5.アナのかわいらしさだけでも十分なんですが、それとは裏腹にとっても深い作品です。年齢の差はほとんど無いのに、まだ善悪の判断もはっきりと判らないアナと、ほとんどの事象についてもう分別のある姉との対比、両親の根底にあるスペイン内戦の傷跡からくる悲観的精神状態、どこまでも絵画的で詩的でもある映像、フランケンシュタインを精霊に見立てた発想、アナのストッキングの色の違いだけで時間の経過を見せる等々の素晴らしい演出。。。これだけ無駄なく上手にやれば(けれどもいっぱいいっぱいに詰め込んだという印象は全く無い)、たったの90分でこれだけの作品が創れるんですね!これを見て以来、密度の薄い2時間以上の作品を見ると、本当に損した気分を味わうようになりました。 【クロマス】さん 9点(2003-01-23 23:25:09) (良:2票) |
4.ドン・ホセがハンサム過ぎる・・・。一生自由を得ることのない働き蜂について父親が語る時、それは時代の閉塞感と子供たちの暗い未来を語ってもいるのだけど、作品の背景にあるスペイン内乱。大恐慌から世界大戦へと向うその時代の閉塞感というものは、何だかこの、世界が不況にあえいでいる21世紀初頭の今とリンクしている気がしてならない。なりふりかまわぬ通貨安競争、近隣窮乏化政策。そしてTPPの行く末にあるものは、かつて日本を追いつめたブロック経済ではないのか?次に追いつめられる国は?(って、まあ、そりゃ、ねえ) 冷戦下より、まさにこの今こそが、真にヤバいんじゃないのだろうか。とか思いつつ。この映画ではそんな不安の時代(今、まさに我々が抱える不安でもある)を背景に、その軸(大人の世界)と直交するように、子供と“死”との戯れ、という軸が描かれる。これは内乱の不安とは別個に存在する永遠の不安。両者がクロスした時、不安の二乗、どうにもならない閉塞感。イザベルがふざけて死んだふりをすることができるのは、明らかに「生」の側に立ち、「死」というものを知識として把握できているからだろうけど、その点、汽車が来るギリギリまで線路に立っているアナの方が「死」に近いポジションにいるのだろう。火を飛び越えて遊ぶイザベルの行為は確かに危険ではあるけれど、その後、暗くなるまで火を見つめているアナの方が、よほど危険な立ち位置である。ふたりで遊んだ、井戸の横の家は、アナと脱走兵の交流、すなわち死との交流の場となり・・・。直交する軸は二度交わることがない。解を見出すことなく、「どうにもならなさ」だけを残して、映画は去ってゆく。そして今また再び、我々は、見出すことの決してできない解を見出すこと、を求められる時代に生きているのかも知れないのだけど。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2012-02-04 03:51:28) (良:1票) |
3.夢とも現実ともつかない遠い記憶にあったものが、呼び戻されたような作品。いうなれば、秋深まる頃に表れるデジャ・ビュ。カメラの位置と構図、それと光と影の使い方が抜群に上手く絵画的センスの良さを十分に感じさせてくれる。妖精のような少女アナが、このアーティスティックな作風に見事溶け合っておりいつまでも記憶に残る。さらに「フランケンシュタイン」の恐くて悲しい物語りを取り入れるなど、ミステリアスな味付けも巧みだ。視点を変えて観るたびに、新たな発見があるという静かだが奥の深い名画。 【光りやまねこ】さん 9点(2004-02-29 19:40:32) (良:1票) |
2.子供の無垢さって無防備で柔らかいんですね。自然とすごく近くなれたり、夢と現実が時々交差したり、誰かに対してもの凄く残酷になったりする。そんな子供の頃の感情のカケラをおぼろげに思い出すような、どっか連れていかれそうになるような美しい作品です。 【黒猫クロマティ】さん 9点(2003-05-07 17:36:45) (良:1票) |
1.へちょちょ星人さん!なった、なった!アナ・トレントの虜に!僕の中の「ベスト女優U-10部門」でダコタ・ファニングを抜いた!すまん、ダコタ。ベッドに入ってから姉のイサベルとヒソヒソ声で話すところとか、最高!。あの瞳がもーたまらん・・・ってこんなこと←ばっか書いてると単なる幼女好きの危ない奴と思われてしまうな。僕はこのJTNEWSのレビューコーナーを見て「今まで知らなかったけどなんか気になるし観てみたい映画」リストを作ってるんですけど、この作品もそのひとつだったんですよ。いや、こういうヨーロッパ映画で芸術の薫り高い作品って今まであんまり観てきていないから退屈だったらどうしよう?と思ってたんですけど全然そんなことなかったです。確かに台詞は少ないしちょっと分かりにくい所もあるし、そういう意味ではそれほど親切な映画ではないのかもしれませんが、その代わり映像がすごく「語っている」んですよね。広々としたところを人が走っていくシーンとか、すごく詩的で、理屈でなくジーンときます。個人的に印象的なのは立ち尽くす姉妹の前を蒸気機関車がゴォーッと通り過ぎるシーン。それに二人の姉妹もすごく可愛いし(いわゆる純真無垢な面だけでなく子供の無邪気な残酷さみたいなものも描かれているんですよね)。これは何度も観たくなる映画だなあ。ところでへちょちょ星人さんも仰られてますがこの映画のビクトル・エリセってホント寡作の人みたいですね。さっきネットで調べたんですけどこれ以外に「エルスール」「マルメロの陽光」という作品があるらしいです。むむ、観てみたい。 【ぐるぐる】さん 9点(2003-04-28 19:34:09) (良:1票) |