15.《ネタバレ》 今さらながら初見。数ある高倉健主演作の中で、これがベストかなと。ドキュメンタリーと見紛うような過酷なシーンの数々もさることながら、やはり組織論・リーダー論として秀逸です。最後まで隊列も士気も乱さない少数精鋭の高倉隊と、いつの間にか隊列も指揮系統もバラバラになって壊滅していく大所帯の北大路隊の対比が、痛々しいほどに伝わってきます。それに、崩壊の元凶となる三國の描き方も見事。現場の知識や経験もないのにメンツや職位にこだわり、場当たり的な提言に翻弄され、結局組織を崩壊に導くような人物は、明治の八甲田のみならず、平成の企業組織にもいる気がします。ただし大きく違うのは、責任の取り方。三國はさすがに明治の軍人らしく、潔く自らの非を認めました。それに対して平成の団塊オヤジは「部下が無能だった。オレは被害者だ」とか平然と言い放ちそうですよね。 【眉山】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2013-10-12 21:06:52) (良:3票) |
14.《ネタバレ》 近年では新資料の発掘により高倉健が演じた徳島大尉=福島大尉の傲慢ぶりやその雪中行軍での実像が明らかにされていますが、原作の『八甲田山 死の彷徨』はあくまで(当時判明していた)史実をもとにしたフィクションであり、割り切って観るのが正解です。それでもこの原作を映像化したプロジェクトは、日本映画界の偉業というか狂いっぷりとして永く語り継がれてゆくことでしょう。だいたい、真冬の八甲田山であの豪雪の中ロケを敢行するというムチャっぷりがぶっ飛んでます。これはヴェルナー・ヘルツォ―クの『アギーレ/神の怒り』や『フィツカラルド』に匹敵する映画的暴挙とも言えるんじゃないでしょうか。CGなんかもちろん存在していなかった時代、あの腰まで埋まる積雪や暴風雪、雪がこびりついた軍服や軍帽のひさしから垂れる氷柱まですべて本物なんですからねえ。特に息を飲むのは雪崩に巻き込まれるシーン、実際にダイナマイトを使って起こした雪崩は想定を超えた規模になり、撮影現場で見ていた橋本忍は「こりゃ死人がでたぞ、これでこの映画は終わりだ…」と戦いたそうです。俳優やエキストラたちも過酷な扱いになり、褌一丁で雪の中で転げまわさせられたりしてこれだけでも重病人が出そうな撮影です。神田隊の隊列を鳥瞰で見せるカットからはその人数は史実通り200人超の様であり、普通の映画よりはるかに少人数だとは言ってもエキストラの確保は苦労したでしょう。某角川映画にエキストラ参加した経験がある自分としては、エキストラの半分が逃げたというのは実感できます。でも屋外ロケはほとんどが雪原であり、照明が使えないうえに雪が光を乱反射してしまうからフードを被った俳優たちの顔は昼間でもほとんど識別不可能、声で判断するしかないってのは苦しいところです。もっとも加山雄三だけは、あの独特の太い声と大根なセリフ回しのおかげですぐ判りますけどね(笑)。有名な「天は我々を見放した~」というセリフは史実に基づいているそうですが、たしかに部下の前で隊長が言ってはいけませんね。それよりも、徳島大尉=高倉健が道案内してくれた秋吉久美子に「案内人どのに向かって、かしら右!」と号令をかけるところの方が心打たれました、もちろんフィクションですけど。あと忘れてはいけないのはこの映画のテーマソングにすら思える軍歌『雪の進軍』、名曲です。 印象に残ったのは、地元青森出身の兵士が言う「あいつらは宮城や岩手の人間だから雪の本当の怖さを知んねえ」という言葉、雪国育ちではない自分にとっては宮城も岩手も冬は雪が多いところというイメージですが、青森から見たら全然違うってことなんでしょうね。でも確かに地図を見てみれば青森周辺は本州の中でももっとも太平洋と日本海が近接している地域で、この地理的要因がもたらす自然の猛威は軽く見てはいけないんですね。 【S&S】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2022-02-13 22:48:57) (良:2票) |
