6.アメリカ映画としては非常に珍しく、リアルな小市民の生活がそのまま描かれてる。いくら偉そうなことを言ったって、大多数のサラリーマン同様、所詮副部長どまりの男ですから、会社にとっては居ても居なくても一緒。気に食わないことがあっても、長年の生活で染み込んだ小市民的気遣いで、場を滅茶苦茶にする勇気も持てない。家庭にかまけてこなかった所為で、子供には疎んじられるだけ。これで頼みの女房に先立たれたり、三行半を突きつけられたりしたら生きることもままならない。出来ることと言えば、月々2千数百円程度の寄付くらい。おまけに、それで逆に慰められてる始末…。これは見るも無残な老後の物語。“About Schmidt”とは即ち“About Us”であり、“About Nothing”なのです。そういうことで、7点献上。 【sayzin】さん 7点(2005-03-08 00:19:18) (良:1票)(笑:1票) |
5.今はまだこの映画が本当に言いたかったことは分からないかもしれない。 しかし、何十年かして、自分の人生を振り返ったときに自分が何を想うのだろうかと考えさせられる映画だ。 長年勤めてきて、自分なしには会社は回っていかないだろうという思ったとしても、自分なしに順調に会社は動き、自分の存在は新任者にとっては鬱陶しいだけだ。 自分がなした仕事の成果はゴミとして扱われ、自分が長年犠牲にして会社に奉げた貢献とは一体何だったのか。 42年連れ添った妻にも多少の嫌気がさしているも、失って知るその必要性と存在感。 しかし妻の死に伴い、全く知らなかった一面を知ることになる。 42年で一体彼女の何を知っていたのだろうか。 分かり合っていたはずの長年の友情も、妻との浮気を知り、愕然とする。 培った友情は何だったのか。 このように自分はこの人生において何をしてきたのかという疑問にぶちあたるのはシュミットだけではないだろう。 自分の人生にどういう意味があったのかという深いテーマに対して、人生の果てに見た悲哀と孤独が静かにまたユーモラスに描かれているのはとても好感的だ。 しかし、旅を通していくら自分の人生の意味を探ったとしても、どうしようもない奴と娘の結婚も止めることもできず、結婚のスピーチでも本心ではないありきたりのことを言ってしまうつまらない弱い人間だと知ることになる。 自分も個人的には人間なんて実際に弱くちっぽけな存在だと思う。 人は他人に影響を与えるような存在である必要はない。 ただ、自分のことを想ってくれる誰かがいれば良いのではないかというのがラストのシュミットの涙を見て感じたことだ。 弱くちっぽけな存在ということを認識して、その人生に何かの意義を見つけていくことが必要なんだろうな。 【六本木ソルジャー】さん 7点(2005-02-28 01:30:36) (良:2票) |
4.負け犬世代→ブリジットジョーンズの日記、アバウト・ア・ボーイ オヤジ→アメリカンビューティ 濡れ落ち葉→シュミット。こんな感じ見ればつながるのではないでしょうか?映画として映画館で見るほどではないけれど家で見るには十分な内容ではないでしょうか。観ていて気恥ずかしくなる場面が何箇所かありました。それってやっぱり演技が上手いってことなんでしょうね。きっと。 【たかちゃん】さん 6点(2005-03-29 13:20:21) (良:1票) |
3.くどい演技で辟易させられることの多かったジャックニコルソンが、この映画では実に抑制されたいい演技をしてくれます。こんな普通のおとっつぁんもできる人だったんだと感心。「あんた、やったら出来るがな」と、そのことを突っこみたくなった。ロードムービー好きの僕には嬉しい映画。何もかも上手く行かないんだけど、それでも生きてるのも捨てたもんじゃないよって言われてるようでいいなあ。ラストのジャックの涙には、やはり胸がグッとなった。あの涙が、この映画の言いたいことの全てなんだな・・・・。あんな、ちょっとしたことで、人間なんとか生きていけるんだよ。そうだよな・・・・。 【ひろみつ】さん 9点(2003-12-19 23:42:26) (良:1票) |
2.今年(2003年)公開された映画の中でも、今のところ1、2を争う秀作。生きることの切なさ、やるせなさ、愛しさが、実にひょうひょうと描かれていて、まだ若い監督のくせにもはや名人芸のごとき巧さ。ジャック・ニコルソンはこれまでのキャリアでも最高の名演です。まだまだ脂ぎった彼が、ほとんど笠智衆(!)のように見えてくるなんざ、ビックラこいちまっただ。作品自体も、ほとんど日本映画のような撮り方で、この監督は今後とも要チェックと断言しておこう。 《追記》やはり2003年度公作品では、ぼくのベスト作品になりました。冒頭、主人公シュミット氏の会社がある高層ビルを映すカット割りは、まさしく小津安二郎作品そのもの。それも、単なるモノマネや青臭いオマージュなんかじゃなく、はっきりと自分の「スタイル」にしているところがスゴイです。一見地味だけど、これは本物の“滋味”あふれる秀作だ。 【やましんの巻】さん 10点(2003-07-16 16:03:15) (良:1票) |
1.老後を如何に生きていくかと言った今日的なテーマを扱った作品で、私達すべてに当てはまり、実に身に詰まされる物語だといえる。定年退職したシュミットにとって、実績や名声といったものはもはや過去のものとなり、しかも人生の大半を妻任せで暮らしてきた彼にとって、老後を共に生きていく筈の彼女に先立たれるという試練が待ち受けていた。老後の生活設計に大きな狂いが生じて、その遣りきれない惨めさを否応なく実感する一方で、ある種の開放感を味わってもいる様子。このあたり、まさにシュミットが可愛げのある男性の典型そのもののように描かれている。経済的には困っていなくても、精神的な支えを無くした彼が、生甲斐を見つける為、自分探しの旅を始めるのが映画の後半部分。娘の元へと辿る道中記は、彼の心象風景そのものだが、このごくごく平凡で無邪気な初老の男を、J・ニコルソンが珍しく等身大の人間として見事に演じきっている。特に、泣き顔というよりはむしろ喜びを押し殺しているというラストの表情などは絶品だ。 【ドラえもん】さん 8点(2003-06-07 17:15:19) (良:1票) |