5.《ネタバレ》 八甲田山という映画がある事は以前から知っていましたが、シベリア遠征のための訓練の話だとは知りませんでした。 確かに苛酷であるのは容易に見てとれるのですが、訓練の話となるとどうしても面白さを割り引かざるを得ないという気がしてきます。 映画の序盤で、これから過酷な地に向かうという事もあり、その前フリがあらゆる場面にちりばめて出てくるのが映画を盛り上げるのに生きていたように思えました(若干演出過剰気味ですが)。 まず、トップの人間から困難な任務であることを聞かされたり、麓の村民からも無理だと諭されたり、また、神田大尉の奥さんに食事を日程分よりも多く入れておいてくれという台詞からは彼が内に秘めている悪い予感が的中することを暗示させていたりして、入山前から並々ならぬ緊張感を漂わせていて実に面白いです。 更に、山田少佐が村民に対し案内は要らんと拒否する一連のシークエンスの間、神田大尉の背中を映し続けるカメラが彼の受ける絶望感や悲壮感を静かに炙り出していて、ここが自分にとってこの映画の中で一番好きなシーンです。 映画のほとんどが雪の中での過酷な状況である中でも、ひときわ群を抜くのが雪崩のシーン。人工的に作り出したのだとしても、ここは本当に命懸けであっただろうし、更には、物語の中で夜を越す場面ではテントも張らずにただ雪洞を掘ってそこで立って寝るだけというのが、昔の人は凄いなぁとこの映画で一番驚かされたところです。 【もっつぁれら】さん [映画館(邦画)] 7点(2014-11-15 22:02:23) (良:2票) |
4.《ネタバレ》 まず始めによく撮ったな!て思うほどの凄さを感じずにはいられない。この時代だからこそ撮れた映画だ。何と言っても俳優の力量が今とはまるで違う程の凄い本物の映画俳優と言える顔ぶれが沢山です。高倉健と北大路欣也との対比の描き方、北大路欣也の神田大尉のリーダーとしての資質の弱さがよく現れる「天は我々を見放した」に応える様に次々と雪の中倒れて行く人達、一方で高倉健の徳島大尉のリーダーとしての資質の強さがもたらす人間としての強さが自分と自分に着いてくる人達を助けることになる。そしてもう一人忘れてはならない三国連太郎の山田少佐の自らの過ちを認める場面は今の日本人、特に政治家に大きく欠けているように思えてならない。これはそんな偉そうな大人達に自分さえ良ければ他人はどうなっても構わないという考え方しか持てない人間に見せるべき映画だ。全体的に長く感じる上に画面全体暗過ぎる難点があるが人間とは何か?命とは何か?を大いに考えさせられ映画として、面白いつまらないは別として一度は見て損のない映画だ。 【青観】さん [DVD(邦画)] 7点(2013-12-23 14:04:38) (良:2票) |
3.《ネタバレ》 橋本忍脚本にアクションを加えたらどうなるか? もうそれだけで、一見の価値がある。
見事なリーダー論になってる。 二つの隊が、雪の中の行進をする。 それぞれの隊のリーダーの在り方で命運が変わる、と言ってもいいくらいの違いがある。 吹雪の中、あと2キロの目的地に行くか行かないか、土地に詳しい案内を頼むか頼まないか・・等々
中盤、北大路欣也の部隊が全滅したあと、高倉健の部隊が進むかどうか、 軍本部は中止させたいが、連絡方法がない、というとこは、もっと見せ場にできたと思う。 ラスト、生き残った部隊が、日露戦争で全滅したという説明書きが出て、鑑賞後、凹んだ。 (実話ですよね。簡単にコメント言えない)
木村大作の撮影が見事!さすが日本を代表するカメラスタッフ! 【トント】さん [DVD(邦画)] 7点(2024-04-07 21:10:13) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 高倉健、北大路欣也など往年の名優たちが出演する超豪華な映画。自然の美しさと恐ろしさを肌で感じさせるような作品。その中において、人は時々対比的に愚かな判断をしてしまうことがある。夏に八甲田に行った後、興味を持って見たんだけど、もう一度八甲田に行ってみたくなった。あと、高倉健はカッコ良いんだなと、恥ずかしながら今更気がついた。 【lalala】さん [ブルーレイ(邦画)] 7点(2018-12-09 19:35:23) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 かなり久しぶりの再見。昔見てすごく面白かった映画だが、さすがに今見ると冗長に感じるかもと思いながら見始めたのだが、やはり雪中行軍が始まったあたりから見入ってしまい、真冬の雪山の怖さというものがすごくリアリティーを持って描かれているし、それに対する人間の無知や無力さも(とくに三國連太郎演じる山田少佐を通して)よく描かれていて見ごたえのじゅうぶんある映画になっていると思う。山田少佐に指揮権を奪われた神田(北大路欣也)隊が遭難して白い地獄を右往左往するのに対して、入念な計画のもとに実行した徳島(高倉健)隊が特に何事もなく進むのが対比的に描かれていて面白く、それぞれのリーダーの在り方一つで命運を分けるということもちゃんと描かれていて、リーダーとは何かを考えさせられる映画にもなっていて、それが以前に見た時には気づかなかった本作の面白さの一つだろう。公開当時はサラリーマンに人気があったと聞くが、山田少佐に振り回される神田大尉が見ていてだんだんと哀れに思えてきてそのあたりも納得。徳島大尉と神田大尉の友情・交流を序盤で描いているので、二つの部隊が八甲田山ですれ違うのを神田大尉が楽しみにしているという部分にドラマが生まれ、だからこそ、神田大尉の遺体を前にした徳島大尉の前に神田大尉の幻が現れ、語り掛けるシーンと、棺に入った神田大尉に徳島大尉が会う終盤のシーンはグッとくるものがあり、泣けてしまう。またこのシーンでは一緒にいる神田大尉の妻(栗原小巻)が徳島大尉にかける言葉も良かった。「日本沈没」でもコンビを組んでいる森谷司郎監督と脚本の橋本忍はともに黒澤明監督に携わっていた人だが、本作の男臭さやリアリティある描写はやはりその影響も感じられるものになっている気がする。木村大作(この人も黒澤明監督の映画で撮影助手をしていた。)が初めて撮影を担当した高倉健の映画でもあるが、雪山での撮影も見事で、木村大作=雪というイメージで語られることが多いけど、そのイメージは本作で決定づけられたのではないかと思わずにはいられない。芥川也寸志の音楽もやっぱりいいなあ。(2024年8月18日更新) 【イニシャルK】さん [DVD(邦画)] 7点(2005-03-22 17:30:37) (良:1票) |