10.映画の初めの方で、主人公の男の子マルセリーノが、道ばたで架空の友だち「マニュエル」と遊ぶシーン。“マニュエル、それはね…”とか、“マニュエル、ほら…”とか言いながら独りで遊ぶそのマルセリーノの姿は、あまりにも無邪気で、無垢で、愛しくて、そして悲しくて、もう、涙なくしては見られなかった…。最後に見てからもう10年以上は経っているはずなのに、いまだこの映画(から受けた感動)はありありと鮮明に覚えている。それはきっと、この映画が、キャメラだの、構図だの、カット割りだのといったものにとらわれることなく、ただ「小さな奇蹟」をあるがままに物語ろうとした、その“てらいのない「純粋さ」”ゆえじゃないでしょうか。そんな眼差しの中でなら、たとえ屋根裏のキリスト像がマルセリーノの“相手”をしてあげるために動きだそうとも、ぼくたち観客は素直に納得させられてしまう。もはや宗教的な意図を越えて、このひとりぼっちの幼い男の子のために彼(キリスト)は“復活”したのだと納得させられる。そのために、この子が神の国へと召されることになっても、ひとりの「天使」がふたたび天上へと帰っていったのだと、たとえキリスト教とは何の関係もないぼくたちですら、素直に心打たれ、祝福できるのでしょう…。芸術であるとか、娯楽であるとかいったこと以上に、「映画」というメディアは、時に“この世で最も美しい何か”を現出するという「奇蹟」を実現してみせる。それを《神の顕現(エピファニー)》と言いうるのなら、ここにはまさしく「神」が宿っている。…にしても、「7歳までは神のうち」という箴言は、洋の東西を問わないんですね…。 【やましんの巻】さん 10点(2004-03-05 12:56:53) (良:3票) |
9.《ネタバレ》 昔、テレビで何度か見ていて(『水曜ロードショー』がよく放映してたんじゃないかな)、大筋は知っていたつもりでしたが、改めて劇場で腰を据えて見て、あまりに記憶に欠落箇所が沢山あった事にびっくり。回想形式の映画だという事をまるで覚えておりませんでした。その回想のきっかけとなる冒頭の少女のエピソードを見て、これは幼い子供を亡くした人々に対する救済の映画なんじゃないかと思いました。パンとワインのマルセリーノ(という字幕よりもテレビ版の「マルセリーノ・パンとブドウ酒」の方がピンと来ますが)は、信仰心の厚い良い子という訳ではありません。いたずらっ子で言う事を聞かなくて。もしかすると、暴力を爆発させようとしてサソリに刺されたあの瞬間に、彼の命は失われる事が予め約束されていたのかもしれません。でも、そんな子供であっても、その心は神によって救済されるものなんですよ、っていう。幼くして散った命に対して、私達はどうしようもない無常感を抱きますが、信仰がどうであれ、その子供達の魂が救われたと信じる事ができるならば、それは残された者への救済へと繋がる、そんな映画なのかなと。広い広い空の下に立つ人の姿を捉える映像は自然という大きな時を刻む世界の中に生きる、束の間の時を刻む人間を表すようで、白黒・スタンダードながら印象的に映えていました。 【あにやん🌈】さん [映画館(字幕)] 8点(2011-08-07 15:29:46) (良:2票) |
8.もう随分前に観た映画ですが、「おはようマルセリーノ」の曲は今も私のハートで流れています。宗教映画にありがちなマルセリーノの奇跡は、若かった私にとって遠くで起こった御伽噺のような、軽い気持ちで鑑賞していました。しかし、数年前に訪れたポルトガルのファティマで、数々の奇跡の物語を聞いていると、信じる心を持っていることが人生でもっとも大切な宝なのだと感じました。今では、マルセリーノの奇跡は、信じる心という抽象的なものを映像化した、世にも美しい物語だと思っています。 【ソフィーの洗濯物】さん 10点(2004-02-19 18:00:48) (良:2票) |
7.珠玉の名作…という言葉がぴったりの、胸に染み入る人間愛を描いた作品。この映画は手づくり感に満ち溢れており、つくり手の手の温もり、優しい眼差しなどをこれ程感じさせてくれる作品はそうないでしょう。ただ少し視点を変えて見ると、冒頭とラストの少女のシーンにもあるようにゾッとする怖さを描いた民話ともいえると思います。思い出すたびについ“マルセリーノの歌”を口ずさみ、涙腺がゆるんでしまう。やはりマルセリーノ(カルヴォ少年)が神様と言葉をかわし、ラストにつながるシーンまでが最高に美しく感動的。きっと今もスペインのどこかの村で、民話“パンとワインのマルセリーノ”が語り継がれているかも知れませんね。キラキラと輝く真珠のような名作に、文句なしの10点満点。※《追記:ネタバレ》ところで、なぜ神様はマルセリーノを昇天させたのか? 余りにも酷ではないかという意見もあるようですが、私なりの解釈をしたく思います。物語の途中、マルセリーノはサソリに刺されます。実は、この時点でマルセリーノは死んでいたわけなんですよね。しかし神様は死なすには早過ぎるし、まだその時期ではないと判断して特別に生かしてくれたんですよね。神様がマルセリーノに大きくなったら神父になりたいか、と尋ねるシーンがあります。それでもマルセリーノはかたくなにママに会いたいというだけです。もともと無い命、それも良かろうということで昇天させたわけなんですよね。十人十色の受け取り方が出来る典型的な作品ですね。 【光りやまねこ】さん 10点(2003-07-19 23:10:04) (良:2票) |
