4.デビュー当時の若尾文子の可憐さももちろん捨てがたいけれど、何といってもこの映画は美代春姐さん=木暮実千代のものでしょう!彼女の立ち振る舞い、仕草、そうめんを啜る姿に至るまで、いちいち見惚れているうちに映画が終わってしまいました。それにしてもここに出て来る男どもは、どいつもこいつも悉くサイテーな連中ばかりですね。お茶屋の元締め浪花千栄子の、涼しげに憎々しい巧みな名演との相乗効果で、木暮姐さんの虐げられ耐え忍ぶお姿がいよいよ妖艶にみえてくるのも、溝口演出の計算のひとつなんでしょう。暑い夏の京都裏小路の情緒ある風景、クライマックスからずっと背後に流れるお囃子の音色のここち良さ・・・。もうたまりません。格調高い風俗描写映画のひとつの完成された形がここに在ります。(→池袋文芸座「リスペクト溝口健二特集」にて) 【放浪紳士チャーリー】さん [映画館(邦画)] 8点(2007-09-23 12:30:03) (良:3票) |
3.《ネタバレ》 神崎の前で美代春が脱いだ白足袋。何とも言えぬ艶めかしさに息を呑みました。観終わって、単なる売春婦ではない「富士山同様日本の宝」と言われる祇園芸妓としての気位の高さ、乙に澄まして紳士面するものの仕事に欲情を絡める薄汚い本省課長にカラダを売らねばならぬ理不尽さ、相反する二つを繋ぐ人としての情け、それぞれが白足袋に凝縮されていたように思いました。女優三人の好演の相乗効果が構図同様に作品の奥行きの深さを与えていました。 |
《改行表示》 2.溝口健二の胃もたれしないあっさりした小品。僕は「西鶴一代女」や「雨月物語」のようなおどろおどろしい作品よりこちらの方が好きだ。気取りもてらいもなく心から楽しんでこの映画を作ったのではと思われるようなふしがあるのだ。 祇園の風俗描写が何度見てもあきさせない。祇園は男の天国である。金さえ持っていれば舞妓を囲うことができるのだ。そんな舞妓の世界の中で小暮実千代演ずる芸妓は自分が生きていくために、また妹分の若尾文子をかばうために嫌いな男と寝るのである。しかし少しも卑屈にならず、またいそいそと仕事に励むのである。これは溝口健二の理想の女性像ではなかろうか?心優しき女神である。しかし女性が見たら怒れてくるだろう。 小暮実千代が実にいい。もともと顔が少し派手な女優さんでテレビでは昔よく見かけたが、何かひとくせありそうな感じで子供の頃はどうしても好きになれない女優さんだった。でもこの女優の持っている派手さと役柄の悲しさがうまく折り合って変にセンチにならない優美ですばらしい作品が生まれたと思う。いっぺんに小暮実千代が好きになってしまった。 若尾文子も年齢より少し若い役柄をかわいく演じている。舞妓さんの似合うこと!でも最後にぶたれて髪が乱れた表情は、もう立派に一人の女である。ああ怖い怖い。 【山田 明生】さん 8点(2003-11-03 22:22:41) (良:2票) |
1.《ネタバレ》 主人公たちの純粋さや生真面目と対照的に描かれる、世間(?)のシステムの強固さに溜め息。そのシステムに守られている面もあるだろうけど、ちょっとクラクラしてきます。若尾文子が生真面目さから謝罪に行く場面にしても、浪花千栄子の方はまるで「飛んで火に入るなんとやら」といった表情で、彼女を人質にしてしまう。これはびっくり。出入り禁止を解かれた後は、急に仕事の電話が何本も掛かってきて、いつのまにかいなくなっていた男衆が何事もなかったかのように戻ってくる。「何事もなかったかのように」続いていく日常に目眩がしました。けどまあ、今日の昼ご飯はそうめんかなあ。 【ゆうろう】さん [DVD(邦画)] 8点(2014-07-06 10:51:20) (良:1票) |