6.二人の間で交わされる「愛」は複雑だ。マチルダの思慕の念は恋に近い。彼女にとっても、生まれて初めての「守ってくれる大人の男性」だった。夢中になるのは自然なことだろう。ナタリー自身は、マチルダのことを、「体は子供でも心は大人」と意識して演じていたようだが、やはり、いくら背伸びをしても届かない哀しさと健気さがマチルダの魅力に思える。レオンの揺れ動く感情はかなり微妙である。一番最初に助けを求めるシーン(このときのナタリーの演技はすごい)で、何故、彼はドアを開けたのだろう。あの瞬間から、レオンに「情」が蘇ったのだ。殺し以外の理屈にはヨワいレオンが、少女に理責めで説得されてしまうあたり、この作品の魅力。守ってあげたい、という言葉は恐らく不適切で、今までの人生と命をひきかえにしても、守らねばならない存在になっていく、その心の動きがドラマなのだ。同情で人生は賭けられない。人間らしい喜怒哀楽を取り戻したレオンにとって、マチルダを見捨てることは、再び人間性を棄てることと同じなのだ。「愛してる」この痛みすら感じるレオンのセリフ。単純な恋愛のLOVEではない、すべてが昇華した「純愛」がそこにある。だが、凶暴な純愛は、暴力によって育まれ、暴力によって消え去る・・・。ラストの哀しくも安らかなシーン。涙が止まらなかった。欲をいえば、ラスト、校長室から先は、セリフは邪魔だったように思う。ところで、完全版で追加されているのは、以下のシーン。☆レオンが殺し屋になったいきさつ ☆2人で殺しのトレーニングをするシーンを大幅にUP☆マチルダの愛の告白に心が揺れるレオンの描写子供に銃を持たせるシーンには、いろいろ批評もあったようだが、この作品では、欠かすことができないシーンだ。なぜって、レオンは銃の扱いを教えることでしか、マチルダの「心」を救えないと知っていたからだ。19歳だった頃の自分と同じに・・・・・・・。破壊的で哀しいだけではないラストにベッソン監督のセンスが光る。根を張るのはレオンの魂。陽の光を浴びて伸びゆくであろう枝葉は少女の未来の象徴なのだ。 【ルー】さん 9点(2002-11-23 09:25:57) (良:4票) |
5.《ネタバレ》 この系統は「シベールの日曜日」や「グロリア」とあるが、この作品もまた傑作! 物語は殺し屋であるレオンが一人の少女と交流していくという筋だが、殺し屋に相応しい血生臭い日々から幕が上がる。殺しの依頼、幽霊のように一人一人確実に殺していくレオンの得体の知れない恐怖。まるで殺戮マシーンさながらの活躍だが、そんな恐怖はどんどん無くなっていく(良い意味で) 日常では植木鉢を日光に当て、腕が鈍るので酒はやらず牛乳オンリー、後は銃の手入れと肉体強化という単調な日々を過ごした。一人孤独に。 そこにもう一人孤独な少女が“家族”として同居する事になる。 マチルダは腹違いの両親や姉から疎ましく思われ、唯一泣きついて来る弟だけが彼女に優しかった。 家に居る場所が無い彼女は学校にも行かず、孤独な生活を送っていた。 二人はある事件をキッカケに“家族”となった。 利発な少女と、野暮ったいおじさん。 まるで本当の親子のように学び、食べ、心を通わせていく。 少女は大人になりたいと背伸びし、男もまた一人前の人間になりたいと強く願う。 殺し屋に憧れる少女の夢、殺し屋になってしまった男の苦悩・・・この娘を自分のようにはしたくない。 二人はコンビとして数々の“仕事”を手掛けていく。 この映画の殺しは何処までも上品。飛び散る血痕、冷え切った後ろ姿のみで語るのみ。 銃声も無駄に大きくないのが良い。フランス人気質が超プラスで出た良い例だね。 しかし運命は二人を引き裂きにかかる。 復讐の“標的”はレオンの“依頼主”という皮肉。 囚われる少女、どんな状況でも助けに来る男。もうレオンはただの殺し屋では無くない。家族を守る一人の人間になっていたのだから。二人は互いを刺激する事で成長を遂げていく。 