8.13歳って、ちっとも楽しい年齢じゃないんだよね。自分の劣等感に悩んだり、漠然とした不安を抱えていたりする。はやく大人になりたくて、大人になりさえすればどうにかなると思っている。でも実際大人になってしまうと、子どもの頃のそういう微妙な感情を忘れて、13歳はハッピーな年齢だと懐古してしまうんだな。だからふてくされている子どもに向かって「どうしてお前はそんななんだ!」と怒ってしまうんだな。そういう判ってない大人の姿がイタかったなぁ。でもこの要領が悪過ぎる13歳の少年もまた、狂おしいくらいイタいんだな。そういうえぐられるような感情のゆさぶりを与えてくれる映画なのにどこか淡々としていて、最期もまるで通りすがりの風景みたいにあっさり自然。いつの時代の少年にとっても、名画でありつづける作品だと思う。 【ともとも】さん 9点(2004-12-29 14:32:16) (良:3票) |
7.人形劇を見る子供達の表情が素晴らしい。演技ではなく、子供が劇を見ている実際の映像である。この子達も成長するにつれ、大人が作った管理社会に、素直に溶け込んでいく子と、主人公のようにはみ出していく子に分かれていく。個を大切にしたほうである、フランスでもこんな感じだったのか。最後の海へ向かって走る映像が胸にしみる。すんなりと溶け込んでいった者には退屈な作品なのだろうが、少しでも、挫折を覚えた者にとっては、切ないくらい理解できる感覚だ。 【パセリセージ】さん 8点(2004-10-24 21:57:13) (良:3票) |
6.《ネタバレ》 アントワーヌの姿に自分を置き換えて見ることができました。この映画は反抗期を迎えた少年とその少年の行動を理解しきれない大人たちの姿をどことなく曖昧なリアリティをもたせて描いた作品だと思います。題名とあらすじからもうちょっと極端な話かと思えば、実際にはドキュメンタリーとしても見られる作風でした。主人公のアントワーヌは中高生の不良少年の典型と比べてもそれほど悪い少年ではありません。家に帰れば、食事の準備もし、宿題もやろうとはします。友人と学校をサボった後も、「次の日は学校に行く」と言うほどの真面目な面も残っています。ただ、周りの大人が彼を悪い見方でしか捉えないだけなのです。学校の先生は彼がイタズラをしてもただ体罰を与えるだけです。アントワーヌが完全にすくいようのない子供でなかったのと同様に、周囲の大人も父親など悪い人ばかりではないのですが、彼を理解しようとする一方で分かり合おうとする時間が取れないのです。そんな彼を理解するのはやはりルネや感化院の子どもたちだけでした。彼はそんな世界から何とか抜け出そうと何度も家出を試み、最後に成功したとき彼は憧れの海辺を前にわずかな希望を得る、と言う見方ができると思います。母親の中盤での豹変振りは理解に苦しむところでしたが、感化院での様子を見て彼女はやさしく接していれば問題は起こらないだろうという安直な考えを持っていたのだろうと思いました。それと見ている最中に当時のフランスの色々な事がわかりました。それにしても感化院まで少年に体罰を与えるなんて・・・ 再犯に走る少年はどれくらいいたのでしょうか? 【マイカルシネマ】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2004-11-10 18:32:23) (良:2票) |
5.《ネタバレ》 愛情を渇望する十二歳の少年が非行に走り、両親の愛を失うという喪失の物語。 少年は一人っ子で、両親は共働き。母親は子を産みたくなかったが、産んで祖母に預けていた。父親は継父。夫婦仲は悪く、少年はしばしば二人の諍いを聞きながら眠りにつく。 書くことは他者との重要な伝達手段だが、少年はこの能力に欠けている。試験の場面から物語が始まる。少年は成績が悪い。運悪く廻って来たグラビアが先生に見つかり、立たされる。その不平を壁に書くと、文法がでたらめとなじられる。文法の宿題ができなかったので、学校をずる休みすると、それがばれて父親から大喝される。母親から作文の成績が良ければ小遣をあげると言われて気張るが、文豪の文章を剽窃してしまい、先生から批判され、これが家出の契機となる。食うためにタイプライターを盗んで少年鑑別所送りとなる。父親に酷い手紙を書いて愛想を尽かされ、遂に母親からも見捨てられる。 孤立無援となった少年は鑑別所を脱走する。少年は家庭や学校では居場所が無く存在感が薄いが、外では生き生きとしている。向った先は母なる海。そこには建物でごった返した都会と違い、自由に開かれた茫漠たる空間がある。自由にあこがれて海に辿りついた少年だが、同時に母親の愛も渇望している。「母が死んだ」という嘘は、母への愛情の裏返しだ。タイプライターを盗みに入ったのは父親の会社で、これは無意識にわざと捕まって問題を顕現化させ、両親との関係を修復しよういう心理が隠されている。 海に出たものの自由は扱いづらいく、手に余り、途方に暮れるしかない。まだまだ親の庇護を必要とする年齢だ。やがて目線は写真機の先にある観客に向けられる。観客は、少年と子供の頃の自分とが重なり、動悸が激しくなるのである。 本作での母親の愛情は「条件付き」だ。「云う事を聞けば」「成績がよければ」愛するのである。それでは本当に愛していることにはならない。少年は母親を嫌悪しているのではなく、よい子になりたいと願うし、不倫にも寛大で、性的魅力も感じている。少年が中年女の出産談を聞いて気分が悪くなるのは、自分の出生に負い目を感じているからだ。自分が生まれて母親を不幸にしたいう罪悪感がある。複雑なのだ。そんな思春期の少年の複雑な心の揺れをみずみずしい感性で描いた作品である。少年は完全に孤独ではなく、無二の親友ルネがいるのが救いだ。 【よしのぶ】さん [DVD(字幕)] 7点(2014-12-08 16:38:18) (良:1票) |
