4.オモチャ箱をひっくり返したような世界、大人のメルヘンとでいいましょうか、でもアイロニーたっぷりで、ただスィートなだけでなく、かなりビターな笑いが含まれています。超一流のお遊びです、ブロカ監督のさじ加減に惚れます。物語の舞台となる村には、君主と貴族、紳士と淑女、さらに聖人もいれば、娼婦もいる…“彼ら”の饗宴の輪の中へと入る夢を、僕は何度、見たことでしょう。その幻想的な光景といったら!きらびやかな宴と、愚かな殺し合い。グロテスクが美と紙一重であることを、あらためて知りました、もうトラウマになりそう。この映画の主人公ならずとも、「また“彼ら”に会いに行きたい…」と、そんな気分にさせられる、不思議な魅力にあふれているのです。 【BUNYA】さん 10点(2003-11-13 05:53:22) (良:3票) |
3.《ネタバレ》 凄い!凄すぎる。なんという発想の面白さ、ユニークさ、そしてまた狂気に満ち溢れた世界!これはもう、傑作を通り越して大傑作としか言えないぐらいの本当に物凄い映画です。第一次世界大戦下のパリの小さな村が舞台となっているこの映画、ドイツ軍の仕掛けた時限爆弾を撤去するまでのその物語の運び方、斬新且つユーモアいっぱいの人達による何とも魅力的なこの世界、たまらなく大好きです。人間の狂気、戦争の狂気をここまでして、徹底的に描きながらも、重苦しさをまるで感じることなく描いている所が本当に凄いし、好感が持てる。精神病院の患者達がチェスをしたり、トランプをしたりしている姿など正しく人間の持っている狂気とでも言うか、バカな一面を見事に表しているし、人間らしさとは何か?ということをシニカルな笑いで描いているこの素晴らしさ、観ていて本当に楽しかった。そして、またこの映画、どの登場人物にしても本当に魅力的で、特にもう命が残り3分しかないと言って時計台に登って回る王様の姿など観ていて楽しくて仕方がない。そんな楽しい風景を時計台の下から見守る人達の温かさ、素晴らしい笑顔、どれをとっても素晴らしいの一言に尽きる。ヒロインのビジョルドの綱渡りのシーンも映画ならではの素晴らしさ、これほどまでにユニークなストーリーと個性的な人達を素晴らしく描いている戦争映画なんてないと思うぐらいの素晴らしさ、映像の美しさ、音楽の素晴らしさも相成って見事なまでの大傑作になっているこの映画、文句なしの満点!本当に一人でも多くの方に観て欲しい素晴らしい映画です。 【青観】さん [ビデオ(字幕)] 10点(2006-10-09 11:56:15) (良:1票) |
2.《ネタバレ》 戦争の狂気がこのような形で描かれている事に驚きました。「現実の世界は苦しいことばかりよ」 確かに生きる事は苦しみもありますが、苦しみながらも現実の中で皆生きているのではないでしょうか。患者達の御伽噺の如く戯れる様子は現実逃避の卑怯者のように最初は感じました。そうではありませんでした。プランピックにラスト彼らのもとへと門を叩かせたのは、その方法でしか現実から逃れられない、そうまでしてまでも居られない戦争という現実の世界だったのですね。皆様ご指摘の通り、命令のもと個人的に何の恨みも無い者同士が破壊し合い殺し合う戦争という行為、そして、己と家族は絶対安全な場所に身を置いた上で、己の欲望を正義と言う美名で覆い、警察官気取りで戦争を起こし、苦しみ・悲しみ・痛みを何にも感じない指導者こそまともな神経を持たない狂った輩であると言えます。素晴らしい作品でした。 |
1.檻から逃げ出した動物、自転車に乗ったサル、着飾った人々。これらの断片から、街はサーカスを模したものであることがわかります。精神病患者は道化師であり、祝祭への水先案内人と言えましょう。ところで日本大百科全書の「道化」の項目には、祝祭は日常を暗転させた「さかさまの世界」の現出を意図する、という意味のことが書かれています。この言葉が、本作を端的に表現してはいないでしょうか。本作を観賞するとき、我々は擬似的なサーカス、祭典の空間に遊んでいるのです。だからこそ患者たちは、祭典が長く続かないことを自覚しているし、彼らが帰っていくところを見守る我々も、寂しさを禁じ得ないのです。物語のラストにおいて、価値観は再びもとに戻ります。主人公の取った行動はなるほど滑稽でしょう。しかし我々は誰も、腹の底から彼を笑えないに違いない。まぼろしの日々が教えてくれたからです――「戦争をする奴らこそ狂人ではないか」。素晴らしい作品です。ぜひ多くの人に『まぼろしの市街戦』を体験してほしいと思います。 【041209】日本大百科全書からの引用転載を修正しました。 【円盤人】さん 10点(2004-10-06 20:21:03) (良:1票) |