6.《ネタバレ》 黒澤監督のある意味実験的映画ですね、しかし、なんだ、水爆など放射能はもちろん怖い、それ以上に人間模様が恐ろしかった、三船の怪演する老人が追い込まれ押し込められていく、複雑な関係、思惑、生きものの方が怖いのかもしれない。終のあとの音楽がなんとも。 【min】さん [DVD(邦画)] 7点(2013-08-28 20:28:22) (良:1票) |
5.黒澤監督の作品は、白黒ハッキリした単純明瞭な作風だと勝手にイメージを持っていたけれど、この作品を観ると決してそうは言えない作家だったんだなあと思う。映画は大きく分けると「オレはこう思う!」ってタイプの作品と、「オマイラどう思う!?」ってタイプの作品に分けられる。この映画はどちらかとういうと後者なんだろうな。現在進行形だった問題を、こうして映画作品として作り上げ、「生きものの記録」と名付けた黒澤監督の思いはどんなものだったろう。 この映画の中の家族は、恐らく世間や世界の縮図として描かれていると思う。だからこそ、「オレはオレの好きなようにやるぞ!」とは決して出来ない。一筋縄ではいかないのがよく分かる。
園子温監督は「希望の国」で放射能の問題を取り上げたけど、あの作品は「生きものの記録」として50年後60年後どうなってるだろう。 そしてそれを観る人々や世界はどうなっているだろう。 「生きものの記録」が作られてから約60年。現在の日本はご覧の通りです。トホホ・・・・・ 【ゆうろう】さん [DVD(字幕)] 7点(2013-05-21 01:00:10) (良:1票) |
4.非常に重みのある作品。 まずはやはり三船の演技が凄い凄い。 全体的に特に派手な展開や演出は無いが、台詞ひとつひとつが無駄の無いもので、それぞれの人間のエゴを強力に映し出す、黒澤映画ならではの力強さが感じられる。 ラストの画、余韻が特に素晴らしく、映画の深い深いテーマをさらに色濃くしている。 鑑賞後思わず唸ってしまった。 【おーる】さん [DVD(字幕)] 9点(2010-01-30 23:48:41) (良:1票) |
3.最後がとても衝撃的だった。時代劇・現代劇を問わず、当時の黒澤作品はわりとキレイに話がまとまって終わっていたのに、これだけは違っている。映画が終わっても観客に考えさせようとしているのだ。確かに喜一老人は狂っているかもしれないが、目の前にある核戦争の危機に対して目を反らし知らん顔して生きている奴こそが本当は狂ってるのではないか、と。深い映画です。 初代『ゴジラ』や『世界大戦争』などとセットで観るのもいいかと。 【とかげ12号】さん [ビデオ(吹替)] 9点(2005-11-20 18:14:10) (良:1票) |
2.水爆を怖がるガタイのいい爺さんが怖い!!しばしば喜一は水爆への恐怖で錯乱し暴れて、家族をパニック状態に落しいれる。特に最初の裁判所の迫力は凄まじい。マルチ・キャメラ撮影は、圧迫感でむせ返る様な臨場感を醸し出すのに成功している。私は中島家の人々と一緒に困惑し恐怖に慄いた。夕立の閃光瞬く中「こんな馬鹿な物を作りやがって!!」と水爆実験の記事が載っている新聞を引き破るシーンを見て私は子供のとき見た第一作目の「ゴジラ」の恐怖が蘇って来た。他にも濃密な絵の連続で、完全に映像がテーマを凌駕している。映画にとって最も幸福な例である。故に、しょうもない啓蒙や説教に墜落するのを回避出来ている。と言う訳で私はこのテーマや喜一には全く感情移入が出来なかったが、「ゴジラ」同様、自分の理解を超えたものへの恐怖を存分に堪能した。ウーン流石東宝。特撮映画の最高傑作!!次はサンダとガイラ対中島喜一で御願いします。 【水島寒月】さん 9点(2004-05-03 10:14:42) (良:1票) |
1.精神病患者となってしまった老人を、家庭裁判所の男と老人の妾が見舞いに訪れるラストがとても素晴らしい。このシーケンスにこの物語の全てが集約されていると言っても過言ではないでしょう。妾の背に抱かれた赤ん坊の寝顔がほんとうに印象的で、「何も知らん赤ん坊を水爆なんぞに殺されてたまるか」と言う老人の台詞に素直に共感させられ、「狂っているのはあの老人なのか、それとも正気でいられる我々なのか」という最後の問いかけには思わず言葉に窮してしまいました。登場人物の中で、老人の理解者として印象づけられるのは、血縁関係にある妻や息子達ではなく、見舞いに訪れた家庭裁判所の男であり、妾という、いわば他人である人物です。実際、彼等の立場は非常に弱く、実に無力な存在として描かれ、黒澤監督は、ここに「正しきもの=無力」という図式を作り出し、社会に対する怒りとも言うべきメッセージを全面に打ち出しています。原水爆反対という社会的な大テーマを家族ドラマの中で訴えようとしたことでかなり無理が生じている部分もありますが、メッセージは徹底的に強く、娯楽は徹底的に面白くというように、作品のコンセプトがはっきりしているところが黒澤監督の魅力。作品の中でとことん突っ走ってしまう黒澤監督は良い意味でとても「不器用」な監督だと思います。これは娯楽大作でも同じだと思うのですが、実にわかりやすく明確なテーマを持って突っ走った本作は、特にその「不器用」さがまともにでている作品と言えるでしょう。原水爆というものに対する知識や理解については、現在では随分変わってきていると言えども、この映画で黒澤監督の発したメッセージはとても重要だと思いますし、強く共感できます。マルチキャメラ方式を採用した最初の作品であり、早坂文雄の遺作となった作品。ちなみに興行成績は黒澤作品中で最低らしく、こんなところもまた良かったりします。 【スロウボート】さん 7点(2004-02-21 23:55:10) (良:1票) |