《改行表示》 7.バビロンの巨大セットで繰り広げられる戦闘シーンに目が行きがちになるが、それよりも“人間の悪意”について探求したグリフィス入魂の熱いメッセージを称えるべきであろう。 死刑制度を題材とした現代の物語・宗教間でのもめ事(バビロン、ヨーロッパ)・キリストの物語・・・、と、過去におこった悲劇を題材にすることで“人間の愚かさ”を浮き彫りにし、現在も続く悲しい行為(イラク戦争など)、なぜ人間は愚かな行為に走るのか? その原因の源を“不寛容”という言葉に集約した、哲学的な作品である。 “寛容でない”“許さない”・・・。 かつて、キリストが台頭してきた時、その奇跡を起こす力を妬んだユダヤ人宗教者はローマ帝国に彼を売った。キリストの存在を“許さなかった”のだ。ローマ帝国も彼の行為を“許さなかった”。つまり“寛容でなかった”のである。しかし、キリストは十字架に貼り付けられ絶命する間際、「神よ彼らを許したまえ」と言い残す。つまり、キリストは自らを欺いたユダヤ人宗教者ならびに、不当な拷問を強いたローマ人を“許した”のである。“寛容であった”のです。 これを安っぽい偽善ととるか、教訓とするかで意見は分かれると思うが、つまりは『人間の許さない心(不寛容)が悪の根源』なのだということをこの作品は強く語っている。 その他のエピソードも、それぞれ統一したテーマで描かれていて「これでもか!」と言わんばかりに(しつこいぐらい)“イントレランス”を語っている。決して難しい作品ではないはずです。 【おはようジングル】さん [映画館(字幕)] 10点(2004-05-26 00:20:18) (良:2票) |
6.イントレランスとは「不寛容」という意味です。「寛容」を広辞苑で引きますと、2番目に「他人の罪過を厳しく責めないというキリスト教の重要な徳目」とあります。つまり、その反対の意味ですね。物語は4つの時代と舞台を自由に飛びまわり、人間の不寛容がもたらす悲劇を描き出します(間をつなぐ赤ん坊の揺りかごは、寛容の対象を象徴しているのでしょうか)。4つの話が並行して進むので、序盤はけっこう退屈ですが、バビロンの戦闘シーンに入ってからは、息をつく暇がありません。ため息が出るほどの壮大なセット、凄惨な戦の描写。また現代編のクライマックスが、それに負けていないのがすごい。しかもこんな傑作が、映画の発明からわずか20年で誕生したとは!まさに奇跡といっていいでしょう。 【円盤人】さん 10点(2004-02-21 19:19:26) (良:2票) |
《改行表示》 5.ネタバレ 百年以上前の映画なので、当然ながら見る前は、有名だけれどもきっと古臭い映画なんだろうと推測していました。 そしてやはり、出だしはあまりの面白くなさに辛さを感じます。しかしやがて訪れるダイナミックなバビロンの攻城戦。これは素晴らしい。 終盤にかけて4つの時代が同時並行で畳み掛けて来るクライマックス。圧巻である。賞賛されるわけだ。 見れてよかった。見なきゃ損です。 【ほとはら】さん [インターネット(字幕)] 10点(2022-03-16 20:35:44) (良:1票) |
《改行表示》 4.ネタバレ 本作品は、当時、フランス戦線が始まっていた第一次世界大戦を想定した反戦映画として位置づけられる。その意図はラストシーンで挿入される現代の戦争シーンでも分かるだろう。バビロン陥落とサン・バルテルミの虐殺劇は、それぞれ、大量虐殺の象徴としての戦争の実態を表している。そして、各々の戦争の経緯と共に、ある女性と青年に焦点を当てた悲恋のストーリーが同時に語られるのであるが、彼女らは戦争という歴史の犠牲者として、最後には殺戮されてしまう。(バビロンでは、山ガールと詩人、フランスでは、ブラウンアイズと傭兵がそれに当たる) 新約から引用されるイエスのシーンは、本作を構成する物語というよりも、「不寛容」の象徴としてある。イエスこそは、人間に対する「不寛容」を一身に背負って磔刑となったキリストなのだと。 3つの歴史の物語が「不寛容」な結末を迎え、現代篇が最後に残る。青年は無実にも関わらず裁判で死刑の判決を受ける。彼の可愛い妻は彼を助けようと懸命に奔走する。目まぐるしく入れ替わる展開はスピード感に溢れ、僕らは手に汗を握り、画面にくぎ付けとなる。(ラストの列車追跡シーンは本当に素晴らしい) そして、青年の運命は如何に。。。その伏線がバビロンとフランスの2つ悲恋物語にある。 162分に及ぶ長大で矮小な物語。それは僕らに「不在の神」という概念を思い起こさせる。「不寛容」とは、創世の後、自ら退いた神の人間に対する基本的な態度であり、イエスが自らの死と引き換えに人間に託した教え、「キリスト教」が人々に必要とされる由来でもある。