5.人を殺すなんて考えられないようなごく普通の人が人を殺す。そんな人が次々と現れる。しかしそれをコントロールしていたのはたった一人の悪い奴だった、、、ということなら怖くはない。一人の青年が人殺しを誘導していたわけではない(と私は思ってる)。そして人を殺した者たちも潜在的にターゲットを殺したがっていたわけでもない(と私は思ってる)。ちょっといなくなってくれたら、、ぐらいの気持ちを持った対象に×印をつけるという誘導に対し、ためらうことなく人を殺してしまう、その人間の深層ににある残虐性こそが怖いのだ。そしてそのことを表現した映像が怖いのである。「人を殺してはいけない」ということは種族繁栄という本能的なものとして組み込まれていると思っていますが、この作品ではどうやら違うらしい。しかしそんなことはどうでもよく、悪意が画面にへばりついたような描き方こそがこの作品の素晴らしさなんだと思う。このとんでもない悪意を日常に同居させたのが青山真治の『Helpless/ヘルプレス』ならば、この『CURE/キュア』は悪意を日常に同化させた作品。よってこの作品で描かれる日常は非日常とイコールである。それはまさに「映画」じゃないですか! 【R&A】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2005-12-13 16:07:40) (良:2票) |
4.《ネタバレ》 自分は、ちょっと前に流行った”癒しブーム”が嫌いでした。だって、お香からCDに至まで”癒”の文字が入った商品がでたりしたし、TVでも「癒されますねー」って連呼してたり・・癒しって言ったら個人の感覚だから、向こうから癒しですよ来られるのは嫌だなーと。でも、このタイトルはニヒリズムと言うかアイロニカルというか、究極に解放(癒)された人が起こすのが殺人とは・・。いくつかの謎が消化不良だけど、自分なりに考えたのはこうです。佐久間(うじき)は本当に自殺。すでに暗示にかかり自分が殺人衝動に捕われる事が怖くなって自分を拘束、のちに自殺した(佐久間の死が尊厳あるものだったと思いたいから)。妻を殺したのは高部(役所)。ラスト、ウエイトレスがナイフを持ったのは、新しい伝道師となった高部の”癒し”によるものだと思います。・・そう推理した上で、誰が誰を殺したかなんてどうでもいいことにも気付きます・・「アンタダレ?」・・「小学校の先生」「警視庁本部長」・・そういう言わば社会的な「記号」でしか自身を表現する事ができない事実。親しい者同志でさえ、気持ちの衝突はあり、それが何の抑制もなく行動すると殺人になるとしたら・・あの続きを想像すれば世界に殺しが満ち溢れるのかも知れません。間宮(萩原)が「あんたはすごいよ」と言ったのも「あんたは、おれよりもすごい伝道師になれる」という意味かもしれません。。一番ゾッとしたのは劇中食事も喉に通らなかった高部が殺人を犯したあとの食事では、皿を舐めたかのようにきれい食べていたところ(空の洗濯機も効いたな・・)。全体的にロングショットが多く淡々と見せているのに、時間の経過と共に、陰うつな空気が絡み付いてくる感じ、胸騒ぎと言うかザワつく感じをうまく演出していると思った。個人的には間宮にもっと説得力(魅力?)があればということと、癒し(魂の解放)=殺人というのがちょっと乱暴かなと感じました(この基本設定が飲み込みきれなかったので大きく3点減点しました)。 【ウメキチ】さん 7点(2005-03-06 17:54:21) (良:2票) |
3.《ネタバレ》 なんとも言えない怖さ。精神的にズッキズキきますよ。こういう世界観はハリウッドではまず無理でしょうね。一番怖いシーンが派出所前で突然銃殺するシーン。物凄く平和で日常的にありえるシーンからの突然の衝撃的なシーン。観客を突き飛ばすようなラストも色々と考えられるので結構好みです。あと、うじきさんが「何故か分からないんだよ」と言って、×の落書きを必死で消すシーン。これも言い知れぬ怖さがありますよね。とにかく、精神的に嫌なところを付き続ける映画。こんな映画も良いっすね。あと、役所さんはもちろんですけど、意外と萩原さんが良い仕事してます。 |
2.これは面白かったし、非常に解り易かった。溜めの無い殺人シーンはとにかく衝撃的。BGMもカット割りも無く、淡々と、いきなり人が殺されていく。手持ちカメラによる、うざったくない(且つ、俳優の動きと構図を良く考えた)カメラ・ワークも良い。言葉遣いは丁寧ながら、のっけから危険人物っぽい役所広司の演技も秀逸。そして、不安感を煽る全編に響く重低音。これは全て演出の勝利でしょう。黒沢清の映画は唯でさえ解りにくい作りなんだから、話まで解りにくいと、本当に訳が解らないで終わってしまう。彼の作品は、このくらい解り易いストーリーの方が断然良いと思う、7点献上。 【sayzin】さん 7点(2004-11-03 12:33:38) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 萩原聖人のキャスティングは、果たしてこれでいいんだろうか?とか、何故負の意識、闇の意識を刺激する事が即殺人という形に結びつくのだろうか?とか、見ている間は色々と疑問に思ったのですが、見終わってみると、何やら冷たくザラついた、イヤ~なモノを飲まされたような感触が残り、恐ろしさがじわじわと染みてきました。人が壊れてゆく境界は曖昧で、ほんの少し背中を押されただけで越えてしまう危うさを感じます(それを感じているうちは大丈夫なのかな?)。意識して避ける事ができるのならばいいのですが、その引き金は日常の中に潜んでいて、日常の風景が歪んだように顕在化する、そんな怖さを監督は決して表層的な表現、即物的な表現に頼る事なく、象徴的な映像を通して内側から上手く引き出していたと思います。ただ、幸せポイントの全くない映画なので、もう結構でございます。ごちそうさま。 【あにやん🌈】さん [映画館(邦画)] 7点(2004-06-16 01:37:04) (良:1票) |