《改行表示》 10.おそらくアメリカにとって一番派手なエピソードである、アポロの月面着陸を扱っていないことが、まず面白いと思いました。 航空宇宙史という形で映画は進みますが、事象よりも飛行士たち人間のキャラクターの方に、目が向けられていることが徐々に判ります。 科学的好奇心よりもソ連との競争が行動原理になっていたり、人命よりもポッドのデータを優先する、飛行士にはトラブルの詳細を知らせない、など随所で現れる政府の非人間的な部分に対し、飛行士たちは人間の意地やプライドを貫こうとしています。その根底にあるのは、アメリカ人の「開拓者精神(フロンティア・スピリット)」ではないでしょうか。 この映画は、空と宇宙という未開の地に挑んだ男たちの、開拓者精神を描いたものであるからこそ、アポロよりもNASAに至るまでの、マーキュリー計画を題材にしたのだと思います。 この映画が作られた頃、スペースシャトルの時代が始まり、アメリカは宇宙開発をリードする立場を確立しましたが、それはマーキュリー計画の飛行士たちの開拓者精神の上に築かれたものである、ということを忘れないために作られたのが、この映画なのかもしれません。そんな、アメリカ人の、先人に対する崇敬の念が存分に伝わってきました。私が思うに、「開拓者精神」を日本語に意訳すると、「サムライ」という言葉になるのではないでしょうか。 【塚原新】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-01-19 18:18:22) (良:2票) |
《改行表示》 9.《ネタバレ》 “The Right Stuff”『正しい資質=適任』。何かの本でたまたまX-1とチャック・イェーガーの記事を読んだちょっと後に、テレビで本作が放送されてて「あ、コレって、アレじゃん!?」って驚いた記憶があります。チャックだけで1本の映画が出来そうなものの、本題はマーキュリー計画で、まさに映画1本で2本分のボリュームがあり、長尺なのに飽きずに最後まで楽しめました。 まず驚いたのは特撮の質です。'83年の作品で、CGデジタル合成が出る以前の作品。当時は特撮とハッキリ解るブルーバック合成がメインで、明らかに“ウソの映像”と解り、シラケてしまうことが多かったんですが、本作では恐らく、ミニチュア模型による特撮をメインにしているんでしょうね。合成より古い技術ですが、むしろ凄くリアルでした。 マーキュリー計画も米ソの宇宙開発競争がどれだけ熾烈だったかが良く伝わりました。でも、ソ連が先行する→ジェフ・ゴールドブラムが走ってくる→「知ってるよ、座れ」の流れが見事にテンドンになってる。宇宙飛行士の訓練とお猿の訓練をオーバーラップさせるのも上手いし、尿意を我慢するアランにジョボジョボと飲み物のシーン被せるのも巧い。そんな真面目一辺倒じゃない作風から、長時間でも飽きないんだな。 宇宙飛行士7人のうち、メインとなるのは4人。最初に打ち上がったアラン、便意に尿意に色々大変だった人。2番目はガス、ハッチが吹き飛びパレードも大統領の夕食会もなかった人。かわいそう。地球を周回したジョンは3番目、吃音症の奥さんへの愛情がじんわり来る。宇宙で観たホタルの美しさ&不思議さに見惚れたわ。最後が6番目、地球を21周周回したゴードン。4番目スコット、5番目ウォルターは割愛。7人目のディークは病気で飛べなかったそう。でも調べると、それぞれにもドラマがあるなぁ。 話はイェーガーのその後に戻り、“最後の有人戦闘機”ギラギラのF-104が飛び上がる。雄々しく美しい。奥にチラッとF-102が走ってるのも美しい。 時代とともに記録は塗り替えられる。だけど先人の偉業は決して色褪せることなく輝き続ける。 【K&K】さん [地上波(吹替)] 8点(2024-10-14 22:57:08) (良:1票) |
8.《ネタバレ》 孤高のパイロットで初の超音速飛行に成功したチャック・イェーガーと、彼とは対極の生真面目・堅物な海兵隊パイロットだったジョン・グレンらマーキュリー計画の七人の宇宙飛行士たちを対照的に描くストーリーテリングです。この映画のチャック・イェーガーこそが、そりゃ美化されている部分もあるでしょうけどまさに漢の中の漢と呼ぶに相応しいんじゃないでしょうか、とにかくカッコいいんだなこれが。実物の彼も第二次大戦ではドイツ占領下のフランスで撃墜されるが敵地を突破してスペインに逃れて復帰、その後P-51マスタングを駆って一日で5機のドイツ機撃墜を果たして 米軍初の"ace in a day"の称号を得るという伝説的な戦闘機乗り。超音速飛行に成功したⅩ‐1もこれまた凄い飛行機で、ロケットに翼をつけて(しかも後退翼じゃなく直線翼)水平飛行させたような代物。開幕から音速飛行に成功するまでの二十分は虚実を織り込みながらも劇的かつ感動的でここだけで一本の映画を観たような気分になります。パイロットとしての誇りに満ち溢れたイェーガーがモルモットのような存在だったマーキュリー計画の宇宙飛行士に志願するわけもなく、ここから政治に翻弄される宇宙飛行士たちと人生が分かれてゆくことになるわけです。 実際のイェーガーはベトナム戦争では作戦部隊を指揮して将軍になるぐらいですから決して破天荒なだけの人物ではなく、でも演じるサム・シェパードがあまりにカッコいいんでこれはこれでアリでしょう。マーキュリー計画のグダグダな進行ぶりはかなり揶揄した描き方で、とくにジョンソン副大統領はこれでもかと醜悪さが強調されていて面白かったです。マーキュリー・セブンの面々は政治に翻弄されたと見ることもできますが、忘れちゃいけないのはマーキュリー計画こそが政治そのものでジョンソンの道楽だったわけじゃありません。ロケットの開発はICBMを実戦化するためのソ連との軍拡競争そのもので、この辺りをまったくスルーしているのは違和感がありました。テキサスで七人がジョンソンの政治ショーで道化を演じさせられているシークエンスに、イェーガーが高度記録を破ろうと単独でNF-104を飛ばすシーンをカットバックする編集にこの映画が訴えたいことが濃縮されているんじゃないでしょうか。墜落寸前で彼が見た星空には、イェーガーこそが誰のサポートも受けずに単独操縦で宇宙に達した唯一の人間だったんだ、という訴えが込められているような気がします。 【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2021-08-30 22:27:21) (良:1票) |