イエスの教えとは、人の人に対する「寛容」であり、隣人愛なのだから。 中世のキリスト教より、サン・バルテルミの虐殺に繋がる宗教戦争という歴史の悲劇。しかし、グリフィスは、そこに男女の矮小な純愛を対峙させることで、全くの個人を出発点とした「寛容」を説いてみせる。そのバックグランドには、バビロンの山ガールと詩人、フランスのブラウンアイズと傭兵、彼らの愛と死があって、そして、イエスがいる。この物語はそういう物語としてあるのだと僕は思う。 いろいろな意味で映画の可能性を問うた作品であり、壮大なる反戦映画。その意義が映画史に燦然と輝く、と同時に、僕らのイマジネーションを掻き立てる素晴らしい映像世界であった。 【onomichi】さん [DVD(字幕)] 10点(2012-05-16 00:23:46) (笑:1票) |
《改行表示》 3.「“映画の父”D・W・グリフィスの代表作という枠にとどまらず、サイレント映画、いや全映画の中でも避けて通るわけにはいかない歴史的傑作。」ということで、鑑賞することに決めた。 180分(実際は160分ちょいだった)ということと、4つの時代が平行して描かれる難解なプロットであることと、古い時代のサイレント映画という点から、かなりの決心が要った。 しかしながら、予想していたよりもすんなり作品に入っていくことができた。 そして何より、普通に楽しめたのが意外だった。 4つの時代が平行して描かれているとのことだったが、そのうち<バビロン篇>と<現代篇>しか、しっかりとは把握することができなかった。 その他の2篇は、最後の最後でやっと話を理解できた感じ。 逆に言えば、それだけ<バビロン篇>と<現代篇>に時間が割かれているわけである。 ちなみに、この作品の最大の見所は<バビロン篇>の“超巨大セットによる空中庭園”である。 正直、この巨大セットを観たくて、この作品を借りたようなもんだ。 映画通の批評を調べてみると、“現代のCGをもってしても、この巨大セットの大迫力に勝るものは創れないであろう”という意見が多かった。 そういうわけでドキドキしながら、観ていたのだが・・・ あまりにも凄すぎた・・・ というのが、率直な感想。 荘厳な音楽(この作品に付けられた音楽は、総じてかっこよかった)と共に、悠然と空中庭園が登場。 “俯瞰ショット”により、遠目から丁寧にその全貌を捉えていく。 わけのわからない、やたらに巨大な“像”が何個も庭園の中に建てられている。 そして、ことわるごとに、“この庭園は1辺が1.6KMある”とかいう、その巨大さを過剰なまでにアピールする字幕が挿入される。 この巨大さをアピールする字幕のしつこさも、なかなか笑えるポイントであり、この作品の肝でもある。 CGと違って、そこに実際あるものを撮っているという事実に基づく迫力は凄いの一言。 まさしく圧巻である。 私の様な好奇心旺盛な人間にとっては、大満足できる作品であった。 このセットを観れるだけでも、この“歴史的大作”を観る価値は十分あると思われる。 好奇心旺盛な方は、是非、ご覧になって下さい。 ただし、90年前の作品ですので、多少は体力を使いますが・・・ 【にじばぶ】さん [DVD(字幕)] 6点(2007-09-01 21:48:02) (良:1票) |
2.ネタバレ 当時、大阪城ホールで「フルオーケストラ&合唱付き」で見ましたが、そのあまりの長さに腰が痛くなった(でも座った場所は貴賓席だったのでちょっとマシだった:笑)&映画としては当時破格の8500円(だったかな?)だった&パンフレットが異常に高かった事を除き、作品としては言う事無し!当時人気女優だったリリアン・ギシュは出てるわ、戦前であれだけのスケールのものを作れるって・・・凄過ぎる!の一言です。特に印象に残ってるのは「サン・バルテルミーの大虐殺」。人が人を許せない、と言う事が結果的には悲劇しか生まない、と言う事を歴史的に証明してるし、映画のタイトルでもある「不寛容」が、現代も続いていると言う事を、当時二十歳そこそこだった与太者の私に考えさせた作品でした。 【グリフィス】さん 8点(2003-08-24 01:47:20) (良:1票) |
1.う~ん、皆さんの評価が高い!昔ヤングジャンプに連載されていた『栄光なき天才たち』という漫画にグリフィスが登場していました。その最高傑作ということで見ました。しかし……。よくわからなかったなぁ。浅薄な映画ファンでは太刀打ちできない映画だと思います。ただ、映画史上に残る記念碑的作品ということで、見てもいいとは思います。平均点下げてごめんなさい。 【きゃら】さん 4点(2003-05-22 23:22:03) (良:1票) |