1.プロットは確かにサスペンス・スリラーの王道。だけど、あのデビッド・フィンチャーがまともにそんな映画を撮るワケないじゃないか。…と、考える人こそが本作の幸福な鑑賞者になれるでしょう。すべてに破格な『ファイト・クラブ』の後、彼が次に目論んだのは、ワンショットもゆるがせにしない古典的演出を、いかに現代的なキャメラワークで実現できるかということ。実際、ここでフィンチャーが見せるサスペンス演出は、あきらかに50・60年代的なものであり(この作品と比較するに最もふさわしいのは、『不意打ち』というオリビア・デ・ハビランド、ジェームズ・カーン主演の1964年度作品でしょう)、いささかも「現代的」な大袈裟かつセンセーショナルなこけおどしを用いていない。それゆえ、かったるいだの、物足りないとおっしゃる向きも分からなくはないのだけど、そういう時に皆さんが求めているのは「サスペンス」じゃなく「サプライズ」でしょう? そういったハズシ方こそが、いかにもフィンチャーらしい「戦略」だと思うんだけどなあ。あと、これを「本当は『エイリアン3』をこういう風な映画にしたかった」という彼の、”裏『エイリアン3』”として見ても、面白いんじゃないでしょうか。…この見方、ダメ? 【やましんの巻】さん 9点(2003-10-06 18:21:16) (良:2票) |