《改行表示》 7.《ネタバレ》 チャックイエーガ氏が亡くなった。 本作の「兄貴」である。 実在のモデルの当の本人が亡くなったのだ。 追悼の意味を込め、本作を鑑賞。(もう何度も観てるのだが) 地元の兄貴分の連中は、このイエーガーの生き方にかなり励まされたのではないか? 東京に出る者に対して地元に残る者。 または新しい生き方に生きる者に対して旧来の生き方にこだわる者。 世界中の兄貴のあり方に励ましを与えた映画だった。 奥さんがいい。 「あなたが昔話をはじめたら、私は永久にあなたの元を去るわ」 そう、昔のやり方でもいいのだ。でも死ぬまで上を目指さなければ、いけないのである。 男のあり方を描いた映画だった。 【トント】さん [DVD(字幕)] 10点(2020-12-10 12:16:30) (良:1票) |
6.他人の目を気にせず自分の仕事を淡々とこなしそれにプライドを持てる男の生き様、トップを目指す男達の野心、どちらを良しとするわけではなくその価値観を等価値に描ききっていると思います。最高の映画だと思います。 【AIRS】さん [ビデオ(吹替)] 10点(2007-02-21 05:03:53) (良:1票) |
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5.《ネタバレ》 素晴らしいです。「夢」とか、「挑戦」とか、そんな言葉がピッタリくる映画でした。宇宙飛行に挑戦する7人の宇宙飛行士も素晴らしいが、自分の限界に挑戦するパイロットがかっこいい!国民が注目するロケット発射シーンと誰も見ていないなかで、ジェット機を発進させるパイロットの対比がなんとも言えずジーンときてしまった。男なら観るべし。 【みんてん】さん [DVD(字幕)] 9点(2007-01-02 22:45:47) (良:1票) |
4.《ネタバレ》 サム・シェパードのイェーガーが最高!!一生テストパイロットで良いと言っていた彼も、ラスト近くで垂直上昇記録に挑戦したのは、宇宙飛行士になった仲間の様に宇宙に行きたかったからなのでしょうか・・・。最後に彼が見た宇宙のシーン、ちょっと感動しました。 【カロ】さん 8点(2004-06-05 12:52:55) (良:1票) |
3.日本人が主役だったら間違いなく露口茂だ。 【セクシー】さん [映画館(字幕)] 10点(2003-11-22 01:29:12) (笑:1票) |
2. いやぁフィリップ・カウフマンお見事!「ミネソタ大強盗団」とか「ワンダラーズ」作ってたヒトとは思えない重厚かつ繊細な作風。堂々たる大家って感じが漂ってるよ。「愛と追憶の日々」なんかに敗れ去るとは…皮肉だねぇ。でも、この後「存在の耐えられない軽さ」に「ライジング・サン」だしなぁ…。アカデミー選出委員は慧眼だったと言うべきなのか?? 【へちょちょ】さん 8点(2003-01-19 03:05:41) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 <2004年4月21日全面書き換え>冷戦時代まっただ中、アメリカのマーキュリー計画がメインになった映画です。有人宇宙飛行計画を担った7人の男たちがどのようにして宇宙に出かけていったかを描いているのですが、それとは別に、”チャック・イェーガー”という狂言回しをおくことで、物語に深みを増しています。彼は人類史上初の超音速飛行を達成した伝説のパイロットですが、とにかく本作の中でのイェーガーは格好いい!彼の魅力的なイェーガー夫人(バーバラ・ハーシー)と馬で追いかけっこをして落馬負傷しながら、テスト飛行を成功させるオープニングからの20分間は、それだけでもひとつの作品にできるほどの密度があります。また、”ガス”・グリソンが帰還したときに批判されたときも、イェーガーは彼をかばう発言をしてました。テスト・パイロットという命懸けの仕事に対する誇りと、”ガス”のギリギリの努力に対するリスペクトが感じられます。アラン・シェパード(スコット・グレン)が小便を漏らしながら有人飛行を達成するシーンや、ジョン・グレン(エド・ハリス)の危機の時に、アボリジニーのたき火の火の粉が飛んできたりと、印象的なシーンは多いのですが、なんといっても、クライマックスは、垂直上昇記録に挑戦してNF-104で成層圏突破を目指すイェーガーでしょう! 陽炎の中から意気揚々と引き上げてくる彼の力強い歩様には拍手喝采です。またビル・コンティの音楽も好いんだよなあ。これを聴きたいがために有意義な3時間を過ごすといっても過言ではありません。史実を考えると、試作機の造形などかなり不自然なものもあるのですが、そんな細かいことは抜きにして、とにかく熱くなれる映画です。未見の方はぜひご覧になってください。 【オオカミ】さん 9点(2002-04-28 18:17:24) (良:1票) |