《改行表示》 7.これはわたしにとって、とても思いで深い作品なんです。初めて観たクローネンバーグ監督作品であると共に、初めて借りたレンタルビデオ作品でもあるのです。わたしが中学生だった頃はレンタルビデオ店なんか初期の初期で1泊2日で1500円(高!)とか取られる時代だった。 そんな初期のレンタルビデオ店の目玉作品がこの「ビデオドローム」だった。わたしはどうしても見たくて会員費1000円と1泊2日1500円の2500円も払い、この作品を借りたのだった。家に着いた頃はちょうど夕飯時、茶の間にはすでに夕食が並べられていた。ここで普通は、さっさと飯を食って自分の部屋でゆっくり鑑賞したいところなのだが、当時ビデオデッキは大変高価なもの。普通の家なら茶の間に1台しかないのは当たり前の時代だった(多分)。しかし早く見たかったわたしは、そこで何を血迷ったか家族にこう提案した。「今日はレンタルで映画を借りてきたからみんなで観ながら食べよう!」と。家族もレンタルビデオなど初めてだったので快く承知してくれた。早速テープをデッキに挿入、映画が始まった。それから数十分後・・・テープはレンタル店の袋に戻され、テレビの画面にはニュースが映し出され、会話のない気まずい雰囲気だけがそこにあった。それから十数年、最近DVDで鑑賞し、改めてこう思う。クローネンバーグは変態監督で、この作品は家族では観てはいけないと。 【カズゥー柔術】さん 7点(2003-11-26 12:26:44) (笑:8票) |
《改行表示》 6.《ネタバレ》 グロテスクで意味不明な映画というわけではなく、完全には理解できないけど「メディアの危険性」に警鐘を鳴らしている作品。かなり時代を先取りした良作ではないだろうか。おそらく当時の人は、突飛すぎていてあまり理解はできなかったと思うけど、今観れば少しは理解できると思う。 現代社会を踏まえれば、本作に描かれていることは大部分が現実化していると思う。 本作でジェームズウッズが体験したことを現代に置き換えると、「インターネットやDVDを通じて反社会的かつ、より刺激的な画像や動画に多くの人が群がる(劇中では「ビデオドロームへの関心」)」→「現実(リアル)と擬似(ヴァーチャル)の区別がつかなくなる者の増加(劇中では「ジェームズウッズの妄想」)」→「リアルとヴァーチャルの区別がつかなくなることによる犯罪の増加(劇中では「ジェームズウッズのテレビ局襲撃」)」→「現実からの逃避(メディアの世界にのみに生きるひきこもり)(劇中ではラストで「ジェームズウッズが自己の肉体を殺して、テレビ(ビデオ)の中で生きようとしたことの現われ」」という流れになると思う。 また、何年もの前に亡くなった俳優やミュージシャンが、亡くなった数年後でさえもCMに出演したり、CDを続々とリリースし、亡くなっているにも関わらず、まるで生きているかのような活動をする現象も、オブリヴィアン教授で見事に表現していると思う。 25年もの前に、このようなメディア社会の未来をずばり描いている点は凄いとしかいいようがない。 しかしながら、そうは言っても、刺激的な画像や映像によって、人々を反社会的な行為に走らせないようにしているのも事実だろう。人々はメディアを通じて疑似体験することにより、暴力的な衝動や性的な欲求を緩和することができ、犯罪が抑止されている。 本作は、その両面をカバーしているのではないか。メッセージ的には刺激的なメディアによる暴力行為増加への警鐘を鳴らすとともに、視覚的にはより暴力的な映像を駆使することにより、人々の暴力的な欲求を抑える働きをみせていると思う。 だから、クローネンバーグの映画はいつもグロテスクで暴力的なのではないだろうか。 【六本木ソルジャー】さん [DVD(字幕)] 7点(2006-08-29 00:27:02) (良:3票) |
《改行表示》 5.《ネタバレ》 【今回も長すぎる前書き】 映画評論家:町山智浩氏の著作を読んだ事がきっかけとなり、久々に鑑賞した。 初見は大学2年生、今から何と30年も前の事になる。 時の流れの速さには驚くばかりだが、それ以上に本作が未だに公開当時の謎めいた雰囲気を維持している事に驚愕した。 事の起こりは高校生の時。 「STARLOG」「FANGOLIA」等の洋物映画情報誌の日本版が発売されていた幸せな時代。 おどろおどろしい写真と共に紹介されていたVideodromeの紹介記事に私は釘付けとなった。 海賊盤(死語)が出回っているとの噂も聞いたが、世はまだレンタルビデオが流行し始めた黎明期。 どこで手に入るかも判らぬ謎の本作は、例え様も無い魅力的な作品として私の心の片隅にずっとこびりついていた。 時は流れて(確か)1988年、東京国際映画祭に於けるファンタスティック映画祭の成功が影響し日本で開催された「SFXアカデミー」、 本作の特殊メイクを担当したリック・ベイカーが来日し講演すると聞き、チケットを探し回ったが時既に遅く全席売り切れ。 