6.確かに幼くして、あるいは若くしてなくなるのは惜しまれるほどのいい人が多い。私も彼らは特に神様に呼ばれるのかと思っていた。やるせない不条理である。ところでこの作品、可愛いマルセリーノはお母さんが恋しい、物置部屋のキリスト像に食べ物を運び話しかけるとキリストはそれに応える。そして彼の願い通りお母さんに逢わせようとし、幼いマルセリーノは昇天する。皆に愛され、神にも愛され短い生涯を終える。泣ける!テーマ音楽がまたいい。この相乗効果でよけい悲しい。一種のメルヘンなのだが、愛しき者の昇天という不条理を神の愛として描いているのだろう。 【キリコ】さん 8点(2003-06-16 20:56:04) (良:2票) |
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5.《ネタバレ》 子ども映画ではあるのですが、結構コテコテにキリスト教的価値観を描く映画でもあるので、内容に関しては好みとゆーのは分かれる方の作品かと思います。ただ同時に、子ども映画としては端的に最強クラスと言っても好いかと(正直、メッチャ観入ってしまいましたよね)。その子役の素晴らしき純粋さ(=それがもたらすある種の「神性」)とゆーのは、ほぼ同時期の『禁じられた遊び』よりも更に純粋で美しいモノにも感じられました。元々はイタリアの話らしーのですが作品としてはスペイン映画で、モノクロではありますがやはりどこか温かく爽やかな空気感も感じられて(+件の音楽・歌の気持ちの好さも含め)そーいったトータルの雰囲気の好さが(映画を観ている上での)多様な心地好さにも繋がっていたかな…と。個人的には、人生でも忘れ難い傑作…という類の作品に思えましたです。機会があれば是非。 【Yuki2Invy】さん [DVD(字幕)] 8点(2023-03-19 17:04:19) (良:1票) |
4.《ネタバレ》 子供を捨てちゃうような母親は地獄に堕ちちゃっているので、マルセリーノが天国に行っても会えないんじゃないか とか 病の少女にこんな話したら、私やっぱ死ぬんだ、って落ち込んでしまうんじゃないか とか考えてしまうおれとは対極に位置しそうなこの作品。 がしかし、真相を突き止めるべく潜んでいたお粥さんの指が組まれるその瞬間ばかりは崇める心を共有し、「マルセリーノが あの子が 神に召された」という台詞で信仰が少しだけ沁みこんでくる。汚れなき天使が呼び起こす理解を超えた奇跡。そして汚れなきものがそれを語ることにより私たちが胸を震わす小さな奇跡。この作品は正に神の僕たる修道僧として、忠実な語り部としての立場を保っている。 【stroheim】さん [ビデオ(字幕)] 8点(2006-09-24 12:26:11) (良:1票) |
《改行表示》 3.《ネタバレ》 ♪聞き覚えのある哀しいメロディー、主題歌だったんですぇ、、今頃気づきました。。荷車が出てくる中盤以降はもう、無宗教のこんな私のどこからこんなに涙が溢れ出てくるのかわからんくらい泣けました。彼だけを抱擁してくれる「友と大男」はいたが、一番逢いたい人が空想でさえも存在しなかった、、もうたまりません。飢えたものに与え、弱きものを助ける、人と交わり愛する・・私が忘れてしまってることばかりです、心を入れ替えて出直します。12人の僧侶は「月」のことを指してるのかしら?? //モノクロのスペイン語ということで敬遠してました、黒猫クロマティ様他のレビュワーさんが薦めて下さいました、ほんとにありがとうございます。 【かーすけ】さん 10点(2004-04-24 20:46:01) (良:1票) |
《改行表示》 2.これはもう、涙を搾り取られた作品でした。初見は中学生のときだったと思います。あの人はあんなところに縛られて可哀想、おなかがすいているのじゃないだろうか、人にはママという人がいることを知り、ママに会うことが望みとなる、マルセリーノのそういった子どもらしさ、純粋さがたまらなくいじらしいの。 私はキリスト教徒ではありませんが、この奇跡の物語は素直に受け取れました。あのラストシーンは生涯忘れないでしょうね。 【envy】さん [地上波(吹替)] 10点(2004-04-06 01:09:37) (良:1票) |
1.子供の頃TVで見て以来、常に私の好きな映画ランキングのトップに位置する作品。一体何度繰り返しこの映画を見ただろうか。見る度に心が洗われる気がします。ラストのシーンはいつ見ても号泣してしまうのですが、神父達の悲しみに共感すると同時にマルセリーノには「憧憬」のようなものを感じます。この辺には多分に自分の中の宗教的な見解が影響しているのかもしれません。エリック・サティの音楽と古いモノクロ作品特有の光と影が、なにやら夢で見た世界のように思え心にしみます。 【黒猫クロマティ】さん 10点(2003-06-18 12:44:43) (良:1票) |