8.人を殺すなんて考えられないようなごく普通の人が人を殺す。そんな人が次々と現れる。しかしそれをコントロールしていたのはたった一人の悪い奴だった、、、ということなら怖くはない。一人の青年が人殺しを誘導していたわけではない(と私は思ってる)。そして人を殺した者たちも潜在的にターゲットを殺したがっていたわけでもない(と私は思ってる)。ちょっといなくなってくれたら、、ぐらいの気持ちを持った対象に×印をつけるという誘導に対し、ためらうことなく人を殺してしまう、その人間の深層ににある残虐性こそが怖いのだ。そしてそのことを表現した映像が怖いのである。「人を殺してはいけない」ということは種族繁栄という本能的なものとして組み込まれていると思っていますが、この作品ではどうやら違うらしい。しかしそんなことはどうでもよく、悪意が画面にへばりついたような描き方こそがこの作品の素晴らしさなんだと思う。このとんでもない悪意を日常に同居させたのが青山真治の『Helpless/ヘルプレス』ならば、この『CURE/キュア』は悪意を日常に同化させた作品。よってこの作品で描かれる日常は非日常とイコールである。それはまさに「映画」じゃないですか! 【R&A】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2005-12-13 16:07:40) (良:2票) |
7.黒沢清作品の中でも解りやすい部類で且つサスペンスホラーとして面白い出来だと思う。
同じ題材で並の監督だったら直接的な描写に頼ってしまいそうな所を敢えて見せない演出というか想像力に訴えてくるような演出だったのでジワジワ怖くて面白い。
光と影のコントラストが生む日常に潜む闇。 普通に見えた人間が突然殺人を犯す狂気。 不気味なオブジェクト。 催眠術。 邪教。 ビルの屋上から落ちる人(お約束)。 生肉をぶん投げる役所広司。
また、萩原聖人演じる間宮という男がとにかく不気味だし、存在感が凄い。彼に接触した人間が次第に狂っていく様が怖かった。 【ヴレア】さん [インターネット(邦画)] 8点(2020-03-17 17:48:20) (良:1票) |
6. わかりません。 【海牛大夫】さん [CS・衛星(邦画)] 5点(2013-05-27 22:39:40) (良:1票) |
5. 時期的に「セヴン」とか「羊たちの沈黙」などのサイコスリラーが出ていた頃ではなかろうか。邦画の水準としてはかなり上質というか、日本映画の良い意味での丹念さもあり、観ていて安心感があった。
安心感とはいっても、決して居心地のいい映画ではない。萩原聖人演じる間宮は、観ていて苛々するほどだし(その意味では成功しているわけだが)、各俳優も大して存在感があるわけでもない。ある意味日本映画というのはこれほど存在感の薄い俳優達によって演じられてきたわけだ。
黒沢清はそういうハンディを意識しつつ、それを逆手にとって映画の画面を構築しているように見える。職人的な監督さんだと思う。少なくともこの時期の、「CURE」のあたりが彼の最も充実した頃なのではなかろうか。
たとえば遠景から間宮が最初に登場する浜辺のショットは俊逸なもので、このあたりで本作がただの思わせぶりなホラーではないということがわかった。つまり職人的な丁重さで作られているなということである。その意味で安心して映画に浸れるという気がした。
しかし上述のアメリカ映画ほどには、残念ながら画面に華がない。ダイナミックさで、どうしても負けるのだ。それは終末部の、病院の廊下の一劃で高部の妻(だと思う)が縛られた異様な姿で映されるシーンなどで、やはり造作のチープさをカバーするためにいささか映す時間が短か過ぎたりとかしている。このような細部を、細かく観ればアラが判然としているあたりが邦画の貧しさとでも言おうか、黒沢清のレベルですらこうなのである。
「CURE」はしかし邦画的水準では高いものだと思う。 【タカちん】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2011-01-10 09:28:15) (良:1票) |
4.サイコスリラーがはやってた当事、これを初めて観たんやけど、セブンなみに凄いとかなんとかで、期待して観てみたら、つまらんかった。ダラダラしてるし、怖くもないし、催眠術で人を殺すなんて、そんなにビックリじゃないし、第一、ストーリーの意味がわからん所が多々あって、イライラした。それから、何年後かして、映画の記憶もウル覚えになってきた頃、タマタマ深夜、テレビで観たら、なんか、凄い引き込まれて観てしまった。つまり、このように何かを感じる感覚なんて、その時の状況でいくらでも変わる。絶対にかわらんって思ってた感覚も変わった。人の感じる感覚は時にアイマイ。だからアイディンティティも絶対的じゃない。絶対的に信じてた自分すら自分でなくなる事もある。この映画は、そんなアイマイな怖さがある。でも、そー思うのは、俺自身が空っぽだからかも知れない。朝、起きて、壁に×って書いてあったらどーしよう・・って思える映画やった。 【なにわ君】さん [ビデオ(字幕)] 10点(2006-01-13 10:53:02) (良:1票) |
3.間宮とのかみ合わない会話と、それゆえに心に入り込まれてしまう恐怖は、なかなか見事に描かれていた。後半の怒濤の、説明を排した展開というのは、たとえば、それを間宮の(そして高部の)「本質的な異常性」や「不幸な境遇」みたいな、ありきたりでわかりやすい「動機」でもって説明すること自体が無意味だという主張なのかもしれない。なのに、その結果おきた殺人の数々は、「気にくわないから殺す」「殺してみたかったから殺す」みたいな、ものすごく利己的で単純極まる理由だったのが皮肉。ただ、個人的には、説明できないものを、なんとか映像と言葉の力でもって表現しようと努力するのが映画作家だと思うので(観客に解釈を委ねるのは、その意味では怠慢)、それを放棄したようにみえる本作の後半の展開は残念だった。 【ころりさん】さん 5点(2005-02-28 10:54:30) (良:1票) |
2.これは面白かったし、非常に解り易かった。溜めの無い殺人シーンはとにかく衝撃的。BGMもカット割りも無く、淡々と、いきなり人が殺されていく。手持ちカメラによる、うざったくない(且つ、俳優の動きと構図を良く考えた)カメラ・ワークも良い。言葉遣いは丁寧ながら、のっけから危険人物っぽい役所広司の演技も秀逸。そして、不安感を煽る全編に響く重低音。これは全て演出の勝利でしょう。黒沢清の映画は唯でさえ解りにくい作りなんだから、話まで解りにくいと、本当に訳が解らないで終わってしまう。彼の作品は、このくらい解り易いストーリーの方が断然良いと思う、7点献上。 【sayzin】さん 7点(2004-11-03 12:33:38) (良:1票) |
1.空気感の創造においてはもはや何も文句のつけようがない。『セブン』的なサイコサスペンスを想像していたが、こちらはより人間の根源に迫っている。「悪意」とは一体なんなのか?「狂気」とは自分とは無縁のものなのか? ラストシークエンスが映画終了後も心をかき乱していく。 【恭人】さん 9点(2003-11-24 11:56:39) (良:1票) |