標的の最大のミスは“公職”に着いてしまった事。自分のテリトリーで人質を殺す事も、盾にする事もできないというのもまた皮肉なものだ。 ラストの戦いは完全に別の映画。冒頭との温度差が酷すぎる(大絶賛) ただこのレオンの熱さ。もうレオンは殺戮マシンじゃない。熱い一人の父親だ。 彼は運命からは逃げられなかったが、キッチリ掃除屋としての“仕事”をやり遂げて旅立ったのだろう。 ボロボロになりながらも諦めずに。レオンの魂は、少女の心の中で生き続けるだろう・・・良い映画だ。 【すかあふえいす】さん [DVD(字幕)] 9点(2014-03-02 02:02:48) (良:1票) |
4.《ネタバレ》 完全版ってのは今回初めて観ましたが、意外にも完全版の方がイイじゃないですか。しっかりと変態映画になっていて。うん、この映画はやっぱし、「ひとりの男が、少女に人生を狂わされていくオハナシ」なんです。変態映画なんです。完全版こそ変態映画。男は殺し屋、ってことになってるんだけど、また実際、滅法強いという設定になっているんだけど、どう見たって「虫も殺せない」タイプ(だいたい、観葉植物を愛でたり牛乳飲んだりする描写こそ頻出すれど、殺し屋としての殺害シーンは実にアッサリしている)。一方の少女はと言えば、これはもう小悪魔というか、魔性の女というか、よっぽど彼女の方が人殺ししそうなタイプ。いやもちろん、ここで映画が表面的に語っている物語は、そういうオハナシじゃないんだけど、その「語られる物語」と「見た目」との間に、どうにもギャップがあるのよね。そしてラストにおいては、「見た目」の方に凱歌が上がる。この映画の白眉は、警官隊との戦いを切り抜け、ようやく死地を脱したかと光の方へ彷徨い出ようとする時の、レオンのマヌケヅラにあるんじゃなかろうか。ここで彼を狙っているのはもはや、背後のゲイリー・オールドマンですら無く、ここでのレオンはいわば、マチルダというメスカマキリに食われようとしているオスカマキリなんですな。大の男が、少女に食われちゃう、食われてもいいと思う、そこに切ないまでの、倒錯した陶酔がある。そして少女は成長し、物語は『ニキータ』へと繋がるのでした…? 【鱗歌】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2012-08-11 01:32:01) (笑:1票) |
3.私があんまり絶賛するもんで、初見の夫が文句たらたら。「なんだよ?ギモンだらけで終わった」「なんで○○が××したの?」「そんなに言うほどじゃないじゃん」「単なるロリコンじゃん」「どんだけ凄いのかと思ったのに」 それなのに翌日ハードディスクから抹消した私に対して夫が「えーもう1回観ようと思ってたのに!」「また録っておいてね」なんだよ。2回も立て続けにみる気かよ(笑) 【りんす】さん [CS・衛星(字幕)] 9点(2009-09-19 23:59:24) (笑:1票) |
2.《ネタバレ》 中学校の部活の顧問でもある担任から入試前に「これこそ漢を描いた映画やぁ~!」といわれ手わたされたDVD、真っ白のレーベル面にはマジックで『レオン』・・・コピー版じゃねぇか、、と思いつつもさっそく観ました。「勉強しなくていいのか?」というあせりが、映画の緊迫感と共鳴し2倍のボリュームで楽しむことができました(汗)冷酷な殺しやが少女に見せる優しさ、この細い管から「ポトッ」と落ちて暖かく広がるような優しさにかっこよさに先生は漢を感じたのでしょう、僕も同感です。よき作品です・・・入試に落ちたことなどもはや問題ではありません(笑)レオンのせいにしてるワケじゃないぞ!そんなこんなでほろ苦くも思い出深いコーヒーみたいな映画『レオン』 【PPOSSTU】さん [DVD(字幕)] 9点(2005-09-03 16:23:15) (笑:1票) |
1.「『タクシー』と同じ監督だよ」と言えば、ヘタな冗談よりウケる。 |