4.《ネタバレ》 様々な所で映画史上最高傑作と評価される作品ですが、今まで見る機会が無かったこの作品をこの度映画館で鑑賞する機会に恵まれた。これ程3時間があっという間に過ぎるという感覚を久々に味わうことのできる映画でした。やはりその評価に違わぬ素晴らしい映画でした。ジャン=ルイ・バロー演じるバチストの入魂のパントマイムを自宅の小さなTVではなく映画館で鑑賞できたことは本当に幸せでした。また、本作を紹介する本や資料に必ずと言っていいほど出てくるバチスト、ガランス、フレデリックの3人が舞台にいる絵を見た時にはこのシーンだったのか・・・と感慨深いものがありました。ナチス占領下のフランスで作られたという伝説の名画。冒頭であらぬ容疑で逮捕されかけるところをバチストのパントマイムに助けられて解放されたガランスの「私は自由が大好きなの」という台詞に代表されるように、さりげない形での意思表示が当時としては精一杯のナチスへの反抗だったのでしょう。そんなさりげなく見せる意思表示やラストシーンのカーニバルに至るまで活気にあふれる街と天井桟敷の人々の生き生きとした描写などの中に祖国フランスとそこに暮らす人々と自由を讃える思いが確かに伝わってきます。 【とらや】さん [映画館(字幕)] 9点(2009-09-16 01:11:34) (良:3票) |
3.《ネタバレ》 この映画が何故名作と言われているのか解る。映画への愛に満ち溢れている。映画を撮るんだ。映画を製作するんだという情熱、思いが伝わってくる。この映画は当時、フランスはドイツの占領下にあった。暗く沈みがちなフランス人の為にフランスの監督が同じフランス人を映画という武器を持って喜ばせたい。楽しんでもらいたいという願いで撮られている。自由への叫び、それはパントマイムという形でしか表現出来ない時のバティストと素顔でのバティストとの両面を描きながら本当の自由とは何か?愛とは何か?というものを見せてくれている。芸人であるが故に、それもパントマイム芸人であるが故に声には出せない苦しみ、一方でパントマイム芸人ではない時に見せる姿が本当の意味でのバティストであるように人は自分の気持ちというものは心の中にいつまでも隠しておくことなどは出来ない。全てを騙して生きることの辛さ、それはバティストだけではなく、お互い愛しながらも一緒にはなれなかったバティストとガランス、ガランス同様、バティストの事を心から愛していたナタリーの苦しみ、別の男と結婚し、男の子が生まれ、その子供にバティストと名付けた事がナタリーの気持ちをよく表しているし、最後に群集の中に消えて行く(去っていく)ガランスの名を呼び続けるバティストの心の叫び、色んな意味でこの映画は男と女の本心、それを全て隠さずに描ききっている作品として素晴らしい人間ドラマである。午前十時の映画祭で観るまでずっと観ないでいた作品である。大きなスクリーンで観て来て良かった。あれだけのスケール感、よく占領下に置かれている厳しい立場であるにも関わらずこれだけのものを撮ったと感心させられた。この映画がフランス人に与えた勇気、希望は我々日本人には想像つかないぐらい計り知れないであろう。 【青観】さん [映画館(字幕)] 9点(2011-09-10 21:57:17) (良:2票) |
2.邦題から貴族のお話しかと思ったらさにあらず。Disk2を先に見るというまぬけな不運のためにDisk2を見ているあいだ中、ガランスは貴族か金持ちで俳優のバティストとの身分違いの恋の悲劇だと思っていた馬鹿さかげん・・・。でも、Disk1の冒頭でガランスの正体はあきらかで、しかもコメンタリーつきの版が借りられたのでドジを補って余りある収穫がありました。高得点をつけた人でも昼メロ風とおっしゃっていますが、この作品はそんな甘いものではありません。ナチス当局の検閲をかいくぐり、かいくぐり・・・スタッフの一人がユダヤ系だったせいもあり、製作者一同、英仏連合軍の進行状況を見ながら、「この頃にフランスは解放される。」と予測された頃にユダヤ系スタッフの名前をクレジットに入れて封切ることに決めたそうです。フランス人(被占領者)にしかわからない抵抗のメッセージを占領者のナチスの検閲官にはわからないようにオブラートに包んでメロドラマにしたわけです。もちろん、ユダヤ系の人のクレジットなしで解放前に封切ってもフランス人には受けたでしょうが、そこは巨額な費用を投じた作品・・・商業的な計算もあって当然でしょう。コメンタリーの全てをここで書くわけにはいきませんが、言葉で語りかけようとする俳優フレデリック以上に雄弁でガランスを救ったバティストの無言劇がヒントです。すばらしい作品だとは思いますが、どうのこうの言ってもやはり、解放後に作られた単刀直入な作品(たとえばHiroshima Mon Amour、邦題は「二十四時間の愛」)のほうがわかりやすいので満点マイナス1点にします。 【かわまり】さん [DVD(字幕)] 9点(2009-02-28 13:22:19) (良:2票) |
1.《ネタバレ》 ドイツ占領下のパリで3年以上の歳月をかけて作られた3時間半の大作。それだけに見所もそれぞれの登場人物にも多くの見方や見所がある。まずバチストのジャン・ルイ・バローのパントマイムの素晴らしさ。これだけでも感動もんです。美貌のガランスをめぐる男たちは悪党、俳優、伯爵とバチストの4人。みなガランスの愛を求め、求められればそれに答えるガランス。でも真実の愛はバチストのものだった。でも純情で臆病だったバチストとガランスはすれ違い。お互いに愛情を確認したときにはすでに妻子がいて、ガランスは身を引いて去っていく。 妻となったナタリーは本当にバチストを理解し愛していたんだし、みな不幸な心と運命ののすれ違いというしかない。 長いけれど見るうちに話に引き込まれる。それぞれの人物が個性的で興味深いし、セリフは哲学的であったりユーモアがあったりと変化に富んで面白い。劇中劇でパントマイムの無言劇やオセロなどセリフ劇も楽しめる。19世紀のパリの賑わいや人々の群れ、歓楽街を背景に繰り広げられる事件や人間模様は今見ても素晴らしいものがあると思う。 【キリコ】さん 9点(2003-11-01 23:29:55) (良:2票) |