8.久しぶりに時間を忘れて見入ってしまった、そんな映画。それほどに怖い。責任の所在を自分の外に押し出されるだけで、どんどん理性を失っていく「看守さん」の姿に戦慄を覚えた。いやしかし、ちょっと待ってくれよ。いくら理性を失うようなシチュエーションに誘導されていたからといって、あそこまで露骨に人間変わるか?人間の理性ってそんなに脆いのだろうか?そんな疑問を一緒に鑑賞した友人に投げかけた。すると、興味深い返答を得た。「逆に理性が強い人間ほど、ルールに則ろうとする。この場合のルールとは、徹底して『看守さん』を演じること。だから、豹変した彼は理性的な人間だった」。なるほど一理ある。そこで、疑問の内容を「人間のモラルってそんなに脆いのだろうか?」と言い換えてみると……あー、やっぱ脆いかも知れないね。我々の元に毎日飛び込んでくる異常な犯罪ニュースを聞いていると、そんな気がしてくる。「異常」って言葉を使ったけど、そんな異常な犯罪者は、犯罪を犯すまでは善良な一市民だったケースも多かろう。明日は我が身、何かしらのきっかけで自分のモラルが崩壊する可能性を危惧することは、決して杞憂ではないんじゃないだろうか?「ついカッとなってやった」「ムシャクシャしてやった」「まさか死ぬとは思わなかった」「今は反省している」…そんなありふれた容疑者のコメントが、自分の口から出る日が絶対に来ないと誰が言えるだろう。人間としての人間、動物としての人間。その境界線の位置づけについて深く考えさせられる作品でした。いつか俺が逮捕されたら、このレビューのことを思い出して、笑うなり身震いするなりしてみて下さい。 【コバ香具師】さん 8点(2004-06-22 03:41:23) (良:8票) |
7.高校の時の体育教師Yが何故あれだけ威張って(暴力付き)いたのか、今わかった。彼は実験をさせられていたのだ! 【死亀隆信】さん 8点(2003-01-24 02:28:10) (笑:5票) |
6.《ネタバレ》 私たちは社会生活を営んで生きています。それは少なからず何かを演じて生きているということ。ある人はサラリーマンを。ある人は学生を。意識しようとしまいと、“こうあるべき”という役割を演じて生きているのが、社会的動物たる人間です。本作では、心理学の実験として「看守」と「囚人」の役割が被験者に与えられます。当然、被験者は初め役割を演じます。報酬を得られる単なる実験として。しかし教授という神のもと、与えられた役割という大義名分のもと、次第に自己より役の占める割合が増していきます。物事を決めるのは自己ではなく役割。それはとても心地よい状況のはずです。なぜならそこには自己責任が存在しないから。でも、自分に都合の悪い決定だと逆に息苦しく感じることもある。勝手なものです。でもそれは日常生活でもごく普通に行われている心の動き。心の安定に必要な行為です。だからこそ、本作で起こった事象にはリアリティがあります。社会と隔離された密閉された空間。そこでひとつの社会を形成してしまっている状況。思考を停止させるのになんと好条件なことか。役割が自己を食い尽くしていく恐怖があります。普通の人間に潜む狂気が一番恐ろしい。 【目隠シスト】さん [DVD(字幕)] 8点(2006-08-07 17:58:22) (良:3票) |
5.《ネタバレ》 怖いです。ちょっとしたホラー映画なんて相手にならないくらい怖いです。この作品、性善説とは無縁ですね。環境により左右されてしまう危うい人格を描いています。権力を持てば、程度や要する時間は違えど、誰でも変化してしまうと思います。それでも被験者が一人ないし二人ずつなら問題は起こらなかったと思います。しかしこの映画の看守役のように、集団になると責任感は分散され、その行為はエスカレートしていくのではないでしょうか。そして何であろうと一度境界線を越えてしまうと、あとは簡単になだれ込んでしまうのです。お化けより怪獣より真に恐ろしきは、人間の中に潜む邪悪さと、どこまでも続く愚かさなり、というところでしょう。 それから皆さんが必要無いとおっしゃっている主人公と女性のエピソード。確かに取って付けたような感じがしましたね。でもあれは観客のために用意された休憩所なのかもしれませんね。 【ミスター・グレイ】さん [DVD(字幕)] 8点(2005-11-21 18:17:35) (良:1票) |