《改行表示》 13.《ネタバレ》 上に立つ者が無能だとどうなるか。 三国連太郎の大隊長は絵に描いたような悪者ですが、 北大路欣也の中隊長だって何で抵抗しないのですか。 「ただの付き添いだから」と了解して付いてきたのに何度も口を出されて、「現場の指揮権は私にあります」と何で言えないのですか。悔しい思いで見ていました。 逆らえない「空気」。 現実のその後の大敗北にまっすぐつながるような気がします。 対比的に描かれているのが弘前から出発した高倉健の中隊長。 秋吉久美子演じる案内人の村娘が役目を終えて隊を離脱するとき、無表情な中隊長はそのまま見送るのかと思いきや「案内人どのにたいし、捧げ、筒!」一同で最大限の敬礼をします。 ここなんですよね。 wikiをよむと史実とはだいぶん違うようですが、集団となった日本人のいけないところがくっきりと描かれている良作です。 2時間以上の大作でこれでもかと兵士たちが狂い倒れていくのを見続けるのはつらかったのですが、よくもまあこんな雪中ロケを敢行した製作陣の熱意に頭が下がります。大滝秀治、緒形拳、前田吟、東野英心ら脇役も好演。 9点啓上。 【pige】さん [DVD(邦画)] 9点(2020-01-14 07:35:32) (良:2票) |
《改行表示》 12.《ネタバレ》 この映画は、封切り当時、雪山の恐ろしさを私に伝えたい父に連れられて映画館で見ました。当時の私は小学校の高学年でした。以下、当時の感想を、他のレビュアーの皆さんの感想も絡めながら書きます。まず、大画面で見たからでしょうか、雪山での登場人物の顔は、概ね区別できました。青森5連隊と弘前31連隊の場面上の区別にあたっては、「31連隊は、少人数で耳当てをし、歩くときに小声で数を数える」を手掛かりにしました。そしてどんなに努力しても立ちはだかる山・木々・崖・吹雪の夜…という出口の見えない5連隊の場面展開には「絶望」を感じました。また「我々には磁石がある」と道案内を断ったことに端を発する大隊長の態度が事態を悪化させたことは、「組織論」を知らない子供の私でもわかりました。そして「5連隊の人達には一人でも多く助かってほしい。神田大尉は、徳島大尉と再会してほしい」と祈るように見ていたため、全く眠くなりませんでした。徳島大尉の子供時代の回想シーンも印象的でした。私の父も自分の故郷の山や川を自分の原点としていつも語っていたため「つらく苦しいとき、子供時代の故郷の思い出が、生きる力になるんだ」と子供心に思ったものです。このように大画面に没入していたため、遺体安置所で神田大尉の奥さんが「徳島様とお会いできるのだけを楽しみにしていました」と語った瞬間、私は生まれて初めて、映画・TVドラマで涙を流したのでした…。このように、小学生をも感動させる力が、この映画にはあったのです。 その後、年齢を重ねながらTV放映を見るたび、スタッフの皆さんや、実はオールスターキャストだった俳優さん達の、並々ならぬ情熱・苦労・忍耐にも思いを巡らせるようになりました。ただし、最近、DVD(特別愛蔵版)で見たときには、雪山での登場人物の顔が黒くつぶれてしまって違和感がありました。同時収録の予告編での顔はそれほどでもなかったので、おそらくディスク収録上の問題と思われます。私はテレビ画面を一時的に明るく調整して対処しました。もし今後、DVDでご覧になる方で、暗くて顔の区別がつかない場合には、同じようにしていただくと、少しはましになるかもしれません。 さて、採点ですが、最初に見たときの感銘そのままに「鑑賞環境」は「映画館」とし、10点を献上します。芥川也寸志さんの音楽と共にいつまでも鮮明に蘇る、私にとっては永遠の名作です。 【せんべい】さん [映画館(邦画)] 10点(2015-02-11 19:51:54) (良:2票) |