4.3年前に鑑賞した時はいまいち良さがわからなかったのですが、2度目の鑑賞となる今回は楽しめました。親に認めてもらいたい、優しくしてもらいたいと思いながらも、良い生徒・いい子どもであることは出来ないドワネルの辛さに共感し、ドワネルをちっとも愛さない母親、理不尽な教師に嫌悪感を抱き……。本作の魅力にどっぷりと浸かってしまいました。 【カニばさみ】さん [映画館(字幕)] 6点(2014-02-16 15:16:16) |
3.私はマニアではありませんが、好きだ~という思い込みだけでトリュフォーファンを勝手に自称しております(一応全作品観ている数少ない監督の1人)。彼の作品に愛着を持ち、自分の中で大切にしているような多くの方々からお前なんぞにトリュフォーを語ってもらいたくねえよ・・と言われそうな気がして怖いですが(自意識過剰の被害妄想)、やっぱり好きなので勇気を出してこれから気まぐれにぼちぼちレビューしていきたいと思います。さて、私が最初に観たトリュフォー作品が本作ですが、学生時代の初見では正直退屈でした。ただ、ラストシーンはとても美しく感じられ印象的でした。正しいファンはドワネル君に自らを重ね、少年の心が痛いくらい判るのでしょうが、私は日本で恵まれて育ちましたし、家族の愛らしきものにも不自由してない良い子ちゃんだったのであまり判りません。判る気はするけどきっと判ってないでしょうし、判ると言うのは恥ずかしい。いまだに大人じゃないガキなんだけど・・。あの境遇を他人事と思えない人にとっては本作は凄まじいくらいに痛切なのでは?と想像することしかできません。私は、邪道かもしれませんが、「ドワネルもの」の一部として、そしてトリュフォーの人生の一部として本作を評価したいと思います。たしかに映画は純粋にそれぞれ一つの作品として評価すべきかもしれませんが、いったん彼の作品を通して鑑賞し、彼の人生についての知識を解説本などで多少なりともかじれば、彼という人間と作品を切り離して考えることは不可能になります。いわば魂の全力投球とでもいうような彼の人生が乗り移った映画たちは、所詮他人事ですが人間臭さやリアリティが半端じゃありません。「ドワネルもの」を全て見た後に本作のあの海岸シーンを想像すれば胸が締めつけられるような感慨を覚えること必至です。本作は作品単体としては好みじゃありません。トリュフォー他作品の偏執的な狂おしいほどの異形の愛、醜く恥ずかしい自己愛(そして脚フェチ)などといったモチーフには自分を思いっきり重ねられるんですが・・・このレビューで私の恥ずかしい思い入れだけは伝わったでしょうか?。 【しったか偽善者】さん [映画館(字幕)] 7点(2008-06-12 02:16:54) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 長崎で催されていたフランソワ・トリュフォー映画祭で観る機会に恵まれた。「やったのには子供なりの理由があったのだけれども、言葉ではうまく説明できず、結局怒られるしかなかった」誰もがそんな経験を持っているだろう。大人がどんなに枠にはめようとしても、子供の有り余るエネルギーは留まるところを知らない。しかしたとえどんなに手に余っても、彼らしか知らない視点が在るのだから大人は子供を決して見放してはいけないのだと思った。自分の浮気そっちのけで子供の素行を避難し鑑別所送りにし、挙げ句に見放したあの母親は、ボヤの一件以来、やたらと愛情表現が大きい。しかし作中の一番楽しげな映画のシーンでも、彼女にはまるで浮気がばれたその穴埋めに子供の機嫌をとっているような偽善的なものが感じられてならなかった。決してハッピーエンドではないけれど、最後の少年の表情は哀しくもどこか強さを感じさせる。なんとも飾り気がなく、どこかコミカルで、常に淡々とした哀愁が漂う映画。「大人は判ってくれない」このタイトルは実に的確だ。 【six-coin】さん 6点(2004-09-20 00:37:41) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 フランソワ・トリュフォーの「映画的人生」を飾る輝かしきデビュー作である。なのに、冒頭車の中から撮られたであろうエッフェル塔のクローズ・アップに“Francois Truffaut”と監督の名がクレジットされるのを観るだけで、なんだか胸が一杯になる。そして、アントワーヌ・ドワネル少年の、家族で映画を観に行った帰りの車の中でのいつになくはしゃいでいる表情と、親に見捨てられ鑑別所送りとなる護送車の窓から生まれ育ったパリの街の灯が過ぎ去って行くのを見つめる淋しげな表情、さらには、鑑別所からもひとり脱走し疾走の果てにたどり着いた浜辺に立ち尽くす時に見せる凍て付いた表情を、私は決して忘れることができない。 【なるせたろう】さん 10点(2003-05-13 17:44:21) (良:1票) |