4.ここ数年で表沙汰になってきた刑務所内での、看守による囚人虐待事件を思うと、この映画にはリアリティを感じます。情報を制限され、閉鎖された環境で自分は平凡な一個人だと、偉い人間ではないと思い続けるのは困難なようです。ビデオのパッケージを見て大体の展開は読めたのに、それでも画面に釘付けになった良作です。 【次郎丸三郎】さん 8点(2004-07-15 19:03:35) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 ミスチルの曲と一緒やんっ・・・って思って借りてみただけなんけど、オモシロかった。 esって深層心理の奥にあるモノの事だったんやなぁー。 ビデオ借りる時にパッケージ見て、どこかで聞いたことあるような話やなって思ってたけど、実際にあった事件をモトにしてるっていうのに驚いた。 人間って状況によって あんなに変わってしまんもんなんかな・・・もし、自分が同じような実験に参加したらって思ったら正直怖かった。 看守役になっても、あんなふうになるわけない!!と思う・・・っていうか思いたい!! 最初は囚人も看守も対等の立場だったハズなのに、いつの間にか支配する側と される側に別れて、その差は日を増すごとに大きくなる・・・もし、看守も囚人も普段着のまま実験してたら あそこまでヒドイ事にはなってない気がする。 看守役は制服、囚人役は囚人服を着ることによって 最初の上下関係ができたんだろうなぁ。 そういうのって日常生活の中にも少なからずあるかもしれない。 警官は制服、医者は白衣を着ることによって多少は自分が偉くなったような気になってるのかも・・・。 人間って怖いって思った作品でした。 【よしぞー】さん 8点(2004-05-31 23:35:50) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 みなさんお気づきと思いますがこの映画、ほとんどフィクションです。実際の監獄実験では、殺人はもちろん、直接的な暴力さえも行われていません。ましてや監視室ののっとりなんて・・・ 実際にあそこまでなってたら、ジンバルド教授が米国心理学会の現会長でいるわけがない。 映画に描写され、現実起こったのは腕立て伏せ、裸にされる、素手で便所掃除、囚人の反乱(といっても、檻の入り口をベッドで塞ぐ程度)を治めるために消火器を噴射までのようです。あと、映画にはありませんが、便所に行かせず檻の中のバケツに用をたさせることもしたようです。 ところで、以外にも事実に近い点として、囚人の反乱の首謀者はゴシップ誌に監獄の記事を乗せるために実験に参加した人物だったようです。さすがに少佐はいなかったようですが。 ジンバルド教授はこの映画があたかもノンフィクションであるかのように上映されている点をオリバー・ヒルツェヴィゲル監督に抗議し、監督もそれを認め、以降この作品を公開する場合はフィクションである旨を表示することになったようです。 詳しくは、全て英文ですが、ジンバルド自身による監獄実験解説サイト(www.prisonexp.org/)や、米国心理学会のサイト(www.apa.org/monitor/mar02/filmcritic.html)で確認できます。 で、ここからやっと感想ですが、画面に引き込まれて目が離せない、なかなかの秀作だと思いました。バイオレンスシーンが苦手でない方は一見の価値ありでしょう。 【しん丸】さん 8点(2003-11-28 12:26:14) (良:1票) |
1.かなり引き込まれました。昔、鬼ごっこがいじめになってしまったことって無いですか?忌み嫌われる存在である鬼に合うような扱いをしていたらだんだんと度を超えていじめになったことが…。僕はあります。で、それを思い出して鳥肌が立ちました。結構身近な問題なんやナァと。あと、彼女が必要ないって言う人がおられるようやけど僕はいてよかったと思います。というのも、唯一実験と関係の無かった彼女でさえ一瞬で「異常な状況」に順応し、ためらわず引き金を引いたってのがいい演出やと思うから…。もしかしたらあの瞬間が一番恐ろしい瞬間かもしれない。眼鏡カメラは要らないね。 【カラサ】さん 8点(2003-02-08 12:29:48) (良:1票) |