《改行表示》 11.《ネタバレ》 八甲田山という映画がある事は以前から知っていましたが、シベリア遠征のための訓練の話だとは知りませんでした。 確かに苛酷であるのは容易に見てとれるのですが、訓練の話となるとどうしても面白さを割り引かざるを得ないという気がしてきます。 映画の序盤で、これから過酷な地に向かうという事もあり、その前フリがあらゆる場面にちりばめて出てくるのが映画を盛り上げるのに生きていたように思えました(若干演出過剰気味ですが)。 まず、トップの人間から困難な任務であることを聞かされたり、麓の村民からも無理だと諭されたり、また、神田大尉の奥さんに食事を日程分よりも多く入れておいてくれという台詞からは彼が内に秘めている悪い予感が的中することを暗示させていたりして、入山前から並々ならぬ緊張感を漂わせていて実に面白いです。 更に、山田少佐が村民に対し案内は要らんと拒否する一連のシークエンスの間、神田大尉の背中を映し続けるカメラが彼の受ける絶望感や悲壮感を静かに炙り出していて、ここが自分にとってこの映画の中で一番好きなシーンです。 映画のほとんどが雪の中での過酷な状況である中でも、ひときわ群を抜くのが雪崩のシーン。人工的に作り出したのだとしても、ここは本当に命懸けであっただろうし、更には、物語の中で夜を越す場面ではテントも張らずにただ雪洞を掘ってそこで立って寝るだけというのが、昔の人は凄いなぁとこの映画で一番驚かされたところです。 【もっつぁれら】さん [映画館(邦画)] 7点(2014-11-15 22:02:23) (良:2票) |
10.《ネタバレ》 まず始めによく撮ったな!て思うほどの凄さを感じずにはいられない。この時代だからこそ撮れた映画だ。何と言っても俳優の力量が今とはまるで違う程の凄い本物の映画俳優と言える顔ぶれが沢山です。高倉健と北大路欣也との対比の描き方、北大路欣也の神田大尉のリーダーとしての資質の弱さがよく現れる「天は我々を見放した」に応える様に次々と雪の中倒れて行く人達、一方で高倉健の徳島大尉のリーダーとしての資質の強さがもたらす人間としての強さが自分と自分に着いてくる人達を助けることになる。そしてもう一人忘れてはならない三国連太郎の山田少佐の自らの過ちを認める場面は今の日本人、特に政治家に大きく欠けているように思えてならない。これはそんな偉そうな大人達に自分さえ良ければ他人はどうなっても構わないという考え方しか持てない人間に見せるべき映画だ。全体的に長く感じる上に画面全体暗過ぎる難点があるが人間とは何か?命とは何か?を大いに考えさせられ映画として、面白いつまらないは別として一度は見て損のない映画だ。 【青観】さん [DVD(邦画)] 7点(2013-12-23 14:04:38) (良:2票) |
《改行表示》 9.《ネタバレ》 橋本忍脚本にアクションを加えたらどうなるか? もうそれだけで、一見の価値がある。 見事なリーダー論になってる。 二つの隊が、雪の中の行進をする。 それぞれの隊のリーダーの在り方で命運が変わる、と言ってもいいくらいの違いがある。 吹雪の中、あと2キロの目的地に行くか行かないか、土地に詳しい案内を頼むか頼まないか・・等々 中盤、北大路欣也の部隊が全滅したあと、高倉健の部隊が進むかどうか、 軍本部は中止させたいが、連絡方法がない、というとこは、もっと見せ場にできたと思う。 ラスト、生き残った部隊が、日露戦争で全滅したという説明書きが出て、鑑賞後、凹んだ。 (実話ですよね。簡単にコメント言えない) 木村大作の撮影が見事!さすが日本を代表するカメラスタッフ! 【トント】さん [DVD(邦画)] 7点(2024-04-07 21:10:13) (良:1票) |
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8.《ネタバレ》 高倉健、北大路欣也など往年の名優たちが出演する超豪華な映画。自然の美しさと恐ろしさを肌で感じさせるような作品。その中において、人は時々対比的に愚かな判断をしてしまうことがある。夏に八甲田に行った後、興味を持って見たんだけど、もう一度八甲田に行ってみたくなった。あと、高倉健はカッコ良いんだなと、恥ずかしながら今更気がついた。 【lalala】さん [ブルーレイ(邦画)] 7点(2018-12-09 19:35:23) (良:1票) |
