4.冒頭から中盤にかけてはとても神話的である。「青春の殺人者」というわりには現代<近代>的な自己疎外感からくる青年の孤独や苦悩が感じられず、父子、母子のオイディプス的三角関係を軸とした普遍的な物語でありながら、妙に噛み合わない心理劇にただ座りの悪さだけが残った。しかし、中盤以降、物語は見事にひっくり返る。「青春の殺人者」とは、青春が殺人者ではなく、青春を殺人する、つまり青春こそが殺戮され終焉したことを描いた物語だったのだ。主人公は青年たる資格を十分に備えた人格でありながら、あまりにも無邪気に両親を殺害してしまう。その動機の弱さはまず確信的である。そして、両親を殺した主人公のその後の苦悩と行動のアンバランスさ、その薄っぺらさは、そのまま自己の希薄さに繋がっている。主人公の行動の破綻性は、作品そのものの破綻を綱渡りしながら、その破綻性こそがこの物語のモチーフだと思わざるを得ないのである。ヒロイン原田美枝子は、まさにその補助装置たる存在だ。彼女がどういう役割なのか、実は僕にもうまく捉えられなかったのだが、その訳の分からなさこそが彼女の重要な役割なのかもしれない。<原田美枝子はとても魅力的でしたね。あのイチジクを食べるシーンなどはかなりドキドキしました。> この作品は、もう30年近く前のものだし、感覚的にはもう古典的作品であることは否めない。しかし、この作品が意識的に描いた「青春の殺人」という水脈は、今もずっと繋がっている。もっとドライに、もっと軽やかにではあるが。そして、今や「青春」は全くの死語と化している。 【onomichi】さん 9点(2004-06-27 01:43:21) (良:3票) |
3.“親殺し”という序盤のの陰惨さ以上に、水谷豊演じる主人公の青年らしさというか、むしろ子供らしさ、嘘の無さみたいな所が印象深くて、純粋さを強く感じるし、強く共感できるから感動できる。自分の汚されたく無い部分を持ち、それを否定するものに敏感に反発する。そんな自分でも理解できないくらい強い衝動が発端となり親を殺してしまう。両親の死のあっけなさと、思っていた以上に変わらない日常。次第に湧き上がる実感とはうらはらに、自分が親を殺してまで守りたかったものすらも理解できてないし、父親への愛情すらも湧いてくる。全ては自分の弱さであることはどこかで分かってる。親は欲しい物を与えるくせに熱中すると奪おうとする。でも知っていた。そんな事は分かっていて与えてもらう事を選んでいた自分の弱さ。死にたくても死ぬ事すらままならない憶病さ。小さな虚栄心が崩れさった瞬間こそが青春の終わりなのかもしれない。演出も計算されてて配役も絶妙。原田美枝子も体の成熟さに似合わず子供っぽい顔が役にはまっていた。この作品の素晴らしさは言い出すとキリが無さそう。傑作。 【ハッシーふりかけ】さん [ビデオ(邦画)] 10点(2006-07-21 03:12:46) (良:2票) |
2.見終わった後、「もっと早く出会いたかった」と心から思った作品です。 水谷豊と原田美枝子のコンビが非常にせつないです。 それと、ゴダイゴの音楽が最高に素晴らしいです。(私の中では邦画では1番です) すぐに、この映画に使用されている作品である「新創世紀」を買ってしまいました! 【TM】さん [DVD(邦画)] 10点(2006-04-16 20:47:48) (良:2票) |
1.昔からの女友達に「今まで観たので良かった映画、何?」と聞いた所、挙げてくれた内の一本です。とにかくいきなりの親殺しのシーンに圧倒されてしまった。特に「女」と「母」がぐちゃぐちゃに入り乱れながら水谷豊に迫る市原悦子の凄まじいくらいの妖艶さにはただもう、びっくり。それに比べると原田美枝子はちょっと可愛らし過ぎて、確かにヌードはすごいし胸もきれいなんだけど、素の演技の時「淫乱な少女」を演じ切れてないのがちょっと残念。まあ当時17,8歳だからしょうがないのかもしれないんですけどね。全体として、荒削りなところもあるけど、気迫というか気合というか、そういうものがびしびし伝わってきました。親との対立と邂逅(まあ殺しちゃってるんだけど)、性に対する欲望と嫌悪感、そういったどろどろしたものをドバァッと画面にぶちまけた感じ。親殺しっていうからもっと鬼畜な感じかと思ってたけど、そういうのではありませんでした。水谷豊演じる主人公が父親を刺してしまったのは、ある種はずみみたいなもので、ある部分では父親を憎んでたんだけど、別の部分では尊敬し、慈しんでいたんですね。だからあんなに苦しんで、混乱してたんでしょう。終わり近くで水谷豊が自殺を図る所では「むむ、死ぬのか。死んで終わるなんてただの逃げだぞう」と思ってたんですが、ああいうラストシーンで良かったと思います。まあ万人にお勧めできる映画ではないと思いますが、ドロドロを抱えた若い人とかヘビーなものを見たい人にはいいと思います。蛇足その一。この映画はDVDで観たんですが、特典映像の監督のインタビューを観ると昔の日本映画の無茶苦茶な様子がわかってなかなか面白いです。蛇足その二。長谷川監督は連合赤軍の企画があったのにポシャッてしまったそうですが、是非観たいなあ。まだまだ伝説になるお年ではないでしょう。蛇足その三。この映画、あの「チイチイ」こと地井武男(字、あってるかなあ?)が本来わりと重要な役で出てたはずなんですが、編集の結果、ほとんどカメオ出演のようになっています。チイチイ、かわいそ。 【ぐるぐる】さん 7点(2003-04-26 14:28:18) (良:1票) |