12.炭坑で働く屈強な兄貴たちが、ひ弱な末っ子にケンカの仕方を教えたり、何かとさりげなく気を配る。 ああ、これってジム・シェリダン監督が『マイ・レフトフット』で美しく“再現”していたなぁ…と、しみじみ思い出す。 その末っ子がある日病気で立てなくなり、神父の励ましにより、大きな樹の下でよろよろと立ち上がる。 …少なくともこの映画を見ている間は、これ以上崇高なシーンなど、これまでもこれからも絶対にあり得ないとかたく信じ込む。 そして、主人公一家の長女を演じるモーリン・オハラの、何という美しさ! 彼女こそ映画の中で描かれた最高の女性だと、これも見ている間じゅうぼくは狂おしく“恋”してしまう。
この世界が耐え難く醜く思えたり、自分を含めた人間が嫌いになった時、ぼくはいつもこの映画に「還る」。そうすると、ふたたび生きていけるような気がする。 そういう意味において、これはぼくにとっての「理想の映画」に他ならない。ジョン・フォードにとっても、この作品よりも完成度の高いものや優れたものはあるだろう。ぼくだって他に好きな作品、感服する作品はいっぱいある。けれど、間違いなく、この映画は「特別」な一本なのだ。単なる「映画」としてでなく、「人生」においての。
ところで、貴方にとって「映画」とは何なのでしょう? 【やましんの巻】さん 10点(2004-06-21 21:57:38) (良:4票) |
11.『わが谷は緑なりき』・・・私はこの作品における”緑”という色について少し考えてみました。まずこの作品を観る前に私の炭坑のイメージ色は黒や灰色しか思い浮かびませんでした。なぜならすす汚れた炭坑夫達や掘り尽くされ荒廃した山々が先入観としてあったために”緑なりき”の緑という色が合っていないように思えたからです。しかしながらこの作品を観ているうちにその緑という色に自分の“心”が徐々に染め上げられていきました。緑というものは植物を連想させ、植物は風雪や日照りなど過酷な状況下におかれても必死に大地に根を張って生きています。それと同じゅうしてこの作品における人達も決して裕福ではない生活の中“喜怒哀楽”の感情を充分に出しきり必死に生きていました。たくましく必死に生きている人達の心をどうして灰色だと言えるでしょうか。”生”ある色としての緑という色こそが一番合っていると思えてきたのです。そして、この作品はモノクロ映画なので実際に緑という色を見ることはできないのですが、私は自分自身の目を閉じて生まれ育った故郷を思い出してみました。思い出を遡り少年時代の頃を思い浮かべるとその光景には紛れも無く“色”がついています。私の故郷はどちらかというと田舎なので田んぼや山などがすぐ目の前にあり、友達とクワガタ採りや池で魚釣りをしたことなどはいくつになってもその思い出の数々が色褪せることは決してありません。山野で育った私にとって緑という色こそが一番身近な色だったことを思い出させてくれたのです。それを含めてこの作品を観ているうちに白と黒以外にも様様な”色”を見ることができたのです。自分の心にある故郷。そこには生ある人達の息吹、亡くなった人達の思い出が詰まっている。それさえ失わなければ“わが谷は緑なりき”と誇れることだろうと思いました。 【tetsu78】さん 10点(2005-02-11 20:16:05) (良:3票) |
10.この作品に「巨匠ジョン・フォードの文芸大作」という冠をつけてしまうと何だか未見の人に近寄りがたい雰囲気を与えてしまう様で、ちょっともったいない気がします。だって、こういう言い方するとアレだけど、笑えるところも感動するところもある、普通にいい作品なんですもの。初老を迎えた男が自らの過去を回想するモノローグで始まるこの作品、描かれる内容は兄弟との離別(死別含む)や姉の不本意な結婚など悲惨なエピソードが多いのに、例えば谷に響き渡る炭鉱労働者達の歌声や、悲惨な生活にもめげない快活な家族の姿など、爽やかなシーンがとても印象的です。考えてみれば人生って楽しい事、嬉しい事よりも辛い事、悲しい事のほうが多いのかもしれない。それでも主人公はラストで「我が谷は緑だった」と呟く・・・重い!深い! 【ぐるぐる】さん 9点(2004-01-19 16:30:48) (良:2票) |
9.小さな炭坑町で暮らす、ある家族の姿を描いたドラマ。 子だくさんで決して裕福ではなくても、お父さんを一家の長に皆もの凄く幸福そうに見える。 もちろんいいことばかりでなく、厳しいエピソードもたくさん出てきて、 思っていた以上にしっかりしたドラマだな、という印象を受けた。彼らが住む炭坑町は、 緑の多い渓谷にあるためにロケーションがよく、村人たちの趣味が合唱ということで、 みんなで歌うシーンが頻繁に出てきて、それが一服の清涼剤になっている。 大人になった(であろう)末っ子の男の子のナレーションでお話は展開するけど、 この町で育った彼がどんな人生を送ったのか、思わずその後を見たくなるほどの良質な映画だった。 【MAHITO】さん [DVD(字幕)] 7点(2011-07-29 16:21:18) (良:1票) |