《改行表示》 7. この映画を観た後の教訓は「雪山を甘く見ない」、これに尽きる。題材からして雪中行軍を描くことは自明だから、厳寒の中で撮影を行ったことは評価するがこれほど長尺にする必要はない。 過酷な雪山の表情に時折見せるレンゲツツジやリンゴの花などが心を癒す。佞武多や桜、菜の花も含め雪山だけでなく四季の移ろいや山野の表情が描かれたのは好ましい。 何事も一度始めると止めることが難しいこの国において、上層部の責任の重さ、指揮命令系統に問題はなかったか等、現代にも通じる問題意識がある。それだけに、リーダー・部下それぞれの心情の描写不足は惜しい。 ラストの老村山伍長(緒形拳)の表情が余韻を残す。 【風小僧】さん [映画館(邦画)] 4点(2017-02-12 14:14:50) (良:1票) |
6.リアルな映像と迫真の演技であっという間の3時間でした。豪華キャストでしたが、この時代の人達は上手いですね。作戦で何故こんな事するの?ってのがいくつかありましたけど、まーそれはそれでご愛嬌ですね。健さんも変わらずシブかったです。 【SUPISUTA】さん [DVD(邦画)] 8点(2016-09-17 21:15:34) (良:1票) |
《改行表示》 5.《ネタバレ》 これまでに何度か見ているが、国土地理院サイトの地形図やGoogle Earthで場所を逐一確認しながら見ると退屈しない。特にGoogle Earthを見ると山の形から撮影場所がどのあたりだったかわかる場合もある(注:現在はGoogle Mapでも3Dが使えるらしい)。原作本にも当時の詳細な地図がついている。 撮影秘話のようなものはあまり読んでいないが、映像からすればいかにも厳しい現場だったようには見える。特に、休止中の人々の頭の上に相当量の雪がそれらしく積もっていた場面があったが、落ちた様子を見ると本物の雪だったように見え、これはこのように雪が積もる間この人々がずっとここに立っていたことを意味するのだろうかと素朴な疑問を感じる。 また物語に関して印象に残るのは、まずは当然ながら兵隊さんのご労苦ということになるが、暗澹とさせられたのが最後の説明文で、生還した人々がわずか2年後に戦死したと書かれていたことである。この時の経験が満州の平原で生かされたのかどうか不明だが、明治日本が列強に追いつく過程ですり潰されていったかのような人々の存在が痛々しく、登場人物の子どもの頃の情景も、むしろそのこととの関係で哀しく思われた。 ところで弘前の部隊が村へ入る際、案内人を先頭にしてラッパ付きで行進した場面は普通に感動的だった。これは原作とも違っており、当時としては常識外れのことかも知れないが、しかし現代の映画としてはかえってこれでよかったのではと思われる。昔の軍隊は百姓町人に教わることなどないと思っていたかも知れないが、わからないことはわかる人間に尋ねるべきであり、またその人間には敬意を払わなければならない。そのような態度が成功をもたらすというのはまあ当然だろうが、この点でちゃんと筋を通してくれたことで、この映画が昔の軍隊の理不尽さを糾弾するだけのものでなく、現代人の心にも通じるものになっていた気がする。 なお部隊が敬礼をしたときに、案内人殿が照れたように笑っていたのは可愛らしい。いくら何でもこんな人が現地にいたかとは思うが、重厚な高倉健と軽やかな秋吉久美子の極端な対比は非常にいい感じを出していた。「まんまくうべや」という台詞が耳に残る。 【かっぱ堰】さん [DVD(邦画)] 8点(2016-05-28 14:11:03) (良:1票) |
4.当時、多大な費用をかけた宣伝で、それまで邦画に興味がなかった若者層の観客にも映画館に足を向かわせた、功績の大きい映画。また、同時に映画館に足を向かわせた若者層を含む多くの観客に、宣伝の割にはつまらないと、二度と邦画を観に映画館へ足を向かわせなくした、A級戦犯的映画。 【ダルコダヒルコ】さん [映画館(邦画)] 4点(2010-05-14 00:13:35) (良:1票) |
