10.《ネタバレ》 様々な所で映画史上最高傑作と評価される作品ですが、今まで見る機会が無かったこの作品をこの度映画館で鑑賞する機会に恵まれた。これ程3時間があっという間に過ぎるという感覚を久々に味わうことのできる映画でした。やはりその評価に違わぬ素晴らしい映画でした。ジャン=ルイ・バロー演じるバチストの入魂のパントマイムを自宅の小さなTVではなく映画館で鑑賞できたことは本当に幸せでした。また、本作を紹介する本や資料に必ずと言っていいほど出てくるバチスト、ガランス、フレデリックの3人が舞台にいる絵を見た時にはこのシーンだったのか・・・と感慨深いものがありました。ナチス占領下のフランスで作られたという伝説の名画。冒頭であらぬ容疑で逮捕されかけるところをバチストのパントマイムに助けられて解放されたガランスの「私は自由が大好きなの」という台詞に代表されるように、さりげない形での意思表示が当時としては精一杯のナチスへの反抗だったのでしょう。そんなさりげなく見せる意思表示やラストシーンのカーニバルに至るまで活気にあふれる街と天井桟敷の人々の生き生きとした描写などの中に祖国フランスとそこに暮らす人々と自由を讃える思いが確かに伝わってきます。 【とらや】さん [映画館(字幕)] 9点(2009-09-16 01:11:34) (良:3票) |
9.《ネタバレ》 あ、いかん、他の映画に10点つけてしまった。11点は無いのか、11点。高校生の大昔見たときは、ただの長い映画でした。歳を重ね、映画の本数を重ね、再見してみると、あら、大変、凄い映画じゃないの。最初から最後までうっとりしてしまいました。そんな映画はなかったなぁ。メタ映画というか、劇中に劇があるというか。しかも、その劇中劇以外の部分も演劇的にしている。閉じられた空間ではなく、開かれた空間で、演劇を見る感じ。映画が演劇に勝負しようとしているのか。恋愛を語るならフランス人には勝てない、って言いますが、その感じそのままの台詞、台詞、台詞。悪党もいる、狂言回しもいる、決闘なんてものもある、古典的恋愛ストーリー。演技をするのを演技するという役者。たくさんの、たくさんの人。天井桟敷の人々は映画の中では劇を見る人々。私達も映画を見ている天井桟敷の人々。映画の中で天井桟敷の人々を愛すべき人たちのように描いていました。だから、この映画は見ている私達を愛してくれている、という暖かさも感じさせてくれました。 【K-Young】さん [DVD(字幕)] 10点(2008-01-26 14:40:37) (良:3票) |
8.《ネタバレ》 この映画が何故名作と言われているのか解る。映画への愛に満ち溢れている。映画を撮るんだ。映画を製作するんだという情熱、思いが伝わってくる。この映画は当時、フランスはドイツの占領下にあった。暗く沈みがちなフランス人の為にフランスの監督が同じフランス人を映画という武器を持って喜ばせたい。楽しんでもらいたいという願いで撮られている。自由への叫び、それはパントマイムという形でしか表現出来ない時のバティストと素顔でのバティストとの両面を描きながら本当の自由とは何か?愛とは何か?というものを見せてくれている。芸人であるが故に、それもパントマイム芸人であるが故に声には出せない苦しみ、一方でパントマイム芸人ではない時に見せる姿が本当の意味でのバティストであるように人は自分の気持ちというものは心の中にいつまでも隠しておくことなどは出来ない。全てを騙して生きることの辛さ、それはバティストだけではなく、お互い愛しながらも一緒にはなれなかったバティストとガランス、ガランス同様、バティストの事を心から愛していたナタリーの苦しみ、別の男と結婚し、男の子が生まれ、その子供にバティストと名付けた事がナタリーの気持ちをよく表しているし、最後に群集の中に消えて行く(去っていく)ガランスの名を呼び続けるバティストの心の叫び、色んな意味でこの映画は男と女の本心、それを全て隠さずに描ききっている作品として素晴らしい人間ドラマである。午前十時の映画祭で観るまでずっと観ないでいた作品である。大きなスクリーンで観て来て良かった。あれだけのスケール感、よく占領下に置かれている厳しい立場であるにも関わらずこれだけのものを撮ったと感心させられた。この映画がフランス人に与えた勇気、希望は我々日本人には想像つかないぐらい計り知れないであろう。 【青観】さん [映画館(字幕)] 9点(2011-09-10 21:57:17) (良:2票) |
