4.《ネタバレ》 なかなかよくできたサスペンス映画でした。面白いのは、戦時下で主要人物は軍に所属しているのに、あらかた私情で動いているということ。戦争の正義とか大義名分とは対局のところにありますが、それもむしろサスペンス向けでしょう。主人公のトムはもちろん、彼が探していたクレアも、情報を漏らしていたパックも、軍よりは個人の感情を優先させています。とはいえ、そこが詳細に描かれているのはトムだけで、あとの2人はミステリーの「犯人」という存在ですから、あまり掘り下げられていなかったのは残念です。特にパックはポーランド人ですから、肉親を殺されたとはいえナチスに情報を流すというのは、ちょっと首をかしげます。クレアにしても、パックのどこに惹かれて愛したのかというのが不明ですし、そういう点では説得力に欠けますが、ミステリーとしては致し方ないでしょう。現実の「カティンの森事件」を扱っているのでもう少しドラマ重視にもできますが、あくまで背景にとどめているのは潔いです。 こうした点を除けば、イギリスらしい堅実で上質なミステリーでした。あくまでサスペンスなので、暗号解読の方法自体は理解できなくても大丈夫ですし。また中盤、Uボートからの暗号を傍受するためアメリカの輸送船団を危険にさらすという作戦が立てられるのですが、これが私情で動く主人公たちと対照的で、なかなか効果的だったと思います。 出演者では、サフロン・バローズがファム・ファタールらしく神秘的な美女でけっこう。対するケイト・ウィンスレットは、まんまる眼鏡で体型もちょっと丸く、コロコロしてかわいらしかった。この2人の対照も面白いですね。 ここでの点数は低いですが、どうも映画のポイントを外して鑑賞した方が多いようで……。 【アングロファイル】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-06-29 16:59:11) |
3.エニグマは謎だ! 【珈琲時間】さん [CS・衛星(字幕)] 7点(2011-04-06 19:47:43) |
2.《ネタバレ》 第二次大戦がテーマでも派手なドンパチはほぼ無いし、ヒロインたるケイト・ウィンスレットは体もメガネも丸々としているし、観る前の期待を裏切る地味さは否めません。しかし、劇中モールス傍受の女性兵士が言った「これって重要ですよね。」がテーマの底にあると思います。こんな地味な面も戦争の一部に違いない。暗号解読のプロセスなどは私のニブい頭では追いつけませんでしたが、サスペンスとして興味深い作品になっていると思います。終盤、主人公が急に勇敢かつ雄弁になったり、女スパイに翻弄されるヤローどもはちょっと情けないんですけど…。戦争がテーマなのにイギリスの美しい田園風景がたっぷり見られるなんて、珍しい映画ではないでしょうか。 【のはら】さん [DVD(字幕)] 7点(2006-01-21 16:43:56) (良:1票) |
1.《ネタバレ》 評価がやたらと低いような気がするが、皆さんイギリス映画のテイストがお好みではないのだろうか?アメリカ映画なら暗号解読作業が間に合って船団が助かるんだろうが、この映画ではそんな安易な解決にしない。私はイギリス映画の淡々としたところや、そういう陰影が好きなのだが...。ところでミックがプロデューサーと知ったとき、正直どうかな?と思ったのだが、いい意味で裏切られた。これはとっても真面目に作ってある映画だと思う。ミックは言う。「深みのない商業映画には興味がない。知的で面白く、客が感動するような映画を作りたい」・・・なるほど、ごもっともです。なるほど傑作とは言えないだろうが、この映画はたしかにそんな佳作になっている。ブレッチリー・パークにせよ、カチンの森虐殺事件にせよ、そのような重大な事実を長い間伏せておくような時の勢力に対する憤りと、それらに対する正当な評価をすべきというメッセージ。やや解説に頼った感があるにせよ、そういう主題にも好感がもてる。エニグマの謎が解けたとき、サスペンスとラブロマンスが解決する、という脚本も巧いと思う。ダグレイ・スコットはハマリ役。ただ、難を言えばタイトルが悪い。。「エニグマ」とするのは一理あるが、少なくとも邦題としては主題と全然マッチしていないと思う。これじゃ、ハラハラドキドキの戦争サスペンスを思い浮かべてもしょうがない。 |