11.《ネタバレ》 キャシー・ベイツが素晴らしい。娘を守る為に戦う(旦那を殺す)シーンなんか、似合わないピラピラのワンピースで凄い形相で駆けずり回っているのに「母性」という美しさを感じてしまった。「殺し」は決して許されない罪だけど、どんな罰だって背負ってしまう母の強さ…、見事に表現されていました。そんなキャシー・ベイツにまったく食われて無いジェニファーにもびっくり。それから、母と娘の限界ギリギリの心情を、なぜ男性であるS・キングがここまで書けるんだろう?地味だけど深い映画です。 【たまねぎ君】さん 7点(2003-07-28 16:20:48) (良:4票) |
10.《ネタバレ》 過去の事件と現在の事件の真相に同時にせまっていくストーリー展開はミステリー好きにはたまりません。本作品の場合、ドロレス・クレイボーン(キャシー・ベイツ)という一人の女性の生涯を綴った人間ドラマに主軸を置いているため、ドラマとしての完成度も非常に高いと思われます。 演出では、現在から過去の回想への入り方が非常に印象的で、作品全体に絶妙なイントネーションを働かせているように感じます。更には、現在の寒々とした空気感と、過去のノスタルジックな風景描写のコントラストも効いています。そこでは光の加減による効果が大きいようですが、凄惨な事件が起きるのはいつも日の光の降り注ぐノスタルジックな過去の映像のほうであるというギャップがまた、人生の陰影を映し出しているようで何ともいえない味わいがあります。 すっかり映画の世界にはまりこんでしまって、見ている間は主観的になっちゃいますが、冷静に見てみても、ドロレスはひとつの母親像として理想的ではないですかね。まさに、内面の美しさとでも言うのでしょうか。子を思い、子のために尽くそうとする母はかくも強く、美しく見えるものです。そして、娘に会ってしまうと、やはり娘とのわだかまりをときたくて、娘につい真相を話してしまう母としての弱さを見せるのは、良い意味での人間らしさかもしれません。ドロレスが本当に聖母を決め込んでしまえば、きっと真相は闇の中だったのでしょう。 結果論になってしまいますが、真相を知ったことで、セリーナ(ジェニファージェイソンリー)もドロレスも和解をし、きっとこれからお互いに、新しい気持ちで第二の人生を歩み始めることはラストシーンを見る限り間違いないのではないでしょうか。確かに暗いイメージの映画っぽいですが、実際は、憎たらしい刑事も含めて、みんなにかかっていた過去の呪縛が解き放たれたような解放感や清々しさを感じることができる映画でした。 【たきたて】さん [DVD(字幕)] 8点(2014-02-13 09:46:13) (良:3票) |
9.《ネタバレ》 スティーブン・キング原作は未読だが、さすがにサスペンスがうまくて最後まで見せてくれる。 とにかくキャシー・ベイツがすばらしい。「ミザリー」でのイカれたストーカー女も真に迫っていたが、ここでは愛する娘に疎まれている孤独な母。 娘を思う慈愛に満ちた優しい目。娘と通じ合えない哀しい目。頑固でふてぶてしい面構えの中で、ときおり見せる違う表情にやられる。 【飛鳥】さん [DVD(吹替)] 7点(2017-12-26 22:57:12) (良:2票) |
8.《ネタバレ》 邦題をつけた人は悩んだでしょうね~。 原題「ドロレス・クレイボーン」にしたら、入る客も入らんだろう…と考え、頭をひねったに違いありません。
実際に観てみると、この作品は「ドロレス・クレイボーン」という映画以外のなにものでもなく、頑張って考えたであろうタイトル「黙秘」は、テーマからやや…いえ、かなりズレています。 この映画は「母と娘」の話ではなく、「娘を思う母」のストーリー。「ドロレス・クレイボーン」の物語なのです。
よくできた映画だけど物足りない、と観る側に思わせてしまうのは、観る側が「ドロレス・クレイボーンの物語」を観に来た、という自覚がないせい。「黙秘」を観に来た観客だからです。 作品「ドロレス・クレイボーン」として観ると、なぜこのシーンでこの見せ方?なぜ曖昧なセリフ回し?なぜここでその撮り方?といった疑問がキレイに払拭されます。 ファーストシーンからラストシーンまで、すべてドロレスの人生、ドロレスの選択、ドロレスの意志を描いているのです。
実はワタクシ、15年以上前にこの作品をレンタルして観ているのですが、その時はドロレスの夫のDVが非常に衝撃的でした。 現在ほどDVや虐待が一般に認知されておらず、「特殊な事」だと思われていた風潮のせいもありますが、ごく普通の田舎の妻が夫から激しいDVを受けたシーンは、とてもリアルで怖かった。 そして、暴力を受けた同じ日のうちに夫に対して命がけの反撃をし、しかし娘にだけは何も知らせないように努力するドロレスに、子を愛する母の強さを見ました。