7.195分の長編。どんなときも愛に生きたいと願う人々、切なさのこる。 【HRM36】さん [DVD(字幕)] 10点(2009-08-09 22:01:22) (良:2票) |
6.邦題から貴族のお話しかと思ったらさにあらず。Disk2を先に見るというまぬけな不運のためにDisk2を見ているあいだ中、ガランスは貴族か金持ちで俳優のバティストとの身分違いの恋の悲劇だと思っていた馬鹿さかげん・・・。でも、Disk1の冒頭でガランスの正体はあきらかで、しかもコメンタリーつきの版が借りられたのでドジを補って余りある収穫がありました。高得点をつけた人でも昼メロ風とおっしゃっていますが、この作品はそんな甘いものではありません。ナチス当局の検閲をかいくぐり、かいくぐり・・・スタッフの一人がユダヤ系だったせいもあり、製作者一同、英仏連合軍の進行状況を見ながら、「この頃にフランスは解放される。」と予測された頃にユダヤ系スタッフの名前をクレジットに入れて封切ることに決めたそうです。フランス人(被占領者)にしかわからない抵抗のメッセージを占領者のナチスの検閲官にはわからないようにオブラートに包んでメロドラマにしたわけです。もちろん、ユダヤ系の人のクレジットなしで解放前に封切ってもフランス人には受けたでしょうが、そこは巨額な費用を投じた作品・・・商業的な計算もあって当然でしょう。コメンタリーの全てをここで書くわけにはいきませんが、言葉で語りかけようとする俳優フレデリック以上に雄弁でガランスを救ったバティストの無言劇がヒントです。すばらしい作品だとは思いますが、どうのこうの言ってもやはり、解放後に作られた単刀直入な作品(たとえばHiroshima Mon Amour、邦題は「二十四時間の愛」)のほうがわかりやすいので満点マイナス1点にします。 【かわまり】さん [DVD(字幕)] 9点(2009-02-28 13:22:19) (良:2票) |
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5.《ネタバレ》 ドイツ占領下のパリで3年以上の歳月をかけて作られた3時間半の大作。それだけに見所もそれぞれの登場人物にも多くの見方や見所がある。まずバチストのジャン・ルイ・バローのパントマイムの素晴らしさ。これだけでも感動もんです。美貌のガランスをめぐる男たちは悪党、俳優、伯爵とバチストの4人。みなガランスの愛を求め、求められればそれに答えるガランス。でも真実の愛はバチストのものだった。でも純情で臆病だったバチストとガランスはすれ違い。お互いに愛情を確認したときにはすでに妻子がいて、ガランスは身を引いて去っていく。 妻となったナタリーは本当にバチストを理解し愛していたんだし、みな不幸な心と運命ののすれ違いというしかない。 長いけれど見るうちに話に引き込まれる。それぞれの人物が個性的で興味深いし、セリフは哲学的であったりユーモアがあったりと変化に富んで面白い。劇中劇でパントマイムの無言劇やオセロなどセリフ劇も楽しめる。19世紀のパリの賑わいや人々の群れ、歓楽街を背景に繰り広げられる事件や人間模様は今見ても素晴らしいものがあると思う。 【キリコ】さん 9点(2003-11-01 23:29:55) (良:2票) |
4.《ネタバレ》 「映画に恋をする」という言葉が、喩えでも何でもなく実際に起こり得る現象なのだと教えてくれた、記念すべき一本。
とにかくもう、主人公バティストがパントマイムを駆使してヒロインの無実を証明する場面にて、一気に心を奪われてしまい、そこからは夢心地で最後まで観賞する事が出来ました。
ラスネールがモントレー伯爵を殺害する場面にて、直接その姿をカメラには映し出さず、第三者の反応を映す事によって表現する件なんかも、凄く良かったですね。 長尺の中にも、要所要所でハッとさせられる演出が散りばめられており、全く飽きる事がありません。
観客としての自分は、ガランスよりもナタリーの方に惹かれるものがあり、主人公の行動に全面的に賛成出来た訳ではないのですが、それだけに「人を愛する事」の業の深さについて考えさせられましたね。 あんなに想ってくれる奥さんがいながら、可愛い子供がありながら、それでも不貞を働いてしまうなんて、情けない男だなと思う一方、どうしても「その恋は間違っている」と否定する事が出来ないという。