8.ウェールズ地方の炭鉱の町を舞台に、ええと、要するに、一家離散のオハナシですね(←その安っぽい言い方やめなさいっての)。一家の様子、町の人々の様子、さまざまな事件が、一家の末っ子の少年の目を通して描かれていくのですが、その見事な繊細さ。内容的には全然関係ないけど、中勘助の『銀の匙』をどこか思い出させるものがあります。炭鉱の町らしい、煙を吐く煙突群の幾何学的な面白さと、炭鉱の中の厳しさ。自然の美しさと冬の寒さの厳しさ。人々の交流と反目。これらが何ともノスタルジックに描かれ、どこまでも引き込まれていきます。上記のように、結局は一家がバラバラになっていってしまうのですが、そこに浮かび上がってくるのはむしろ、人と人との「絆」。映画が、悲しさよりもむしろ懐かしさをもって描かれていくのが、かえって感動を呼びます。神々しくすらある映画でした。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 10点(2011-04-28 21:57:22) (良:1票) |
7.人の心のつながり、家族の心のつながりが心に染みました。家族には辛いことが起こりますが、それでも前向きに生きていく姿に家族の絆を感じます。最後父親が亡くなってもあの家族は前向きに力強く生きていくだろうと想像させ悲観的な感じにならなく、歌の響きも手伝ってむしろポジティブな余韻が残りました。年齢を重ねるほど感動しそうな素晴らしい作品です。 【さわき】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2011-01-13 03:26:15) (良:1票) |
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6.モノクロ画面にもかかわらず、色鮮やかな「緑」を感じられる映画。中学の頃の英文訳の テストに最適な素敵な原題です。「ああ!かつて私が住んでいた谷は、なんとまあ美しい緑にあふれていた事だろうか!!」(←意訳すぎて減点) 【放浪紳士チャーリー】さん [DVD(字幕)] 7点(2006-01-28 17:21:44) (笑:1票) |
5.いままで見た中で一番好きなモノクロ映画。家族、子供の姿に涙した。モノクロだから・・・と避けず多くの人に見てもらいたい作品。 【アオイ】さん 9点(2004-11-03 03:36:26) (良:1票) |
4.人生、辛いこと悲しいことが沢山あっても、愛情にさえ恵まれていれば、愛着が持てるし、美しい故郷だったと懐かしむことができる。時代の流れに飲み込まれ家族はバラバラになってしまうけれど、それぞれが精一杯生きていくだろうと思わせる。淡々と力強く、あの時代には普通であった生活を描いている。涙はでるけれど、感傷的でない分、後味が悪くない。それにしても、努力が報われる世の中、善良な人が幸せになれる世の中になってほしい。やっぱり、ジョン・フォードはいいなあ。 【こみち】さん 8点(2004-07-06 23:56:05) (良:1票) |
3.人生は山あり谷あり。しかしこの作品で語られる炭坑夫一家には谷あり谷あり..。もちろんタイトルの”谷”とこの”谷”とは何の関係もないのだが、少年の最後のセリフ”我が谷は緑だった”は谷あり谷ありの不幸な思い出を不幸ととらない”それでも人生ってすばらしい””それでも私にとっては良き思い出”ととれる。そして観ている側も、決して悲劇とは思わない。なぜか清清しい。恐るべしジョン・フォード! じゃあ、なぜ7点かって?うーん、映画の好みは人それぞれってことで..。*一応私の7点は高評価なんです。 【R&A】さん 7点(2004-03-02 15:59:00) (良:1票) |
2. ジョン・フォード=西部劇って単純極まりない図式しか頭に無い方には是非御覧頂きたい秀作映画。原作はリチャード・レウェリンの小説で、フォードとしては「怒りの葡萄」に続く文芸映画となる。19世紀末のウェールズを舞台に炭坑町で懸命に生きる一家の姿が(天才子役ロディ・マクドウォール演じる)末っ子ヒューの回想という形でリリカルに綴られる。思い出は普通何かと美化されがちだが、主人公一家に降りかかる苦難は相当にヘヴィ。姉を演じたモーリン・オハラが有名なくらいで、後は殆ど”通好み”の激シブ演技派俳優ばかりのキャスティングが本作を重厚かつ格調高い名作の域へと引き上げた原動力だろう。個人的には一家の母親を演じたサラ・オールグッドの迫力肝っ玉母さんぶりに圧倒された。オスカー(助演男優賞)を得た父親役のドナルド・クリスプも確かに上手かったけどね。勿論ロディも共演の名優達を前に一歩も退かぬ好演。まさか後にコーネリアス&シーザー役で「猿の惑星」シリーズを皆勤することになろうとは当時は知る由も無かっただろーなw。ま、これら一連の名演技もフォードなればこそ巧みに引き出されたのであって、誰が監督しても同じなわきゃナイ。オスカー作品賞&監督賞にも輝く逸品!!邦題にも格調が漂うこの名作に…9点。チョット重苦し過ぎるので1点マイナス。 【へちょちょ】さん 9点(2003-02-13 14:18:39) (良:1票) |
1.私の好きな映画ベスト3に入る作品。ウェールズの炭坑町に生きる人々を描いたジョン・フォードの傑作。この映画を見ていると「生きる」ことの素晴らしさを素直に感じる。古いモノクロ作品であるにも関わらず、全編叙情的な美しさにあふれていて映像的にも素晴らしい! 【黒猫クロマティ】さん 10点(2002-03-26 17:39:58) (良:1票) |