この作品は、謎解きでもサスペンスでもなく、閉鎖的な地方の男社会の中で生きる中年女性ドロレスを描いたストーリーなのです。 無力な立場にいても、決して無力ではない。たとえ自分の手を血に染めようとも、守るべき大切なものを最後まで守り抜く。 そんな、虐げられる立場のひとりの傑出した女性の物語でした。 【りりらっち】さん [地上波(吹替)] 7点(2013-06-04 22:45:54) (良:2票) |
7.《ネタバレ》 回想シーンに移行する時の、まるで過去と現在が溶けあうような自然なカメラワークや、彼女の罪をまるで太陽の目から隠してやるように訪れる日蝕の演出など、随所にセンスの良さが見られる。
結局、自分の人生を良くするも悪くするも、それは自分自身の選択と決定の帰結でしかない。夫婦間の問題も、子供との関係も、友人との関係も、相互理解と相互依存の関係を自覚し、一歩先を予想する想像力さえあれば、それほど状況が悪くなることはないはず。
キャシー・ベイツ演じる彼女の人生も、殺人(見殺し?)を抜きにすれば、どこにでもあり得る平凡なもの。ただ、自分を律することが出来ない男と結婚したのも、その本質を見抜けないまま子供を惰性的に作ってしまうのも、またその夫を精神的に支え切れなかったのも、結局は本人(無論、夫も)の選択と責任の結果でしかない。そして、その「自覚」と「想像力」が無い者ほど、人生においてトラブルを起こしやすく、また自分で問題を複雑化してしまうように思う。自分の人生の顛末は自己責任が当たり前。そんなリアルな教訓に満ちている佳作。
ただ、あえて難を言えば、皆さんの指摘にもあるように、基本的に脚本自体が単純すぎる点かな。人間ドラマは秀逸なだけに、ストーリー展開の弱さが目立つのが残念。 【FSS】さん [ビデオ(字幕)] 7点(2004-07-26 14:22:35) (良:2票) |
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6.《ネタバレ》 これは秀逸なサスペンスドラマ。過去と現在の殺人事件が密接な関わり合いを持ち、それらの謎が薄皮を剥がすように明かされていくという観客の好奇心に訴える構成と、明かされた真相にはドラマ性が多分に含まれているというオチのつけ方、どちらも見事なものでした。 本作のキャラクターで私がもっとも興味を引かれたのはマッケイ警部でした。家族はなく、仕事にのみ生きがいを見出しており、10年以上前の未解決事件であっても決して忘れず執念の捜査を続ける刑事。彼は『ランボー』のティーズル保安官や『許されざる者』のリトル・ビル保安官と同種のキャラクターであり、容疑者視点の物語だから悪役となっているだけで、一般的には、むしろ正義の人として描写される人物です。ジョーの死を殺人と見た刑事としての勘は正しく、実娘に対する性的虐待という事件の重要なファクターを知らなかったのだから、彼があれくらい厳しくやってもおかしくはありません。 対するドロレス。彼女には男社会に対する根深い不信感があって(学資預金のトラブルを事前に挿入しておいた構成の妙)、マッチョの権化であるマッケイを自分と娘の協力者として取り込むことはできないと直感的に判断し、「旦那の件はただの事故死」と言って一歩も譲りません。法治国家の原則からすれば間違っているのはドロレスの方なのですが、彼女にあるのは「自分が捨石になってでも娘のための道を作る」という狂気に近い執念であり、それは善悪を超越したレベルにまで達しています。男社会と母性の対立こそが本作の山場ですが、それぞれを象徴するクリストファー・プラマーとキャシー・ベイツの熱演もあって、これが壮絶な見せ場となっています。 無自覚のうちにそんな争いの中心にいたセリーナは、親の心子知らずの極致をいく難役でしたが、JJリーの繊細な演技のおかげで、観客から憎まれないギリギリの範囲内に収まっています。都会でバリバリやってる若者が、教養のない田舎の親をバカにして、ロクに話も聞かない。ちょっと前の私も似たような状態にあったので、彼女の態度に対しては共感とイラ立ちの両方を覚えました。ウザい、ダサいと疎ましく思っていた母親が、実は自分を守るために人生をかけていたことに気付いた時の感動や、それを受けて、マッケイ刑事への反撃を開始する場面の爽快感など、深いドラマ性とある程度の娯楽性を両立させた演出バランスも優れていると感じました。 【ザ・チャンバラ】さん [DVD(吹替)] 8点(2015-09-08 16:07:20) (良:1票) |
