動会のエピソードが好きですね。松が子供の頃、唯一大泣きした話をぼんぼんに聞かせた後、パッと開放的な運動会の場面に切り替わる。松が徒競走に飛び入りする。「松、負けたら承知せんぞ」と酔客から声援が贈られる。ぼんと夫人の期待に応えて一等になる。ぼんは小躍りして喜び(この時の笑顔が最高にイイ)、夫を亡くしふさぎがちだった吉岡夫人の瞳までがキラキラと輝く。松を中心にぼんと奥さんが唯一三人一体となった場面で、この瞬間、松はぼんにとって父親以上の存在となる。この感涙を誘う一連のシークエンスが、この映画のヤマ場でしょうね。ラスト、貯金の話しも泣かせてくれた。名作です。 【光りやまねこ】さん 9点(2004-12-17 15:54:57) (良:2票) |
7.《ネタバレ》 「無法松」というからにはもっとハチャメチャな人物を想像していたのですが、意外とまともで気骨ある人物だと思いました。その分、ストーリーは平坦に感じてしまったのが残念です。團伊玖磨の音楽も、変に力が入っていて耳に障る感じがしてしまいました。高峰秀子演じる吉岡婦人は、残酷な人だと思ったのは私だけでしょうか。 【川本知佳】さん [DVD(邦画)] 6点(2014-10-05 22:09:55) (良:1票) |
6.《ネタバレ》 <阪東妻三郎版は未見> 敏雄(ボンボン)が幼かった頃の楽しい日々から一転して、敏雄の「親離れ」と「松五郎離れ」によって寂しくなっていく二人の気持ちがよ~く伝わってきた。ボンボンじゃなく、若大将でもなく、吉岡さん… 「他人みたいだ」、と元気がなかった松五郎が忘れられない。明治~大正時代だとまだ身分の違いがあったようで、おかしな事ではないだけに切ない。そういえば奥さんも自分の息子なのに「さん付け」で呼んでいた… 家督を継ぐ者ってそういう扱いだったんだよね。そんな時代の叶わぬ恋を三船敏郎と高峰秀子の共演で描く豪華な一作。松五郎の死に場所は一番楽しかった頃の思い出、運動会が行われた学校だったと…。涙を誘う。 【リーム555】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2011-05-16 23:05:52) (良:1票) |
5.《ネタバレ》 未見にもかかわらず、何故か観たようなつもりになっていた映画っていうのが自分の中に結構あるんですが、これもそのうちの一本。オリジナル=モノクロ阪妻版は大昔、子供の頃見た記憶があるけど、あまりに昔過ぎてよく覚えてないや(笑)先日観た川島雄三監督「わが町」(8点)で辰巳柳太郎が演じたタアやんと同じく、いまやほぼ絶滅種となった「正しい日本快男児の美徳」標本のような魅力的な男の一代記。画面作りや演出も、非常に厚みがあって丁寧で感心。内務省の介入で肝心なシーンをカットせざるを得なかったという、オリジナル版への稲垣監督の熱き想いが伝わってきます。憧憬の対象、吉岡未亡人が高峰秀子っていうキャストも文句なし。今の感覚だとこの未亡人が都合のいいように松五郎を使っていると感じてしまうのはどうしても無理からぬ事だが、明治時代ならこういう身分の格差はごく自然的なものだったはず。ジレンマに懊悩する三船の無償の献身愛っぷりに、とにかく自分は泣かされました。多分、序盤ちょっとだけ出てきた吉岡大将=芥川比呂志の男っぷりに惚れたせいじゃないかなあ・・・。あの旦那がたいした事のないフツーの亭主だったら、あそこまで未亡人に対してストイックな態度を取らなかったんじゃないかと自分は思うんですよね。それだけに花火の夜、遺影の前でうなだれる、彼の苦悩の大きさが実感として観客にも伝わってくるわけです。「正しい日本映画の美徳」が顕著に現れた秀作として高く評価させて頂きます。 【放浪紳士チャーリー】さん [DVD(邦画)] 9点(2008-03-07 11:30:47) (良:1票) |
4.損得の埒外で人のために尽くして生きることが出来たなら、それこそが仁義である。車屋であろうが軍人であろうが任侠であろうが八百屋であろうが、である。言葉で評する事すら下卑てしまうが、その「仁義」の体現といっていい「無法松」の美しくも不器用な生き様に、泣いた。泣けた。という事は、一応、自分の中にも無法松のDNAらしきモノが存在しているという証拠なのか。ならば、「一生」を生き抜くという素晴らしさ、ストイックさ、美しさに、少しでも近づきたいと、思った。 【aksweet】さん [DVD(邦画)] 10点(2007-04-07 22:57:50) (良:1票) |
3.あのばあさんはいつまで生きるんだ? 【ケンジ】さん [DVD(字幕)] 9点(2006-12-25 22:03:34) (笑:1票) |
2.祭りの太鼓はすばらしい。太鼓の醍醐味が味わえた。 松五郎の晴れ舞台。ここに何故、吉岡の奥さんが居合わせないのか? この男(松五郎)の心情は痛いほど理解できるが、現代の若者にはいかに・・・
学生の頃、高峰秀子が大好きであった。恋心か否かは今では判らない 今ではそこまで感じないが・・・ 【ご自由さん】さん 8点(2004-06-19 20:10:57) (良:1票) |
1. このセルフ・リメイク版も名作なんだけど…矢張り1943年のオリジナル版には残念ながら遠く及ばない。阪東妻三郎の豪快で奔放な松五郎を観た後では如何に三船が熱演しようと所詮二番煎じの域に止まる。ただ、オリジナル版は戦時中の検閲カットに加え、GHQからのカットも加わってズタボロにされたものなので、コレ(58年版)なくしてはカットされた箇所も分からない有様なのも又事実。どちらも名匠・稲垣浩が同じカット割りで監督しているのが大きかった。監督も二度の検閲カットが余程無念だったのだろう。小津安二郎監督の悪口を言うつもりはないが、彼の戦前・戦中の監督作が殆ど無事だったのは、ぶっちゃけた話フィルムが擦り切れるまでロングランされる程の人気作ではなかったため、松竹大船の倉庫に保管されて埃を被っていたお陰。これも又皮肉な事実。「名作」って何だろう? 【へちょちょ】さん 8点(2003-01-19 22:52:44) (良:1票) |