《改行表示》 8.《ネタバレ》 うう。 「お母さんはどうした」って、あのセリフが引っかかってしようがないのですが、そうすると花守湖さんのおっしゃるとおりなのでしょうか。なぜあそこで妻の母の話が出る。 そうすると根本的に違う話になってきます。私はうっすらと「過去がない人間がいったいどうだというのか」と考えながら見ていたのですが、素直に見ると「過去がなければ悪意ももたない」というふうに見ることができます。 この話でもっとも重要なのは「悪意と善意」です。ぜったい悪意がありそうな人が、実はそうでもなくて助けてくれるという、私たちが通常認識している「この世界」とは違う世界がここにある。 「過去がなければ悪意をもたない」のなら、「悪意は過去に原因がある」であり「過去の出来事が人に悪意をもたせる」でしょう。 けれどけれど、花守湖さんの説のとおり、そして「お母さんはどうした」を素直に受け止めるなら、カレは「過去があるけど意図的に悪意を捨てようとしていた」になります。そして作り手はカレに何も説明させないので、うっかりと見過ごしてしまいそうになります。 すると、溶接工なのに「オレは農民だから」とじゃがいもの処分方法についてしつこく説明するとかいう部分はなんだったのでしょうね。身元を隠したいなら港で突然溶接作業を手伝ったのはなぜなのか。 カレの行動は謎だらけで、カウリスマキの意図は解明できません私には。 とりあえずカレは「悪意を捨てる」ことに成功しました。意図的にか、図らずもかは不明ですが。 そして1人も魅力的な容姿の人物が出てこないこの作品を見て、うすぼんやり思いました。私たちは若くなくても、美しくなくても、お金がなくても、役に立たなくても、〝生きていてもいいのだ〟と。それどころか〝恋をしてもいい〟だし〝他人の善意に甘えてもいい〟でさえあるのです。 こういう感想を抱かせる映画はあんまりない。死にたい気分の人はぜひ見てほしい。 それから「なぜ電車の中で寿司を食う!ジャパニーズ・サケを飲む!クレイジーケンバンドのムード歌謡を流す!」!! この監督は馬づらの女性が好みみたいです。なかなかひねった趣味です。 【パブロン中毒】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2009-05-02 12:59:26) (良:2票) |
《改行表示》 7.《ネタバレ》 どこが面白いか分からないけど、説明しづらい面白さがある。 主人公の過去に何かあったに違いない。 ただ、キャッチコピー通り、人生は前にしか進まず、いつまでも後ろ向きになるわけにはいかない。 「何のために生きているのかを問う必要があるのかい?」と現代でも通じる監督の人生観が伝わる。 一部を除いて、善意の人たちによるささやかな日常が愛おしく、食堂車の寿司と日本酒と歌謡にロマンがほとばしる。 【Cinecdocke】さん [DVD(字幕)] 6点(2022-05-01 00:25:24) (良:1票) |
《改行表示》 6.台詞や演技よりも画面に映っている絵で物語を理解させる作りは好感が持てる。 みんなタバコ吸い過ぎです。空調の効かない金庫室の中で吸うのだけは遠慮して欲しかった。 過去のない男を何とか拘留しようとする警察に法律を空(そら)で唱えて言い負かす弁護人が一番かっこいい。そして、救世軍の淡谷のり子が毎夜夢に出てきてブルースを切なく歌う。思い出すとまた今夜も眠れない。 【WEB職人】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2005-05-15 08:27:55) (良:1票) |
5.久々に2回観た映画。現実世界を良質のふるいにかけて、残ったものを美しい色と素敵な音楽で味付けした感じでした。苦味も甘味もしょっぱさもいろいろ入っているけど後味はなぜかとてもすっきりしています。ごちそうさまでした、という感じ。 【クリロ】さん 9点(2004-04-25 19:35:22) (良:1票) |
4.《ネタバレ》 カウリスマキ万歳!このゆるさ。このトホホ感。なのにこんなに優しい気分になれる。この人にしか出来ない荒技があるんでしょうが、それをうまく言葉にはできそうもありません。魔法が使えるとしか思えない。たこ焼きの材料しか使わずにとんでもなくおいしいフランス料理のフルコースが作れてしまうような。いや逆かな、フルコースに使う食材を全部使って、夏祭りで食べたあのたこ焼きの懐かしい味を再現してしまうような。出て来る人がもういちいちみんなにこりともしないで最高にイカす(!あえて、イカすって言いたいのです!)会話を交わす感じがたまりません。警備のおっさんと強盗社長がとくにいいなあ。でもそうはいっても実はとってもかわいいラブストーリーでもあって、それはそれでにやけちゃいます。”おもしろうて、やがてかなしき”そんな言葉を思い出しました。アイデンティティーと幸福なんてほんとは何の関係もないのかもよ、そう、アイデンティティーみたいなものと日夜格闘してる、自分や自分のまわりの人たちに言って歩きたくなりました。未払いの給料を配り歩くみたいに。みんな頷いて、黙ってそれを受け取ってくれたらいいのに。ね。 音楽も最高!まさかフィンランドの映画で、ブラインド・レモン・ジェファーソンとクレイジーケンバンドが両方聞けるとは!こうやってふいに自分の好きなものが重なりあうのって映画の楽しみの一つな気もします。 【am】さん 8点(2004-03-29 03:45:23) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 ストーリーは平凡です、でもその平凡さが非常に良いのです。大した事件も起きずにただ黙々と日常が過ぎていく。いきなり冒頭から主人公が暴漢に襲われて記憶を失ってしまうため、観ているこちら側としても男の素性は一切分かりません。最後に自分が誰なのかを知ることができた主人公も、最終的には過去を捨てて違う道(=未来)を歩むことを決意します。「過去のない男」は言うなれば「人生をリセットした男」でしょう。エンドロールの歌もしみじみと物語の良さが伝わってくる、素晴らしい映画でした。 【かんたーた】さん 10点(2004-02-11 13:48:46) (良:1票) |
《改行表示》 2.この映画のことを思い出すとほっとする。過去をなくした男の素朴な生活や、気になる彼女とのデートなど、どれもささやかだけど幸せなにおいがする。ハンニバル、こいつも素朴な犬でかわいかった。気持ちがささくれ立っているときに見るといいかもしれません。今年一番しみじみと「良い映画だったね」と言える一本。 【のはら】さん 9点(2003-12-30 03:12:52) (良:1票) |
1.素敵だぜ。 【戦慄の右クロス】さん 8点(2003-11-12 12:07:48) (良:1票) |