5.《ネタバレ》 今までのスティーブン・キング原作の映画の中でコレがナンバー・ワンだと思っている。「グリーン・マイル」、「ショーシャンク」、「スタンド・バイ・ミー」なんで目じゃ無いね。コレは原作から脚本を書き起こしたトニー・ギルロイの力によるものだ。主演陣も素晴らしい。サンダース軍曹ビック・モローの娘ジェニファー・ジェイソン・リー、「ミザリー」のキャシー・ベイツ、憎まれ役にクリストファー・プラマーと豪華。ミステリー的なストーリー展開なのでストーリーは書かない。後半で子供を思う母の気持ちを熱演するキャシー・ベイツの演技に涙がでてきた。是非とも観て欲しい一作。
2017/1/30追記)原題の「Dolores Claiborne」は、スコアレス・ドロー「scoreless draw」のモジリであるとフト思った。この熟語は「サッカーやホッケーなどの試合で無得点での引き分ける事」を意味するが、コレに「gray」を加え「draw less gray」で「有罪か無罪か微妙でグレー」という意味になりコレは主人公の名前そのものであると感じた。裁判では「疑わしきは被告人の利益」の原則が有り、映画では、観客だけが「ドロレスがグレイである」と教えてくれるが一方「ドロレスが無罪放免」されてしまうという結末にもこの原則にはかなっている。ココが観客の誰もが共感できる所だと思う。尚、この追記で「ネタバレ有り」に変更した。 【アマデウスga好き】さん [DVD(字幕)] 10点(2015-08-09 23:22:47) (良:1票) |
4.《ネタバレ》 キャシーベイツ、JJリーの共演という事で、当時飛び付いて見た記憶があるんですが、中身は綺麗さっぱり忘れてたのでほぼ初見ですね。この映画は話が凝っていて面白いとかではなく、作りがとにかく丁寧です。明と暗、動と静、それと音の使い方などです。この上にさらにキャシーベイツ、JJリー、ストラザーンという演技派が乗っかるわけですから、見応えがないわけがありません。ただそれだけかなという印象も受けます。根幹の話の部分に多少不満が残りました。特に最後のくだり。18年前の“事故”の扱いですよね。見る側にはもう真相は明らかになっているわけで。これをどう扱うか、ヴェラの事故にどう絡ませるか。このへんが物足りない気がしました。もうひとつは島という設定。過去も含めてこの閉塞感をもっとうまく表現して欲しかったです。でもまあ尺が長い割にはずっと釘付けだったのでそれなりの点数を。 【オニール大佐】さん [CS・衛星(字幕)] 6点(2011-02-03 19:43:01) (良:1票) |
3.キャシー・ベイツの演技力のすさまじさには度肝を抜かれます。スティーブン・キングのダークさを忠実に演技できるのは彼女をおいて他にいないと思います。夫の横暴に必死で耐える弱き妻、娘を守る強き母、両方を同時に演じるのは、地で演技できそうで結構むずかしいと思います。真実を思い出した娘との葛藤と理解が胸に響きます。サスペンスなのにヒューマンドラマ。原作がしっかりしていると映画にもムダがない。過去の回想シーンへの入り方もごく自然に入っていくので、まるで小説を読んでいるかのよう。ボブ・ガントン、ここでも出てきましたね。まるで隠れキャラだ(笑) 【どんぶり侍・剣道5級】さん [DVD(吹替)] 8点(2005-11-04 12:59:29) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 発見された状況から、ずっと犯人では?と思われる主人公。それは全くの他人から子供、映画を見ている者全てがその方向へと。それは普段全く関心が無い、もしくはコミュニケーションが無い者への扱いであると感じます(フランケンシュタインを見るような。)。まさに、原題どおりドロレス・クレイボーンの人間性や、過去を理解する事により、それが偏見であると判る。この疑心からの開放が出演者の演技もあいまって惹き付けられる作品でした。 【森のpoohさん】さん 7点(2004-05-26 23:15:41) (良:1票) |
1.公開が寒い時期だったことと、内容の暗さ、画面の青さが相まって、「寒い」(今風の意味ではなく)映画として記憶してます。原作を読む前に観たのが正解だったと思う。後で原作を読んだら、「やはり原作の方が重厚だ」と思ってしまったのだけど、映画は原作よりフェミニズムのメッセージを強く打ち出すことで、色々な要素のある原作を背筋の通った一本の映画にうまくまとめていたと思う。キャシー ベイツは本当に素晴らしい女優ですね! 【ゆきむし】さん 10点(2003-05-11 13:06:58) (良:1票) |