《改行表示》 5.《ネタバレ》 なるほど、一映画会社を潰したトンデモ作品は忍耐を強いられる長さだった。よほどダンスシーンが好きなのかチミノは。くるくると良く(しつこく)回る 人も馬も。 ストーリーが動き始めるのもおっそいし、主要3人のキャラの描き込みも充分とは思えないので特に誰にも入れ込めずだし。どうでもいい役に突如M・ロークがキャスティングされて画面浮きが激しく、脳が混乱するとか、ウォーケンがなんでか宝塚の男役に見えるとか、冒頭のK・クリストファーソンとJ・ハートが老け過ぎてて大学生に見えないとか、まあ大きいことから小さいことまで色々と問題の多い映画ではある。歴史の恥部をことさら演出のために改変されたアメリカ人は腹に据えかねただろうしなあ。 でも、そんなに“ひどい”映画ではないですよ。顰蹙をかうほどの大金を注ぎ込んで作り上げられた19世紀末のアメリカ社会のその姿!ライフルの手触り、むせかえりそうな人いきれ、乾いた空気、娼館の不潔で貧しい佇まいまでが それはリアルに感じられ、映像の格としては一等級もの。光ひとつにしても、柔らかな室内のそれと屋外での屈託の無い陽射とは違った色をしている。 苦労は多いけど(?)、観終えた時には100年前のアメリカを旅してきたような気持ちになれますよ。 【tottoko】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2015-04-14 01:02:42) (良:1票) |
4.異常に頑張りまくった美術や撮影関係とか、湯水のように果てしなく湧いて出てくるエキストラ群とか、とてつもないパワーだけは嫌というほど感じられるのですが、まあそれにしても、長すぎですね。しかもその割に、各登場人物のキャラクターは、びっくりするほど底が浅く、作り込まれていない。 【Olias】さん [CS・衛星(字幕)] 5点(2014-06-12 01:10:27) (良:1票) |
《改行表示》 3.とにかくまずは、ヴィルモス・スィグモンドの撮影がすばらしい。最初の卒業式でのダンスの場面、人物にピタリと照準を当ててびゅんびゅんと廻っていくカメラ。逆光線の中に立体的に群集を捉えるカメラ。赤い砂塵の舞う荒れ地での残虐な戦いを記録するカメラ。これを観ているだけで作品の長尺は乗り切ることが出来る。ヴィルモス・スィグモンドでも、この作品が最高ではないだろうか。 物語は、国家が移民を抹殺しようとした過去のアメリカの大きな恥、そこでの無力な知識人の問題を主題としている。この作品で描かれたことが史実とはずいぶんと異なるらしいというのも、この作品への嫌忌気分の原因になっているらしい。わたしには、この作品で描かれる主人公のジム(クリス・クリストファーソンが演じる)の行動がどうもよくわからなくて、何をどうしようとしていたのか、まあそこにこそ知識人の無為を読み取れるように思うけれども、どうもいまいち納得が行かない。ラストにポーツマスだかで船に乗っているジムは、そこが移民たちのアメリカ上陸への窓口だったということを想っているのだろうか。そこに彼の過去の行動への悔恨があるのか。死んだ女性を思っているだけなのか。船室で傍らに坐る妻らしい女性へタバコの火をつけてやるときの彼のぎごちなさが、意図的な演出なのか、マイケル・チミノ監督の演出力やクリス・クリストファーソンの演技力に由来するものなのかもわからないから困る。 やはりわたしの印象に残ったのは、ネートという男で、これはクリストファー・ウォーケンが演じているのだけれども、観ていてこのルックスは誰かを思い出させると思っていたら、近年のジョニー・デップを思わせるのだった。とにかく、移民としてアメリカという国に同化しようと努力する姿が痛々しい。ホーソーンの小説を読んで英語の書き取りを勉強し、住まいの壁には壁紙として英語の新聞をいちめんに貼る。ジムと娼婦の女性(イザベル・ユペール)をめぐって争うけれども、ジムへは友情を感じていて、ここに彼の人間味が読み取れる(この作品には人間味を読み取れるような人物が少ない。このネートと、娼婦のエラぐらいか)。殺し屋まで引き受けてアメリカ人になろうとするけれども、さいごには国家の不条理に抵抗して死を迎える。住まいの壁の新聞紙が、燃え上がって剥がれていくシーンが悲しく、美しい。 【keiji】さん [DVD(字幕)] 8点(2010-05-08 11:21:17) (良:1票) |
