5.《ネタバレ》 評価がやたらと低いような気がするが、皆さんイギリス映画のテイストがお好みではないのだろうか?アメリカ映画なら暗号解読作業が間に合って船団が助かるんだろうが、この映画ではそんな安易な解決にしない。私はイギリス映画の淡々としたところや、そういう陰影が好きなのだが...。ところでミックがプロデューサーと知ったとき、正直どうかな?と思ったのだが、いい意味で裏切られた。これはとっても真面目に作ってある映画だと思う。ミックは言う。「深みのない商業映画には興味がない。知的で面白く、客が感動するような映画を作りたい」・・・なるほど、ごもっともです。なるほど傑作とは言えないだろうが、この映画はたしかにそんな佳作になっている。ブレッチリー・パークにせよ、カチンの森虐殺事件にせよ、そのような重大な事実を長い間伏せておくような時の勢力に対する憤りと、それらに対する正当な評価をすべきというメッセージ。やや解説に頼った感があるにせよ、そういう主題にも好感がもてる。エニグマの謎が解けたとき、サスペンスとラブロマンスが解決する、という脚本も巧いと思う。ダグレイ・スコットはハマリ役。ただ、難を言えばタイトルが悪い。。「エニグマ」とするのは一理あるが、少なくとも邦題としては主題と全然マッチしていないと思う。これじゃ、ハラハラドキドキの戦争サスペンスを思い浮かべてもしょうがない。 |
4.《ネタバレ》 これはなかなか質の高い力作だ。ミック・ジャガー入魂のプロデュース作品だけのことはある。「いっとき話題になって消えていくより残る作品を」という彼の言のとおりだ。 悪い女にだまされて滅入っているうぶな数学者、という超プライベートなつかみから入って、話が全世界的に放射線状に広がっていく感じはストーリーづくりとしては面白い。 また、戦時中の隠された解読基地というドンパチやっていない場所で、どのように「戦争」を描くのか、ということにも細かな配慮がされている。例えばケロイドだらけの元海軍の片目の情報員、受信基地の女性兵士の発言(自分達の役割は意味の分からない暗号を受信して伝えるだけで戦っていることになるのか)、カチンの森でのドイツ軍による発掘作業、など。戦争映画の棚にあるのに、誰一人血を流して死ぬ場面を写さず、戦争の裏側を描く。ひとつの試みだ。 ヘスターという新しい女性像を登場させて、「女の頭脳が男より劣っているなんてことはない」なんてこの時代に言わせてしまう。彼女は現代でも堂々通用する女性であり、「守られるだけじゃイヤ。あたしだって何かやれるわよ!」というパンチの効いたたくましい女なのだ。このヘスターのキャラが効いていて、基地内での男ばっかの政治的な人間関係でげんなりした女性客をシラッとさせずつかんでいく。しかもブリジョン並みの豊満ボディに変身したケイト・ウィンスレットはなかなか可愛く(甲乙つけがたい)、なおかつ女性の嫉妬心も煽らない、グッドなキャラである。ケイトはいつもこれくらい太っていてもよいのでは。 そしてジェレミー・ノーザムの嫌らしさといったら見逃せない。まんま50年前の映画から抜け出たようなそのクラシックな容姿、イギリス紳士は常に身だしなみをかっこよく、そしてやることはえげつなく。いいですねー、ノーザム。俳優さんとしては、古典的な容貌が邪魔して使いにくそうだが。私はディカプリオだのブラピだのと受けを狙った顔立ちよりこういう正統派のハンサムを見ると、なにか「感動」に近いものを感じるなあ。生き残っていた絶滅保護動物を見るような。 あ、ダグレイ・スコットのアスリート並みの全力疾走は一見の価値あり。早回しか?というほどのド迫力だ。数学者にしてあの徒競走走り、デキる。 【パブロン中毒】さん [DVD(字幕)] 9点(2006-08-27 21:48:03) (良:1票) |
3.《ネタバレ》 第二次大戦がテーマでも派手なドンパチはほぼ無いし、ヒロインたるケイト・ウィンスレットは体もメガネも丸々としているし、観る前の期待を裏切る地味さは否めません。しかし、劇中モールス傍受の女性兵士が言った「これって重要ですよね。」がテーマの底にあると思います。こんな地味な面も戦争の一部に違いない。暗号解読のプロセスなどは私のニブい頭では追いつけませんでしたが、サスペンスとして興味深い作品になっていると思います。終盤、主人公が急に勇敢かつ雄弁になったり、女スパイに翻弄されるヤローどもはちょっと情けないんですけど…。戦争がテーマなのにイギリスの美しい田園風景がたっぷり見られるなんて、珍しい映画ではないでしょうか。 【のはら】さん [DVD(字幕)] 7点(2006-01-21 16:43:56) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 ストーリーについていけなかった。Uボートが連合軍船団を見つけたら暗号解読の「突破口」が見出せると解読スタッフたちが興奮気味に語り合ったり、最後のところで「結局、クレアがみなを手玉に取ったんだ」と謎解きをするあたり。私の頭が“エニグマ”ではないからではあるが。 が、それでも面白く感じることはできた。あの暗号解読装置は、よく昔の人はアナログでこんな機械をつくったもんだと感心したし、クラシックカーを使ってのチェイスは「いいのか、そんなことして!」と別の意味で手に汗をにぎったりも。 なお、「エニグマ」というタイトルからは、もっとアクション中心のイメージを受けたので、必ずしも合っていないと思った。 【delft-Q】さん 6点(2004-05-17 23:53:27) (笑:1票) |
1.《ネタバレ》 ミック・ジャガーがどうして気に入ったのかは知りませんが、この映画の舞台になった画面に顔を出す機械(糸巻きみたいなのが並んで回転しているやつ)はENIACとかよりも先に英国が実用化した世界最初の電子式ディジタルコンピュータであるコロッサスです。機密維持のために戦後もずっと伏せられていました。カチンの森の事件がからんでいたかどうかは知りません。それで主人公のジェリコのイメージになっているのはこの開発のためにケンブリッジ大学から招聘されたディジタルコンピュータの生みの親と言われるアラン・チューリングとなるのだけれど、彼が女性にうつつを抜かすはずは(笑)。 【たいほう】さん 5点(2003-11-05 20:43:11) (良:1票) |