3.最近、雪が降った日にふと思い出してDVDを借りてみた。小学生の頃、TVで観たときは、雪の中を行軍するのが、どちらの部隊かわからず、ただ中盤以降の阿鼻叫喚がインパクトに残っていました。(寒さで発狂して裸になるシーンはトラウマです)今は組織論としても理解出来、史実を調べてみると興味深く見る事が出来ます。三国連太郎の山田少佐が無能な上司の見本のように見えるのは映画的な脚色であったのでしょう。北大路欣也の心中がクローズアップされてるので騙されてしまいますが、山田少佐の判断は、それぞれの状況では兵たちの士気を重視しており、間違いとは言いきれないです。多くは準備不足に起因する遭難だったのでしょう。高倉健の徳島隊長にしても、史実では案内人に対して、かなり非情な扱いであったらしいです。公開時は案内人に「八甲田で見たことは一切喋ってはならぬ!!」と脅しともとれるシーンさえカットされてますから、役者のイメージと2つの部隊の対比をドラマ的に鮮明にするためだったのでしょう。映像的には雪崩のシーンは本物の雪崩を起こしたというからびっくりです。すごい絵です。夏に公開され、夏に納涼のために見る映画の代名詞的存在ですが、むしろ寒い日に見ることをオススメです。この過酷さを見ていると部屋の中の寒さなんて逆に忘れてしまいます。 【どっぐす】さん [DVD(字幕)] 8点(2008-02-13 00:17:50) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 かなり久しぶりの再見。昔見てすごく面白かった映画だが、さすがに今見ると冗長に感じるかもと思いながら見始めたのだが、やはり雪中行軍が始まったあたりから見入ってしまい、真冬の雪山の怖さというものがすごくリアリティーを持って描かれているし、それに対する人間の無知や無力さも(とくに三國連太郎演じる山田少佐を通して)よく描かれていて見ごたえのじゅうぶんある映画になっていると思う。山田少佐に指揮権を奪われた神田(北大路欣也)隊が遭難して白い地獄を右往左往するのに対して、入念な計画のもとに実行した徳島(高倉健)隊が特に何事もなく進むのが対比的に描かれていて面白く、それぞれのリーダーの在り方一つで命運を分けるということもちゃんと描かれていて、リーダーとは何かを考えさせられる映画にもなっていて、それが以前に見た時には気づかなかった本作の面白さの一つだろう。公開当時はサラリーマンに人気があったと聞くが、山田少佐に振り回される神田大尉が見ていてだんだんと哀れに思えてきてそのあたりも納得。徳島大尉と神田大尉の友情・交流を序盤で描いているので、二つの部隊が八甲田山ですれ違うのを神田大尉が楽しみにしているという部分にドラマが生まれ、だからこそ、神田大尉の遺体を前にした徳島大尉の前に神田大尉の幻が現れ、語り掛けるシーンと、棺に入った神田大尉に徳島大尉が会う終盤のシーンはグッとくるものがあり、泣けてしまう。またこのシーンでは一緒にいる神田大尉の妻(栗原小巻)が徳島大尉にかける言葉も良かった。「日本沈没」でもコンビを組んでいる森谷司郎監督と脚本の橋本忍はともに黒澤明監督に携わっていた人だが、本作の男臭さやリアリティある描写はやはりその影響も感じられるものになっている気がする。木村大作(この人も黒澤明監督の映画で撮影助手をしていた。)が初めて撮影を担当した高倉健の映画でもあるが、雪山での撮影も見事で、木村大作=雪というイメージで語られることが多いけど、そのイメージは本作で決定づけられたのではないかと思わずにはいられない。芥川也寸志の音楽もやっぱりいいなあ。(2024年8月18日更新) 【イニシャルK】さん [DVD(邦画)] 7点(2005-03-22 17:30:37) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 子供の頃この映画を見て「雪の進軍」を覚えてしまった。最後に「徳島大尉以下八甲田雪中行軍を成功させた人達が日露戦争にて勇猛果敢に戦い戦死した」との文章を読んで彼等に対して深い感謝の念が沸いた。日本映画も素晴らしい傑作が多く存在することをより多くの人々に知ってほしい。♪雪の進軍氷を踏んで、どれが川やら道さえ知れず、馬は倒れる捨ててもおけず、ここはいずこぞ皆敵の国、ままよ大胆一服やれば、頼み少なや煙草が二本♪ 【和魂洋才】さん 10点(2004-09-19 22:27:51) (良:1票) |