落胆していた私に、当時日芸映画学科に在席していた姉がどこで仕入れたのか判らないがチケットを準備してくれた! 姉には本当に感謝あるのみ。 講演の内容は今でも鮮明に覚えている。 ベイカー氏本人が自ら"Do you like this film?"とVideodromeに関して質問、 それに対して大勢の聴衆が一斉に挙手!(今みたいに”Yes”とは誰も言わなかった様な)それを見たベイカー氏は 悪戯っぽい顔でニヤリと笑いながら”Sick People...(みんなビョーキだね笑)"と返す。 幸せな時間でした。 【やっと本文】 本作ほど、観る度に謎が謎を呼ぶ作品は無いだろう。 後の多チャンネル化、暴力コンテンツの隆盛と衰退を予見したかの様な世界観。 製作年度が旧いが故の、画面の微妙な粗さが本作のいかがわしさにブーストを掛ける。 皆がメディアに取り付かれ・メディア無しでは生きていけず、メディア内の出来事に一喜一憂し、 時には自らの命をも絶ってしまう・・・ 拳銃と有機的に絡みあい、妄想と現実の中でのたうち回るマックスの姿は、紛う事無くスマホに心身ともに蹂躪され、 それを自覚していながら抜け出す事が出来ない現在の私たちそのものだと思う。 マックスは自らの命を絶つことで新しい次元=精神の開放を果たした。 それは果たして本当に幸せな結末だったのだろうか。 翻って私たちはどうすれば良いのか? 初鑑賞時は特殊メイクを目で追う事に終始し、ストーリーは二の次だった。 社会人になってからは本作の内面に秘められた作者のメッセージを何とか読み取ろうともがいた。 齢50を超え、ようやく本作の意図が客観的に俯瞰出来る様になったのかと思う。 鑑賞する年齢で作品への印象が劇的に変わる、「映画の魅力」をまたもや再認識させられた。 (注)本作は冗談抜きで万人向きの映画では決してありません。 鑑賞する際は十分にご注意の程。 【たくわん】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2017-11-28 17:34:28) (良:2票) |
《改行表示》 4.《ネタバレ》 クローネンバーグの真骨頂ともいえそうなカルト映画。 主人公が危険なものに魅了され、やがて日常が侵されていく様が見事。 この不条理さと気味の悪さは他の映画ではないと思う。 独創的で奥深く、官能的でダーティーでもある。 この映画のテーマにもなっているが、この映画自体が”映像体験”といえる。 ビデオカセットの質感が強く出ているので、 ビデオカセットに慣れ親しんだことのない人にはそれがどう伝わるか分からない。 ビデオドロームは物語の中で生きているとしか思えず、 観賞者である自分もまたビデオドロームに侵されそうで怖い。 お腹の穴はモザイクをかけなくてもいいのかな。 クローネンバーグここ数年忘れてたけど、これみるとやっぱ天才だなと思う。 久々に「裸のランチ」も見てみたくなった。 【ゴシックヘッド】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-12-23 06:03:07) (良:1票) |
《改行表示》 3.《ネタバレ》 ちょうど時代的に「情報化社会の不安」なんて事が言われ始めた時期を象徴するような作品。現実と非現実の融合する世界の強調は、当時からあったであろう、ホラー批判に対する皮肉とも取れる。いずれにせよ、その着眼点の先進性を評価したい。 見る者にとっては、結局、何が現実かはどうでもいいのだ。この現実すら自分の脳内が作り出した「虚像」でしかないのだから。 この世界を終わらせるには自らの命を断たねばならないという、監督独自の「現実世界」に対する恐怖感や諦観が良く出ている。 また個人的に昨今の「CG乱用映画」に憤りを感じていたところなので、久しぶりに、手作り感の溢れる特殊映像を見られた事が嬉しかった。古き良き時代よ…。 PS.ちなみに私が始めてレンタルで借りたホラーはこの作品と「デッドリー・スポーン」でした。一本1500円でした。一泊二日でした。これ以上は聞かないで下さい。 【FSS】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2005-01-18 17:58:07) |
2.もっとグロく! 【のりまき】さん 4点(2003-11-07 17:23:43) (笑:1票) |
1.初めて観た時、ストーリーはワケわかんなくても、とにかく映像がすごくて(ほんとに腹に手を突っ込んでるぞ)、圧倒されて「ああ、こういう映画が有ったのか(有り得たのか)」と、非常に鮮烈な印象を受けました。後の「イグジステンズ」や「裸のランチ」はあまり好きにはなれないのですが、本作はちょっと別格です。 【鱗歌】さん 9点(2003-06-22 01:41:19) (笑:1票) |