全編に渡って台詞が洗練されており、何でもない会話シーンだけでも楽しかったりする為、観ているだけで幸せな気持ちに浸れたのですけど…… それだけにラストシーンの訪れには、とうとうこの映画が終わってしまうのか、という寂しさが伴いましたね。 最後の一幕、去りゆくガランスを追いかけるも、決してその声が届かない主人公の姿は、映画が終わる事を否定しようとしても叶わない自分の姿にも重なり合い、とても切ない気持ちになった事を、良く憶えています。
今でも時々、昔の恋を思い出す時のような気持ちで鑑賞し、その度に再び恋してしまう。 そんな映画です。 【ゆき】さん [DVD(字幕)] 10点(2016-04-05 08:34:32) (良:1票) |
3.第一幕、第二幕の二部構成。第一幕は登場人物が一通り出そろったところで終わり、という感じ。幕間の6年間に登場人物たちはそれぞれの道を歩み、第二幕で再び皮肉な再会を果たす。ドラマについては全体的に、ややセリフ過多な印象もありますが(ただし説明セリフに堕することはない)、劇中劇として繰り広げられるパントマイム劇が、それと好対照をなしていて、無言の舞台に引き込まれます。と同時に、セリフ劇にこだわるフレデリックと、パントマイマーのバチストとの対比もそこにはあります。飛び入りのように獅子の着グルミで舞台に立ったフレデリック、おそらくは肉体で客を沸かせる才能の持ち主でもあろうけれど、本人はセリフにこだわり、陳腐な詩を口ずさみ、後に別の劇団でシェイクスピア俳優として成功するけれど、その舞台はなんだかさらに陳腐。その一方、肉体で演じることに関しては雄弁だけど(パントマイムによる目撃証言!)それ以外はひたすら不器用なバチストの存在は、さらに純化されていき、それは周りにも影響を与えていく。映画冒頭の雑踏シーンが圧巻ですが、その雑踏から生まれ出てきたような登場人物たちが、映画を通じてその存在感を明らかにし、互いに複雑な関係で結ばれ、そしてラストでは、その雑踏によって引き裂かれていく。いやはやすごいラストシーンです。……映画中盤、ドラマを断ち切ってしまうような「省略」があり、もう少し描いて欲しかった部分もあるのですが……。 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2014-09-27 09:32:32) (良:1票) |
2.こんだけ金かけて無理して映画作るなよ。大した構想も無いくせにセットだけ先に作って、後から脚本書きながら撮り進めたようなストーリーやったな。テレビドラマか。ってか昼メロか。いちいち細部までツッコムのもだるいわ。展開のためオンリーなガランスの行動は理解に苦しむ。散々苦しみながらも色んな角度から個々のキャラクター探しをしてあげた苦労を無に帰すように連発する歯の浮くようなセリフの数々と、ドンドン安くなっていくストーリー。手がグーになる。途中ちょっとだけ妥協点が見えかけたのよ。パリに戻ったガランスの再登場の時に、ガランスとの恋愛を通じて本物の演劇人として成長した才能豊かなバティスト。ガランスのバティストへの想像を超える想いを聞いたフレデリック。ああ、これでフレデリックも何か新しい価値観を得た事で、豊かに成長して、ああ、演劇と恋愛・・・・・的な感じで進むんやろうなぁ、って。。。それ以下やった。みんなグズグズになっていった。ドンドン昼メロなっていった。ゴールに向けて必死なストーリーの中で、明らかに作らされたナタリーとの間の子供にも安易すぎて驚いたし、恋愛とも展開ともキャラ付けにも関係ないガランスの『貧しさは美しさ』的な発言や、『裕福と愛情は相反する』的な発言がちょいちょい飛び出すのもいちいちイラッとくる。最後の祭りの中を必死でガランスを追うバティストには逆に感動すらした。どんな映画でもこんなシーン入れときゃそれっぽく見えるもんなんやなぁ、恥ずかしげも無くよくやるもんやなぁ、って。それにしても長かった。 胸焼けする。 【ハッシーふりかけ】さん [ビデオ(字幕)] 2点(2006-06-29 05:43:21) (良:1票) |
1.ナチの占領下に巨費を投じて作られたという。これぞまさしくフランスという作品。ナチに占領されたって1人残らずフランス人を殺さない限り、我々はこういう映画を作る、と言う強烈な自己主張を感じた。ジャン・ルイ・バローが気品溢れる演技で、見せる。いま、巧い役者は多いけれど気品のある役者というと、すぐ思いつくのはマギー・スミスくらい。私はもうあの出だしの音楽を聴くだけで胸が熱くなります。何度見たか数え切れません。恋愛1つとっても人の心はどうすることも出来ないのだと思い知らせてくれます。マルセル・カルネ監督の「北ホテル」もいい。 【大木眠魚】さん 10点(2003-05-12 00:02:53) (良:1票) |