2.冒頭の卒業式のシーンが要らないというご意見もわからなくはないが、たしか(正確には覚えてませんが)「移民を守ろう」という類の言葉が校長からあったような気がするのですが、その後の主人公の「信念」とさえいえる行動の原点がこのシーンにあるわけですからやっぱり端折れないでしょう。しかもオープニングの長回しで見せる時間の経過とともに色が移ろう美しい情景は作品中でも最も美しいシーンでもあり、これを端折るなんてことは誰にも出来ません。時代が変わって映し出される町並みがまた圧巻。駅ごと作ったという本物の町並みはお金をかけただけの満足感は十二分に達成されている。不評なのは物語に起伏がないからでしょうか。大規模な戦闘の後の急な収束はたしかにやっと訪れたクライマックスがいつのまにかうやむやになったという感じがします。この作品に関しては長いということがネックなのではなく、むしろもっと長くてもいいから物語としての見せ場が欲しかったような気がする。長尺の史劇にはそういうサービスも必要だと思う。 【R&A】さん [DVD(字幕)] 6点(2007-06-04 13:33:48) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 すごい力作だと思うんですけど、天国どころか地獄のように長い。ひとつひとつのシーンが異様なまでに長いんです。それもそのはずと言うか、この映画はすべてにおいてリアリティーにこだわり抜いたために、何もかもを見せたいという衝動にかられたんだと思います。序盤に出てくる駅ひとつにしたって、アメリカ中を探して見つけ出した年代物の機関車をモンタナまで運び、線路を敷き、駅を建設して撮影したわけですから、そりゃじっくり見せたいでしょ。荒野の雰囲気を出すために画面には常に塵や煙が舞っていますが、それにしたって計算されたかのような動きを見せるし、撮影は基本的に自然光。キューブリックにゃ負けとれんってわけですね。映画はいかにウソをつくかの勝負で、バカ正直にセットを丸々作ったり、わざわざ自然光のみにこだわることもないだろう、なんてことはこの際言いますまい。映画会社をひとつ潰したほどのこだわりなんて、見てて楽しいし。演技派揃いの渋い俳優陣もよかったのですが、画面をさらうような美男美女がいないってあたりもリアリティーのうちなんでしょうか。そしてエラ役のイザベル・ユベールさんは景気よく脱ぎまくってましたが、そのわりにスタイルの方がアレなのもリアリティーの一種でしょうか。なんてことを言いつつ、実は佳境に入るまでは話にのめり込んでたんですよ。だって金持ちが農民を虐殺しに来るという題材の時点で男気を燃えさせますよ。仲間割れする農民をまとめつつ保安官が戦いを挑むんだろう、その時にはエラに説得されたウォーケンも加勢に来て重要な役割を果たすんだろう、そしてクライマックスでは片方が死んで三角関係も丸く収まる、なんてアツイ展開を想像しながら見てたんですけど、佳境に入るとすごい展開に。決戦を前にしてウォーケンはアッサリ死に、一方保安官はフラれたショックで保安官を辞めるとゴネ出し、結局農民達は自発的に闘いを挑みます。おいおい、俺の燃える展開は?って感じですよ。しかもアクションにしたってカタルシスがまったくなし。リアリティーを残しつつでも、もっとかっこよく撮れたでしょうに。そして最後は大宮サティのカート野郎さん同様、あんまりピンときませんでした。「で?」って感じです。クライマックスに向けてもっと盛り上げてくれれば、西部劇の決定版になった映画かもしれないんですけどね。少なくとも監督はそのつもりで撮ってたんでしょうけど。 【ザ・チャンバラ】さん 7点(2004-09-20 07:52:15) (良:1票) |